vol.0729

2020年11月満月のたより

フェミニズムってなんですか?

Photo by Evie S. on Unsplash

 -フェミニズムってなんですか? –

「フェミニズムってなんですか?最近よく聞きますけど。」 という、
ある日の問いかけに、そうか…なるほどと、 それをそのままテーマとタイトルにしてしまったのが今号です。

日本でフェミニズムと言えば、 変な口うるさいおばさんがアレコレいちゃもんをつけている…
というのが、テレビ番組などを通して長く抱かれてきた印象です。
そしてネットに舞台が移っても、お気持ち、あなたの考え、などなど、
女性の主張は感情的、ただの好き嫌いだと片づけられがちです。

#MeToo以降、遅ればせながら世界の動向に目が向き、
日本の社会にもようやくその流れが現れ、 ヒステリー、考えすぎ、年増の僻みなどと言われてきたことにも、
まずは声をあげてみるというスタート地点が見えてきました。

この流れの主な舞台であるネットに存在するフェミニストたちが 本物のフェミニストではないとけなされる一方、
現在のカナダ首相は男性でありフェミニストとして世界的に有名で、 それは称賛でこそあれ、
揶揄されているわけではありません。

フェミニズムとは何?
 そしてフェミニストとは誰?
女である時期?
 女を捨てる?
 もう女じゃない… 自分が何者であるかを誰かに認めてもらう必要はなく、
それはフェミニズムの主張のベースでありつつ、
実のところ、どの性別、ジェンダー、誰にでも当てはまることです。

フェミニズムにも歴史や紆余曲折、さまざまなアップダウンがあります。
後から振り返ると今はアップの時期なのかもしれない…
そんな今のうちに知ってしまうための書籍をご紹介します。

この前書きでイライラした皆さん、ワクワクした皆さん、とにかくどれでも一冊、読んでみてください。

ITEM

男も女もみんなフェミニストでなきゃ
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ / 河出書房新社 / 1320円(税込)

原題“We should all be feminists”がプリントされたクリスチャン・ディオールのTシャツをセレブリティたちが着用し、NY公共図書館ではトートバッグが販売され、著者による同題のスピーチも好評を博し、ある種ポップな標語として本書の名は世界中で知られている。女性だけでなく、「男も女もみんな」フェミニストでなきゃというその題名の真意とは?

説教したがる男たち
レベッカ・ソルニット / 左右社 / 2640円(税込)

相手が女性となると途端に相手をあなどり、知っていることにすらありがたくも迷惑な説明や講釈を始める男性にありがちな傾向に、本書のタイトルからman(男)とexplain(説明)を掛け合わせた「マンスプレイニング mansplaining」という言葉が生み出され、それはやがて#MeTooへと大きな流れを生み出していった。社会構造的なパワーバランスの差によって口をつぐまされてきた女性に、本書は創造力と言葉という武器を与えてくれる。

舌を抜かれる女たち
メアリー・ビアード / 晶文社 / 1760円(税込)

会議での発言が軽視され、専門分野について専門外の男性にマンスプレイニングされる。タイトルにあるように、女性の舌はいつから抜かれ続けてきたのか。精力的に活動するフェミニストであり、イギリス一有名な古典学者と言われる著者が、古代から続いてきた女性の発言に対する嫌悪のルーツを紐解く。

フェミニズムはみんなのもの
情熱の政治学
ベル・フックス / エトセトラブックス / 1980円(税込)

家父長制的な社会構造を変えずに女性の地位向上だけを目指しても、特定のエリートを作り出すだけで女性差別問題の根本的な解決には至らない。白人優位な米社会で黒人フェミニストとして活動を続けてきた著者が約20年前に運動の再生を願い記したメッセージを、日本では今ようやく受け止めることができそうだ。

ほしいものはなんですか?
益田ミリ / ミシマ社 / 1320円(税込)

日常の中でふと感じる「あれ…わたし?」という感覚。声高で明確な主張となる数歩手前でつぶやかれる言葉の数々に思いがけず痛い部分を突かれ、自分のことのようだと多数の女性から感想が寄せられている。ということは、女性が何を考えているかわからないという男性にもおすすめの漫画作品ということではないだろうか。

女になる方法
ロックンロールな13歳のフェミニスト成長記
キャトリン・モラン / 青土社 / 2090円(税込)

ブラジャーの選び方からムダ毛処理、恋愛、結婚、出産、中絶。社会から「女」と認識されるためにやるべきことと、考えるべきことが女には多すぎる。音楽ライター、作家、司会者として活躍する著者が皮肉とユーモア満載で綴る、痛くて笑えて泣けるフェミニストエッセイ。

百女百様
街で見かけた女性たち
はらだ有彩 / 内外出版社 / 1650円(税込)

適正な色と厚さのストッキング、年相応のスカート丈など、社会的に求められる服装規範の内と外で暮らす女性たちの姿をイラストと文章で紹介。好きなものを好きなように自由に着こなす女性たちの姿に、普段の自分の選択が無意識のうちに細かな縛りだらけなことに気づく。楽しく解放感溢れる一冊。

#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム
石川優実 / 現代書館 / 1430円(税込)

異例の社会運動として海外メディアでも取り上げられた、職場でのハイヒール強制撤廃運動、#KuToo。この運動は著者がグラビアアイドルだという理由で、消費対象と思われていた者が自ら語り出すことに対する反発者たちの姿も浮き彫りにした。本書は一つの成功例であると同時に、フェミニズムへのバックラッシュの記録でもある。

バッド・フェミニスト
ロクサーヌ・ゲイ / 亜紀書房 / 2090円(税込)

フェミニストと名乗るからにはその行いは全て正しく、論理にも破綻があってはならない。と、思われてしまうのはなぜなのか。ならば頭にバッドを付けたなら? ポップカルチャーから自爆テロまで、現代アメリカの性差別、人種差別社会を生き抜くバッドなフェミニストによる批評集でありエッセイ集。

お砂糖とスパイスと爆発的な何か
不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門
北村紗衣 / 書肆侃侃房 / 1650円(税込)

マザーグースの「お砂糖にスパイスと、素敵なものぜんぶ」で出来ている女の子は、かつての女の子の理想像だった。では今「爆発的な何か」を手に入れた女性から見えるものとは? 気鋭のシェイクスピア、フェミニスト批評、舞台芸術研究者である著者が新しい世界の見方を使って物語を読み解く。

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