旧暦の10月は「かんなづき」と呼ばれます。その理由は、「無」は「の」であり、「神の月」という意味であるという説が有力なようですが、全国の神々が神議り(かむはかり)と呼ばれる話しあいのために一堂に会するので、地元に神の無い月、「神無月」というものが古くから一般に浸透しています。天候や作物のこと、人の運命や縁結びについて神たちが話しあう、神にとっても人にとっても、とても大切な月ということになります。
因幡の白うさぎや国づくりで知られる大国主神(おおくにぬしのかみ)がいる、島根県の出雲に神たちが集まり、ここで神議りが行われます。全国の神たちがここに集まることから、神が在る月として、出雲では神無月は「かみありづき 神在月」と呼ばれるようになりました。大国主神が祀られているのは、あの大きなしめ縄で知られる出雲大社ですが、そこでも、神たちを迎える神迎祭(かみむかえさい)から始まり、神在祭(かみありさい)、神たちの出発を見送る神等去出祭(からさでさい)、そして出発を大国主神に報告する第二神等去出祭まで、毎年多くの神事が行われており、今年は11月10日から26日がその期間にあたります。
大国主神は縁結びの神として知られており、先ほどあげた出雲大社で行われる神在月の神事にも縁結大祭があります。そしてまさに縁あって、神の集う地、出雲の空気に触れる神在月のフェア、「神の集う出雲の秋」をブッククラブ回で開催することになりました。このフェアが、神話の時代からの伝統が今も日常に息づく出雲と、皆さまとの縁結びになることを願っています。
碧玉と呼ばれる出雲石や、つややかな輝きを放つ黒曜石など、出雲ならではの素材を用いて作られる、勾玉や御神鏡、そして地元のアーティストや職人の手による天然木の製品など、出雲の伝統に連なる製品の制作、プロデュースを行う、秀玉堂の品々をお届けします。江戸手ぬぐいの「かまわぬ」とのコラボレーションや、BEAMS JAPANへの商品提供、直営店「めのうの店 川島」や独自ブランド「よすか」を展開するなど、明治から続く老舗の伝統を基盤としながら、出雲の今を届け続けています。
また、出雲大社で毎年6月に行われる真菰の神事、凉殿祭(すずみどののまつり)や、本殿と瑞垣の中にあるお社の注連縄に使用されている、イネ科の植物、真菰(まこも)を原料とする製品も、今回は里山暮らし研究所のご協力で用意することができました。高原の棚田で化学肥料を全く使用せずに栽培された、真菰の生命力が満ちた製品をぜひお試しください。
Photo by Sienna Wall on Unsplash
フェア開催期間
2024年10月18日(金)〜 11月30日(土)
*フェア期間中も日曜・月曜は定休です
出雲の職人技による、黒曜石の御神鏡や千木を意匠とする台座。太古の思想と造形を現在に伝える勾玉たち。洗練された江戸の文化を感じさせる手ぬぐいや火打石。そして、稲よりも古くから存在する真菰という自然の恵み。神話へと遡る、長い時の流れから生まれた奥深さと、そこから生まれた文化の豊かさが宿る品々を、ブッククラブ回の特設コーナーにてご覧いただけます。
【ご来店時のお願い】
・会場に駐車場はございません。自転車・バイクの駐輪はご遠慮ください。公共交通機関をご利用いただくか、お近くのコインパーキングのご利用をお願いいたします。
・発熱、せきなど、体調不良時のご来店はご遠慮ください。
隠岐の島産黒曜石と出雲石について
隠岐の島産黒曜石と出雲石、御神鏡と勾玉で使われているふたつの天然石は、いずれも古来より珍重されてきましたが、現在では採掘が制限され、非常に希少なものとなっています。
黒曜石、英名オブシディアンは黒色の天然ガラスです。中でも島根県隠岐の島で採掘されたものは、日本各地の遠方の遺跡からも出土していることから、その質の高さで古来から大切に扱われていたことを知ることができます。また、火山活動から生まれた黒曜石には強いエネルギーが宿るとされ、魔除けのお守りになるといわれています。
青緑色のめのうは碧玉と呼ばれ、産地の名前にちなみ出雲石と呼ばれてきました。弥生時代から出雲地方ではこの石を用いた玉が作られ、中でも勾玉や管玉は宮中祭祀のために朝廷に献上されていました。藍色にも見える深い緑色とそこに現われる縞や斑紋が、国作りの地、出雲の神秘を感じさせる出雲石、英名ジャスパーは自然のエネルギーと人間の魂をつなげ、精神の安定をもたらすといわれています。
御神鏡
