Feature #09

人生の描きかた

 誰でも生き方に疑問を抱く時がある。 自分自身が納得する道を見つけたいと思っても、何をするべきか見えず、無気力な被害者になり、あきらめて感覚を麻痺させる。このパターンに陥っている時、 思考は自分で作った枠の中で空回りし続ける。 先に進んだかのように見えても、それはいつもの枠の中だけのことかもしれず、どう偽っても見える景色が変わることはない。 何度も同じパターンが繰り返され、いつしかそれと向き合うことになる。 矛盾するようだが、自分自身の道を見つけようと意図するほど、それは見つからない。

現実とかかわる時、仕事の問題は避けては通れない。仕事をすることは、他者の評価が必要となり本当に厳しいものだが、だからこそ、お金を超えた人生の大切なテーマとなりうる。しかし、失業、病気などの他、意図的に働くことを望まない人が、年々増加している。

『働くことがイヤな人のための本』は、仕事に疑問を感じているあらゆる年代の人と、自意識の極みを通過してきた哲学者が真っ向から向き合った本。仕事、働く、生きることに対して、どこか違和感を感じている人への「トドメ」となるかもしれない。

精神を病んだ人などを、社会から隔離するシステムがあるが、保護された環境にいて現実と直面できないことは、当人にとっては、ある意味不幸なことかもしれない。それとは別のアプローチを模索する『悩む力』では、「誰も排除しないで、利益をあげる」ことをテーマに、多くの問題を抱える人々が共同生活しながら、会社を運営する「べてるの家」をリポートする。社会への適応が難しかった人たちが、「安心してサボれる会社づくり」「利益の無いところを大切に」などの理念のもと、お互いにぶつかりあい、弱さを認めあう生活が、逆にユニークな磁場を生み出すこととなっている。

人と自然と社会の関係をつくるランドスケープ・デザインの仕事から、人が働き生きていく居場所をどうつくるのかを考える『ひとの居場所をつくる』。子どもたちや二代、三代あとの人々を想って、行動を示すことが利害を超えた楽しさを生み出す。

人の役に立つことは、本能的に嬉しいものである。社会は無数の仕事が集まって成り立っているが、身近な仕事ほどその実態は分からない。ミシン修理、貯水地巡視、絵画修復家、手術用縫合糸製造、養蜂家、靴職人・・・・・・何気なく過ごしている日々は、多くの人々の仕事によって支えられている。『幸福なしごと』は、仕事に情熱を注ぐ人々を追った150のルポルタージュ。

パターンを変えるために転職したり、旅に出かけるのも、一つの手段かもしれないが、日々の小さな行為の積み重ねが、大きな現実となることも忘れてはいけない。小さなことを大真面目にできなければ、決して大きなことはできないのだ。『キッパリ!』では、靴をそろえる、疲れた時は真剣に寝る、雑誌を捨てる時はページをめくらない、お菓子を食べない日を作る、冷蔵庫を片す、髪の分け目を変えてみる、テレビのスイッチを切る、遅刻をしない、など、60個もの自分のパターンを変える方法を、思わず「あるある」とニヤッとしてしまう四コマ漫画で紹介する。

何かを生み出したり、変化を求めるために、外からのインプットを求めるかもしれないが、それよりも今あるものを見極めて削ってゆくことのほうが大切かもしれない。大きな災害に遭いすべてを無くした時や、死を目前にして万策尽きた時、人は今までのパターンを手放すことにより、潜在的な生の力が目覚めることがあるという。明治時代の華族に生まれ、類い稀な才能をもって世界を渡り歩いた中村天風。しかし死病を患い、生きるすべを奪われたその時、大きなターニングポイントがやって来た。縁の導くままインドに渡り、心の仕組みを現実にフィードバックする方法を会得したのだ。日本人初のヨガ直伝者として、「成功哲学」の先駆けとして、天風哲学の粋を収めた『盛大な人生』。辻説法のような天風の言葉が、行き当たりばったりの人生に喝を入れる。

ひと昔前の日本は、領土を巡っての戦や疫病、飢饉などが当たり前にあり、死が今よりも身近なものだった。その現実が日本独自の文化を洗練したといっても過言ではないだろう。『代表的日本人』は、世界に日本の文化や思想を紹介した明治時代の代表的な著作。上杉鷹山、西郷隆盛、二宮尊徳など、個を超えた歴史の潮流に向き合い、天命に忠実に生き抜いた人々の生涯を綴ったものだ。

