Feature #07

戦争を理解する本

なぜ、戦争は無くならないのでしょうか。世界中の多くの人が、“平和”を口にし、起こってしまった戦争やテロに眉をひそめ、胸を痛めているというのに。事が冷めたと思えばまたしても起こってしまう戦争を誰もが真剣なまなざしでみていることでしょう。テレビやネットからあふれる情報は、何を教えてくれたでしょうか。一時的には終息をむかえたようにみえても、明確な答えは見当たりません。

そこで、どうして人類の前に戦争が存在するのか、そしてどうすれば、武力戦争の無い新しいレベルの文明へ移行することができるのか、を学ぶヒントとなりそうな本を集めてみました。

人間はもう人を殺す必要がないとするならば、どうすれば、そのレベルまで脱することができるのでしょうか。それは、ひとりひとりの心の中にある戦争をよく理解することが、第一歩となるのだと思います。誰の心の中にも凶器となりうる要素が潜んでいるのです。実際、戦争はまわりを見渡せば、形を変えてどこにでも起こっています。愛でさえ、ある時には血を流すための理由となるのですから。

“闘い”は、人類創世以来、常に存在していました。それは、単純に否定されるべきものではないはずです。“闘い”は、新しい進化を進めようとする“力”であるかもしれません。人類の意識の奥底に、誰もが持っている欲求であるとするならば、その奥にある愛の力を学ぶことによってのみ、変質させることができるのではないでしょうか。そして、さらに新しいレベルへの飛躍へとつなげることも可能でしょう。理解を終えた後で、始めて“平和”が実感としてイメージできそうな気もします。“武力”の時代を超えて、“知力”が大きなパワーとなり始めたこの時代に生きる私たちは、人類だけに限らず、地球全体を知覚し、進化させようとしているのかもしれません。


千の顔をもつ英雄(上)
ジョセフ・キャンベル
人文書院
3080円 (税込)

数々の神話で、主人公が冒険の途上で直面する危機やジレンマ、死や再生などは、時代や場所が変わっても現代の私達が人生で遭遇する出来事と本質は共通している。だからだろうか、神話を読む時、私たちは登場する英雄とともに同じカタルシスを感じる。残酷な話や理不尽な話も多いが、それはデフォルメされているだけであって、現実の世界となんら変わるところはないのではないだろうか。神話は人間の意識の奥底に眠る原型をわかりやすい形に取り出したものだという説がある。宇宙創世の物語などが、全く別の場所で生まれたのにもかかわらず、共通した要素を持っているのも、本来、人間全体が持っている共同無意識が生み出した物語だとすれば、理解できる話である。著者のキャンベルは、神話研究の第一人者として、長年膨大な成果をもたらしてきた人物だが、ここ数年、再び彼の研究が多くの人の関心を集めている様である。大きな変革の時代を迎える時、人は知らず知らずのうちに、内なる英雄を呼び起こす必要性を感じているのかもしれない。
古今東西の膨大な神話に登場する英雄たちの冒険譚。その初源の意味を明かし、これまで宗教と神話の衣を被って偽装されてきた人間の無意識の仮面を引き剝がす。オンデマンド版。

千の顔をもつ英雄(下)
ジョセフ・キャンベル
人文書院
3080円 (税込)

数々の神話で、主人公が冒険の途上で直面する危機やジレンマ、死や再生などは、時代や場所が変わっても現代の私達が人生で遭遇する出来事と本質は共通している。だからだろうか、神話を読む時、私たちは登場する英雄とともに同じカタルシスを感じる。残酷な話や理不尽な話も多いが、それはデフォルメされているだけであって、現実の世界となんら変わるところはないのではないだろうか。神話は人間の意識の奥底に眠る原型をわかりやすい形に取り出したものだという説がある。宇宙創世の物語などが、全く別の場所で生まれたのにもかかわらず、共通した要素を持っているのも、本来、人間全体が持っている共同無意識が生み出した物語だとすれば、理解できる話である。著者のキャンベルは、神話研究の第一人者として、長年膨大な成果をもたらしてきた人物だが、ここ近年、再び彼の研究が多くの人の関心を集めている様である。大きな変革の時代を迎える時、人は知らず知らずのうちに、内なる英雄を呼び起こす必要性を感じているのかもしれない。
古今東西の膨大な神話に登場する英雄たちの冒険譚。その初源の意味を明かし、これまで宗教と神話の衣を被って偽装されてきた人間の無意識の仮面を引き剝がす。オンデマンド版。

破壊
エーリッヒ・フロム
紀伊國屋書店
5280円 (税込)

