仮想通貨
2017年は日本における「仮想通貨元年」と呼ばれる。ビットコインの上昇率は、2017年11月までの1年間で10倍以上になるなど、相場と知名度が急上昇した。仮想通貨を法的な「通貨」として認めたのは、世界でも日本が初めての国家となった。世間を騒然とさせた取引所のハッキング事件により、仮想通貨=危ないというイメージを持つ人も多いが、仮想通貨は今後、消滅するどころかますます私たちの生活の一部になっていくだろう。通貨=お金とは何か、という本質的な問いを国家にも個人にも突きつける仮想通貨なるものを紐解いてみたい。
日本語では「仮想通貨」と訳されているが、ビットコインなどの暗号技術を基盤にした通貨は、元々はクリプトカレンシー(crypt currency)=「暗号通貨」と名付けられた。ビットコインをはじめとする仮想通貨とは何かを手っ取り早く理解したいのなら、『ビットコインと仮想通貨』から入ると良いだろう。仮想通貨の投資法やその安全性、ビットコインやブロックチェーンの活用事例などが絵や図をふんだんに使いつつ解説されるので、ビットコインの技術に馴染みが全くなくても、仮想通貨のイロハを手軽に把握できる。実際に投資を始めてみようと思う人にも、入りやすい内容だ。
マンガでわかるビットコインと仮想通貨
三原弘之(監修)
池田書店
1100円 (税込)
ビットコインの概念が誕生したのは今からちょうど10年前の2008年のこと。「サトシ・ナカモト」を名乗る人物がメーリングリストに投稿した論文を元に、ビットコインの技術が確立された。サトシは、ユーザーがアップデートや改良のできるオープンソース・ソフトウェアを残して2011年に姿を消して以来、現在に到るまでその正体をどこにも明かしていない。その謎の人物、サトシの考案したビットコインがどのように誕生し、一大市場を確立するまでになったか、そしてその発展に密に関わった人々の人生にどのような波紋を投げかけたのか。その全貌は、ビットコインをめぐる新たなゴールドラッシュに渦巻く、様々な人々の姿を描くドキュメンタリーである『デジタル・ゴールド』に詳しい。ニューヨーク・タイムズ紙記者である著者が綿密に取材し、人間的な側面をふんだんに描き出した本作は、ビットコインの発明者である謎の人物、経済的・個人的な自由を重んじる理想主義者、ドラッグ市場の決済に利用し巨大闇サイトを運営する青年、シリコンバレーの起業家や投資家など、バラエティに富んだ登場人物が出演し、まるで映画を見ているようで、圧巻だ。もし自分が大金を手にする機会があるなら、どのような生き方をするのだろうかと考えさせられる。
デジタル・ゴールド
ビットコイン、その知られざる物語
ナサニエル・ポッパー(著)
日本経済新聞出版社
3080円(税込)
仮想通貨の技術自体は「お金」と同様、善でも悪でもないが、ひとたびそこに人間が関わると、その人の持つ様々な欲や思惑、信条などが絡んでいく。仮想通貨は、まさに現代のゴールドラッシュ。一攫千金を夢見たり、お金で身をもち崩す人間の姿は、今も昔も本質的にはそう変わらない。
『貨幣の「新」世界史』は、2008年の金融危機をきっかけに、なぜこんなにも人間がお金に翻弄されるか、疑問を抱いたウォール街の投資銀行家がお金に対する理解を深める旅に出る内容。著者は25ヶ国以上を訪れ、脳科学、行動経済学、人類学、歴史学、宗教学、古銭学の専門家を取材し、お金のあらゆる側面や交換行為について探求する。貨幣の誕生や歴史だけでなく未来にまで目を向ける、読み応えのある一冊だ。
貨幣の「新」世界史
ハンムラビ法典からビットコインまで
カビール・セガール(著)
早川書房
2310円(税込)
この先、お金はどのような形に変化していくのだろうか。『電子マネー革命がやって来る!』は、IT技術と金融が本格的に結びつき、交換手段として貨幣の代わりにコンピューターが置き換わりつつある時代を実例とともに描き出す。日本の電子マネーをめぐる動きや、世界各国でいかにキャッシュレス社会への移行が進んでいるかがわかる。
電子マネー革命がやって来る!