それは私たちが天職と思っているものとは、また違うものかもしれない。「五十にして天命を知る」という有名な言葉を残した古代中国の思想家、孔子。世俗を見限ることなく、世と人のために人生を捧げた孔子は「天命」をどのように受け止めていたのか。孔子も悩み、落ち込み、挫折する人であったが、他の人と決定的に違うのは、天命を受け入れた覚悟、なのかもしれない。『現代人の論語』は、孔子と弟子達や要人達との間に交された対話録「論語」を抜粋し、孔子の豊かな人間像を紹介する。全ての意図を手放し、天命を知ることは、個人の幸せとはかけ離れたことかもしれない。

いわゆる幸せという概念は、自分だけでは成り立たないものだとすると、それを求むことすら、意味が違ってくるだろう。150年程前にヨーロッパで活躍した詩人、劇作歌のメーテルリンクは、人間の意識下を象徴するかのような、鋭い視点をもつ作品を多く残した人物だ。代表作『青い鳥』は幻想的な童話劇のシナリオ形式で綴られたものだが、その多次元世界の描写と、登場人物である「光」「水」「喜び」などのエレメント達の生き生きした姿は、思わずはっとさせられる。チルチルとミチルが探しにいった「青い鳥」を、あなたはどのように見つけるだろうか。


働くことがイヤな人のための本
中島義道
日本経済新聞出版社
628円 (税込)

長年「なぜ働かなくてはいけないの?」 という素朴な問いを持ち続けてきた著者。その根源には、生きること、社会と関わることについての哲学的な考察が存在する。生きている限り生じる、様々な摩擦や矛盾。だからこそ関わるという、肯定的な姿勢を提案する。

悩む力
べてるの家の人々

斉藤道雄
みすず書房
2200円 (税込)

「誰も排除しないで、利益をあげる」ことをテーマに、問題を抱える人々が共同生活しながら会社を運営する「べてるの家」のリポート。

【used】ひとの居場所をつくる
ランドスケープ・デザイナー 田瀬理夫さんの話をつうじて

西村佳哲
筑摩書房
2090円 (税込)

「これからの日本でどう生きていこう?」 人と自然と社会の関係をつくるランドスケープ・デザインの仕事から、人が働き生きていく場所をどうつくるのか考える。

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何卒ご理解の程よろしくお願いいたします。

幸福なしごと
山田優子
自然食通信社
2304円 (税込)

仕事に情熱を注ぐ人々を追った150のルポルタージュ。社会は無数の仕事が集まって成り立っているが身近な仕事ほどその実態は分からない。ミシン修理、貯水地巡視、絵画修復家、養蜂家・・・。仕事に対する誇りと愛着が生き方にも通じる。

キッパリ!
たった5分間で自分を変える方法
上大岡トメ
幻冬舎
502円 (税込)

日々の小さな行為の積み重ねが大きな現実となる! たった5分でできる、自分のパターンを変える方法の数々。楽しい自己変革。

盛大な人生
中村天風
日本経営合理化協会出版局
10780円 (税込)

死病を患い、失意の中で出会ったカリアッパ師との出会い。経済界に多くの影響を残す、天風のターニングポイントがここにある。

代表的日本人
内村鑑三
岩波書店
616円 (税込)

世界に日本の文化や思想を紹介した明治時代の代表的な著作。個を超えた歴史の潮流に向き合い、天命に忠実に生き抜いた人々の生涯。

現代人の論語 
呉智英
文藝春秋
555円 (税込)

孔子と弟子達や要人達との間に交された対話録「論語」を抜粋し、孔子の豊かな人間像を紹介する。

青い鳥
モーリス・メーテルリンク
新潮社

506円 (税込)

全ての意図を手放し、天命を知ることは、個人の幸せとはかけ離れたことかもしれない。
いわゆる幸せという概念は、自分だけでは成り立たないものだとすると、それを求むことすら、意味が違ってくるだろう。150年程前にヨーロッパで活躍した詩人、劇作歌のメーテルリンクは、人間の意識下を象徴するかのような、鋭い視点をもつ作品を多く残した人物だ。代表作『青い鳥』は幻想的な童話劇のシナリオ形式で綴られたものだが、その多次元世界の描写と、登場人物である「光」「水」「喜び」などのエレメント達の生き生きした姿は、思わずはっとさせられる。
チルチルとミチルが探しにいった「青い鳥」を、あなたはどのように見つけるだろうか。