ヒトだけが理由もなしに生命を破壊することに快楽を覚えるのか?
動物行動学と精神分析の立場から人間の存在的要求の結果として破壊性をとらえていく優れた文明論。

マゾッホとサド
ジル・ドゥルーズ
晶文社
2310円 (税込)

サディズムの超自我とマゾヒズムの自我、そして死への本能。誰もが奥底に持っているこれらの本質をいったいどれだけの人が理解しているだろう? 人はサドとマゾという言葉をある種の異常者に対して使うと思っているかもしれない。しかし実はどんな人の中にもこの奇形性は存在するのであり、マゾヒズムはサディズムの裏返しではない。サディズムの超自我とマゾヒズムの自我、そして死の本能について考察する。

夜と霧
V.フランクル

みすず書房
1650円 (税込)

人類の歴史の中でも長く語りつがれていくであろうナチスによるユダヤ人虐殺の事実。人間がどれほど残虐になれるかを思い知らされる、私たちの歴史である。極限状態の中では、人間の尊厳などもろくも崩れ落ちてしまうものなのだろうか? 強制収容所についても、史実として何が起きていたかという情報を得ることはできるが、その中にいた人間の本当の心の内はどうだったのだろうか? 本書は、人がその地位や所有物、人格を一切はく奪され、理不尽な虐殺や暴力が支配していた強制収容所の狂気がうずまく状態の中でも、他人に対する配慮や生の意味を見失わずに自己の内面や他の囚人、監視兵の心情を観察し続けた著者が記した稀有な記録である。このような極限状態の中で、人間が客観的な視点を持ちうること事態、驚くべきことだろう。その筆致は起きていることの悲惨さに反して、静かに淡々としている。だからこそ、人間の持つ残虐性、愚かさと同時に高潔さや可能性がくっきりと浮かび上がり、読む度に驚きを与える本となっている。本書からは現在の飽食の時代に忘れられている、何か大切な真実を見い出すことができるかもしれない。

ひとはなぜ戦争をするのか
A・アインシュタイン、S・フロイト
講談社
660円 (税込)

アインシュタインが戦争をテーマに選んだ対話の相手はフロイト。生への躍動と死への躍動、愛と憎しみ、人間の本性にふれながら2人が導き出した答とは?

敵の顔
サム・キーン
柏書房
5126円 (税込)

古今東西の「敵の顔」を読み解く戦争心理の図像額。敵を作りあげる人間の性、戦意向上プロパガンダから敵意の心理を探る。

攻撃
悪の自然誌

コンラート・ローレンツ
みすず書房
3630円 (税込)

攻撃本能に新しい角度から光をあて、世界中に大きな反響をまきおこした名著。攻撃は、種を維持する働きをもつことを興味深い実例によって述べる

暴力論
喧嘩・テロリズム・核戦争をつなぐもの

原田統吉
日本教文社
1540円 (税込)

人間にとっての暴力の位置付け、暴力と非暴力の関係など、日本人が避けている問題を国家レベルに至るまで、徹底的に分析考察。その本質と機能に肉迫する。

覚醒のネットワーク
上田紀行
河出書房新社
792円 (税込)

ここまで来てしまった人類。たくさんの殻に囲まれた私たちの世界。ただ表面的な連帯で安心していても意味がない。本当は一人ひとりが目覚め、知的なネットワークを起こすべきなのだ。社会や環境に対する鋭い指摘と、陥りやすい精神的逃避への警告。こんな重要なテーマなのに、驚くほどやさしい言葉でわかりやすく書かれている。この本の中にはこれからの時代を生きていく私たちに必要な、本当の勇気が詰まっている。目を覚ます1冊!

宇宙船地球号 操縦マニュアル
リチャード・バックミンスター・フラー
筑摩書房
990円 (税込)

建築家として科学者として、様々な角度から人間存在と全宇宙をとらえていったフラー。硬直した政治的思考ではなく、人類にとっての次のステップを明示してくれる。

ぼくのだ!わたしのよ!
レオ・レオニ
好学社
1601円 (税込)

イタリアの絵本作家が描く、とてもシンプルなおはなし。「みんなみんなのものよ」と気付いたカエルたちの、今までに無く幸せな気持ちを私たち人類も味わいたい。

ガラスの地球を救え
手塚治虫
光文社
528円(税込)

マンガ家を超えた存在であり、また生涯を通して人間・地球・宇宙をテーマにし続けた手塚治虫。自分自身への飾り気のない言葉で語った人類への最強のメッセージ。