Feature #21

夏至に願う再生と回復

夏至 - 2024年6月21日

Photo by Marko Blažević on Unaplash

北半球で、一年のうちで昼が一番長い日、今年の夏至は6月21日です。一方の南半球では、夜が一番長い日をむかえています。地球が自転し、太陽の周りを公転していることは私たちの誰もが知ることですが、日々の生活の中ではなかなか実感しにくいものです。夏至は、夜が一番長い日である冬至、昼夜の長さが均等になる立春、立秋と並んで、天体としての地球の動きが解りやすい時であり、一年という時間の流れの中で、大切な節目としてとらえられてきました。こうした区切りの日に、自分たちが宇宙的な時間の流れの中に存在していることを、世界中の人々が直観的に感じとり、夏至の儀式が多くの文化で行われてきたことは、これといって不思議なことではないように思えます。
 
夏至という文字からイメージされる盛夏から今はまだ遠く、ちょうど梅雨の時期であり、近年酷暑の続く夏をむかえるのもこれからです。日本では夏至を過ぎてすぐの6月末に、神社に立てられた茅の輪をくぐり、ここまでの半年の罪や穢れを落とす、夏越の祓(なごしのはらえ)という行事が行われます。夏至という日をきっかけに、溜めてしまったものを取り除き、再生や回復を願うことは、私たちがこれから来る厳しい暑さを乗り越えようという時に、自然な流れなのではないでしょうか。一度リセットし、ここからの再生と回復の助けとなりそうな書籍たちの中から、これまで取り上げる機会の少なかったものをご紹介します。

ITEM

私を整える。
自然のちからで不調をなくす自律神経のセルフケア

鈴木七重 / エクスナレッジ

¥1760(税込)

当店でも人気の、『ゆるめる・温める・巡らせる』の著者による、自律神経をセルフケアで整えるための一冊。まずは自律神経の働きを理解することから始まり、自身のリズムを取り戻すための仕組みを丁寧に解説する。そして、忙しい日々の合間に行えるものや、その逆に、ゆったりと時間が取れる休日を利用して行える、アロマオイルやハーブを使ったナチュラルなセルフケアを提案する。また、実践の方法だけではなく、ケアを行う際の気持ちのあり方や、セルフケア実践の体験談も盛り込まれており、実は一番の難関である、「小さな積み重ねを継続していく」時の励みになってくれそうだ。


ハーブレッスンブック

石丸沙織、長田佳子 / アノニマ・スタジオ・KTC中央出版

¥1980(税込)

ハーバリストと菓子研究家によるハーブのレッスンブック。ブレンドのハーブティーを作るとしたら、使うハーブの種類と量はどんな風に決めるのか? このハーブはどんな風味のお菓子に使うとより美味しくなるだろうか? 本書はレシピを紹介するだけではなく、セオリーやベーシックな考え方を惜しみなく紹介しているので、読んで継続的に実践することで、こうした疑問にもいずれは自分で考えて、答えを出せるようになれそうだ。ハーブを積極的に活用する生活、その具体的な様子が書き込まれていることも、日々の生活こそが養生へと自然に繋がっていくことを実感させてくれる。


体とこころのトリセツ
顔を見て不調を整える漢方式セルフケア

島田和美 / エクスナレッジ

¥1760(税込)

目は口ほどにものを言うというが、目だけではなく、表情や皮膚など、顔に現われた状態から心身の情報を読み取るのが、東洋医学の「望診」というテクニックだ。本書が提案するのは、望診を日常生活に活用して、自分の特性や状態をよく知ること、そして、それぞれに合う方法で快適さを手に入れ、未病や不調から心身を立て直していくことだ。望診のベースとなる、五臓五腑という東洋医学的な身体観も丁寧に紹介し、顔だけではなく、鏡ですぐにチェックできる舌や歯や髪、また爪などから読み取れる心身の状態にも触れている。豊富なイラストも解りやすく、いつもそばに置いて日々の体調管理に役立てたい。


イラスト見るだけ整体
筋緊張がとれ、自律神経が整う

大橋しん / KADOKAWA

¥1430(税込)