安達一彦、山崎秀夫(著)
財界研究所
1650円(税込)
『なぜ中国人は財布を持たないのか』は、日本よりもはるかにキャッシュレス社会化が進んでいる隣国、中国の最新の姿を追うルポルタージュ。デジタル化=進歩という単純な公式ではなく、社会のあり方や制度、「信用」などの違いがキャッシュレス化の普及の違いを生み出していると説明する。短期間で激動の変化を遂げている社会に暮らす人々の生活を垣間見ることができ、興味深い。
なぜ中国人は財布を持たないのか
中島恵(著)
日本経済新聞出版社
935円(税込)
仮想通貨は、「電子マネー」とはどう異なるのか。電子マネーは、現金を事前にチャージ(入金)し、チャージした額は現金と等価の価値を持つが、何とでも交換できるわけではなく、モノやサービスと交換できるだけだ。一方、仮想通貨はそれ自体に価値があるため、お金と交換することができる。市場でより多くの人々が価値を認めれば、通貨の価値は上がり、逆に誰も認めなければ価値は下がる。また、電子マネーは企業が発行するものであり、使用範囲も限定されているのに対し、仮想通貨は第三者である発行主体が存在しないことが大きな特徴だ。
社会に浸透しつつある電子マネーの全体像や仮想通貨との違いを具体的かつ平易に説明しているのが、『知っておきたい電子マネーと仮想通貨』。電子化によって新たな局面を迎えつつある「地域通貨」について、また仮想通貨を支える技術であるブロックチェーンについての解説もわかりやすく、入門書として読みたい。
知っておきたい電子マネーと仮想通貨
三菱総合研究所(編著)
マイナビ出版
935円(税込)
ブロックチェーンとは、ブロックに書き込まれたデータを暗号化技術を活用してチェーンで繋いでいく技術。データは分散的に記録、管理される仕組みだ。ビットコインやブロックチェーンは、これからの社会のシステムを大きく変える、インターネット以来の画期的な技術革新として注目されている。データの改ざんが非常に困難であること、記録されたデータが公になっているというオープン性を持つこと、さらにある一定条件が整うと、自動的に契約や手続きが開始されるというスマートコントラクト機能を備えることから、法的な登記や医療データの共有など、様々な場面での活用が期待されているという。また、ブロックチェーンにルーチン的なワークを任せ、人間はより創造的な仕事に携わるなどといった、働き方にも変化が生まれるかもしれない。『仮想通貨革命で働き方が変わる』は、ほとんど手数料をかけずに少額の送金ができる仮想通貨による決済がシェアリングエコノミークラウドソーシングを可能にし、フリーランサーを支えると論じ、新しいIT技術が働き方に及ぼす変革の可能性や日米の現状を考察する。
仮想通貨革命で働き方が変わる
「働き方改革」よりも大切なこと
野口悠紀雄(著)
ダイヤモンド社
1650円(税込)
仮想通貨の急激な高騰によって、ここ数年間で億単位の資産を手にした人々が生まれている。画面に映し出される多額の数字を見つめ、人は何を想うものなのだろうか。お金は幸せを運んできてくれるのだろうか。巨額の報酬がもらえれば、嫌な仕事もこなすのだろうか。「お金」と「働く」、そして「幸せ」の本質について考えたいならば、『幸せな人は「お金」と「働く」を知っている』を読んでみよう。お金に振り回されない生き方の軸を確立するヒントになる。
幸せな人は「お金」と「働く」を知っている
新井和宏(著)
イースト・プレス
1100円(税込)
お金は金にせよ、貨幣にせよ、仮想通貨にせよ、その人の価値観や生き様を映し出す鏡となる。お金の新しい形である仮想通貨が生まれ、社会は否が応でも変化を促されている。仮想通貨は、私たちにお金の本質と向き合う機会を与えてくれているのかも知れない。