御神鏡は三種の神器の一つです。鏡が太陽を象徴することから、ご神体として本殿や拝殿に祀られる神器である御神鏡は、神前に立つ自身の姿をありのままに映すともいわれています。隠岐の島の黒曜石で作られた御神鏡は、出雲大社に奉納されたという記録が文献に残されています。深く濃い黒色が、職人による熟練の技で磨かれることで光を反射し、独特の光沢を放ちます。神と自身を同時に映し出す黒曜石の御神鏡は、神棚はもちろんですが、置いたその場所を特別な空間、自分だけの聖域にしてくれるのではないでしょうか。
勾玉
勾玉もまた、三種の神器の一つであり、装飾品や祈りのための儀式、呪術や祭具に使われました。また力の象徴でもあり、価値ある交易品でもありました。形の由来については所説あり、胎児の形、月の形、太陽と月の重なり、動物の牙を用いていたことから発展したなど、さまざまですが、日本各地に古くから伝わるものであるにも関わらず、一方では謎に満ちた存在でもあります。
黒曜石、出雲石を用いた勾玉は、一般的な巴形の他に、鬣(たてがみ)、櫛など、獣型をモチーフに作られたものもご用意しました。獣型は出土例が少なく、比較的古い遺跡から出土する場合が多いので、勾玉の中でも古い来歴を持つのではないかと考えらえています。精霊に近い存在とされる獣は、人間界と外界を繋ぐ存在と考えられていたようです。ユニークな可愛らしさと同時に、畏怖の念を想起させる古代の森を感じさせる造形です。
よすかのお社台座
あらゆるものとのご縁につながる「円」と、お社の屋根にある「千木」をモチーフにした、御朱印帳やお札を収めるのに最適な「台座」です。
樺の木で作られた千木(ちぎ)をモチーフにした台座には、出雲大社の御神紋、亀甲紋をイメージした六角形が中心にそえられています。千木は神社建築の屋根に見られる部材で、古来の建築法が装飾と変化し、後に神社の聖性を表すものとなりました。古事記の出雲大社創建の描写にも氷木(ひぎ)として記されています。
その他のアイテム
江戸手ぬぐい専門店「かまわぬ」と、出雲をコンセプトとするものづくりブランド「出雲意匠製作所」のコラボレーションによる手ぬぐいは、大胆で迫力ある「注連縄」と、出雲大社の千木と注連縄をイメージした「出雲社小紋」の2柄があります。めのうと火打鎌のセットは、切り火を切るための道具です。切り火とは、送りだす人の右肩に向かって火打鎌と石を打って火花を散らして出発を見送る、江戸時代から残る厄除けの習わしです。その他、カラフルなミニ玉、ゴールドの勾玉キーホルダーやはしおきなど、生活の中ですぐに楽しめる品々もご用意しました。
めのうの店 川島 プロフィール
明治10(1877)年、株式会社秀玉堂として、古より青めのうの一大産地であった島根県松江市にて、古墳時代から続くめのう細工などの販売専門店として創業。直営店舗名の「めのうの店 川島」は昭和期の社名をそのままの形で残している。老舗の伝統を守りながら、オリジナル製品の企画、製造、セレクトショップでの製品販売など、新たな事業を展開している。
真菰 まこも
真菰はイネ科の多年草で、茎や葉は2メートル以上にも達する水辺の植物です。縄文時代中期の竪穴式住居から真菰の種が発見されていることから、稲以前から日本で自生していたと考えられています。有名な出雲大社の大きな注連縄は稲わらで作られていますが、本殿や瑞垣の中にあるお社の注連縄は、この真菰で作られています。毎年6月1日に行われる凉殿祭では真菰神事が行われ、この時道に敷かれ、國造が踏み歩いた真菰をいただくと、無病息災、五穀豊穣を賜るといわれています。また浄化力に優れ、邪気を祓うとされ、結界、注連縄を作るほか、産地では日用品として円座やむしろ作りにも使われていました。
この真菰の粉末と、出雲大社から峠を越えた日本海に面する鵜鷺地区で作られる藻塩。ふたつの出雲の恵みをブレンドしたのが「まこもバスソルト」です。また、真菰の成長が著しい6月から8月に収穫した葉を使用した「まこも茶」は、焙煎による香ばしさとほどよい甘さが特徴です。
真菰についての古典への記述に始まり、真菰に発生するマコモタケ、葉の機能や植物としての浄化力など、真菰にまつわる文化や歴史、健康的機能や栽培者の情報まで、総合的な情報を凝縮した書籍『新・出雲國 まこも風土記』もあわせて販売いたします。
里山暮らし研究所 プロフィール
2016年より、島根県雲南市の高原地帯、自然豊かな棚田地域にて創業。地域の自然や棚田の伝統をを活用した六次産業の創造、若者が暮らせる里山づくりを目指し活動中。農薬、化学肥料を一切使用しない真菰の栽培、真菰製品の製造などを行っている。