イラストを見るだけで体が整うとはどういうことだろう? 例えば、背骨の位置は皮膚のすぐ下ではなく、実は体の内側深くにあるとイラストを見て知る。すると背中の表面の余分な緊張がほどくことができるようになり、力を抜いてゆったりとリラックスできるようになるという。身体技法のひとつであるアレクサンダー・テクニークをベースに、誤った体のイメージを修正することで体を楽な状態へと導き、余分な緊張の無い体が、自律神経のバランスまで整えてくれる。思考法などでは、思いこみからの解放が状況改善に繋がることがよく指摘されるが、体の場合にもそれが当てはまるようで、心と体は切り離せないものだと改めて感じさせられる。


姿勢をゆるめる
疲れない身体と心の整え方

片山洋次郎 / 河出書房新社

¥1540(税込)

人それぞれ体には特徴がある。だとすれば、緊張の取り除き方も人それぞれ違っているはずだ。例えば、貧乏ゆすりや片膝立て座りなど、いわゆるお行儀の悪い仕草や姿勢がもしかしてそうだったとしたら? 見た目の「良い姿勢」にこだわるのではなく、一人ひとりの違う体にある、それぞれの良い姿勢の見つけ方と、強ばった体をほぐす具体的な方法を提案する。その場ですぐに対処するためのものから、長く生活に取り入れるものまで、長持ちする体のためのセルフケアが満載されている。


謎の症状
心身の不思議を東洋医学からみると?

若林理砂 / ミシマ社

¥1980(税込)

病院に行くふん切りはなかなかつかないが、日々少しずつ不快が積み重なっていく…。例えば眠りや食に関する悩みはそれらの典型ではないだろうか? 人気の鍼灸師である著者によるシリーズの最新作は、症状別に東洋医学からの見解を解説、対処法をアドバイスする。というのが基本だが、不思議な症状にも実は西洋医学的に解明されているものもあり、さまざまな心身の謎が東西の知識と経験を駆使して次々に読み解かれていく。自分の症例が当てはまらないものも、読むことで東洋医学的な対処法を知ることができ、「そうならない」ための日々の養生に役立てることができそうだ。


新しい体を作る料理
「いつも疲れてだるい」から、やる気に満ちた明るい体へ

たかせさと美 / すみれ書房

¥1980(税込)

自身の不調を食生活改善で解消したプロの料理人が、薬膳の知識をベースに考え抜いた、全てグルテンフリー&白砂糖カットの、疲れきった人たちに向けて作られた、新しい体になるためのレシピ集。これだけでもすでに手に取りたくなるキーワードが満載だが、字を読むことすら疲れて難しい時のために、写真で手順が理解できるよう工夫された誌面、極力少なく抑えた調理工程、ページの前半から後半に進むにつれて、徐々に手順と要素が増えていく書籍の構成と、本の作りそのものにも、著者をはじめとする、作り手の気持ちがこめられていることを感じる。レシピ集ながら半日何も食べないことから始まり、後半には、元気になった体でからあげやコロッケを揚げて食べる楽しみも待っている。体のための食養と、食べることの豊かさの、両方に満ちた一冊。


マインドフル・ボディ
ハーバード大学の人気教授が教える意識で身体を変える方法

エレン・J・ランガー / 徳間書店

¥1925(税込)

本書でいう「マインドフルネス」は瞑想の種類やそれを行うことではなく、「意識を今ここに集中」し、そこからさらに一歩進めて、「新しいことや変化に積極的に気づく」ことを意味している。それによって起こるのは、規定のルールや思いこみに沿ったマインドレスな思考や行動の繰り返しではなく、変化を前向きに許容できるようになることだ。するとストレスが軽減され、ひいては健康状態までもが改善されていくという。高齢の人たちが環境と気持ちの持ち方で体の健康を取り戻す、「時計の針を巻き戻す実験」で知られる、心理学界の伝説的存在である著者。本書はその回顧録的内容ではあるが、「マインドフルな状態の人々がその場に残していく目に見えない何か」についてなど、今後解明されて議論に刺激を与えそうな、新たな知見も盛り込まれている。そんなところも、ルールに縛られず物事をマインドフルに受け入れてきた著者らしく、読むことで著者の歩みと共にマインドフルネスが自然と心身に浸透していく。