『Interview Archive』は、『NewsLetter』『Spiritual Databook』に掲載されたインタビューです。
内容や役職などはインタビュー当時のものです。予めご理解のうえお楽しみください。

Special Interview Archive #08 1994

ピーターラッセル氏にきく

ピーター・ラッセル / 科学者、物理学者、著述家

「例えば私たちは他の人々を怖れます。

その怖れが私たちを愛から遠ざけてしまうのです。

これは人の幼児期や社会のありかたともかかわっていますから、その障害を取り除く試みは非常に奥深く時間のかかるものですし、私たちはそれが簡単ではないことをよく学ばなければなりません。

一生かかっても解決しないかもしれないことなのです。」

地球と人間は、これまで体験したことのない変化の中に飛び込んでいるのか?

『グローバル・ブレイン』『ホワイトホール・イン・タイム』という2冊の本は、人類の意識が進んでいこうとしている未来を示唆している。

私たちは、本当はどこへ向かっているのだろうか? 

来日したピーター・ラッセル氏にその真意を聞く。

B (ブッククラブ回) ─最初にニューエイジが提唱されたころ、私たちはとてもエキサイティングな思いをしてピーターさんやカプラ、ファーガソンの本から多くの刺激を受けました。しかしここ何年かは、ニューエイジ全体が停滞しているように感じられます。その原因の一つは、ニューエイジでよく言われることがいろいろな意味で矛盾やジレンマを含んでいるからではないでしょうか。スピリチュアルなリーダーというのは責任を伴う難しいものだと思うのですが、現在の状況を見ると、「教える」ことに対して人々が簡単に考えすぎているように思いますが。

まったく同感です。全ての人には、その人が抱えている問題があります。自分をスピリチュアルな教師であると自称している人々の多くは、熱心に他の人々を助けようとしていますが、リーダーである人々も完全ではありません。多くの問題を抱えています。彼らに同情をすべきでしょう。私たちはお互いが教師になるべきです。私たちは常に自己探求を続けるべきなのです。

B ブッダやキリストなどの覚者は、自分自身で経典を書くことを嫌い、その瞬間そこに存在する人だけに必要な言葉を語りました。ウスペンスキーはグルジェフの教えをわかりやすく紹介しようとしましたが、グルジェフ自身は、催眠状態の人が知識を得ることで、わかったつもりになってしまうことを避け、わざと難解な表現を使うという複雑な方法で本を残しました。『ホワイトホール・イン・タイム』は、たくさんの情報がたいへんわかりやすく著されています。ピーターさんが本当にお伝えになりたいのは知識や情報ではなくてその奥にある本質だと思うのですが、実際にピーターさんの本は手にした人々にどのような影響を与えているとお考えでしょうか?

彼らが今まで思いもしなかったような可能性をみることができたのではないでしょうか。また、成長の為に日常生活の中でできることの手掛かりになったと思います。判断を手放したり、瞬間に生きるなど。この本は広い範囲の読者を想定しています。2つに大きく分けると、片方すでにスピリチュアルな事に対して関心を持っている人々で、彼らがすでに試みていることを勇気づけたり刺激を与えていると思います。

もう片方の人々は半分眠っている状態の人々で、彼らを少しでも目覚めさせたいと思いました。私は科学者なので、この本では科学的で合理的な言葉を使っています。現代は合理主義の時代なので、人々は理由がなければ信じることができません。過去には聖者が奇跡を起こすことで真実を人々に示すことが有効でしたが、現代では真実の証明を科学に頼っているのです。だから私は合理的なマインドでもスピリチュアルな真理とその重要さを理解できるような方法で述べているのです。

B ─『ホワイトホール・イン・タイム』では、無条件の愛や悟りはすべての抑圧がはずれたところで存在すると書かれていて、どうやってそれを得るか、理解するかを解説しようとされていますが、それらが本当に無条件であるならば、存在そのものから起こることで、人間が意図して作りだしたり努力して得られるものではありません。ニューエイジのリーダーたちがその手段をやさしく解説してくれると、人々はそれを追っていけば愛や悟りに到達できるのではないかと錯覚してしまうと思うのですが、それについてはどうお考えですか?

愛とは作りだせるものではないと思います。愛とはすべての人に自然に存在しているのに、私たちが判断などによりバリアを張って愛することをやめているだけなのです。本当は、人をよりよく愛そうと試みるかわりに、愛することを妨げる障害を取り除くべきなのです。

例えば私たちは他の人々を怖れます。その怖れが私たちを愛から遠ざけてしまうのです。これは人の幼児期や社会のありかたともかかわっていますから、その障害を取り除く試みは非常に奥深く時間のかかるものですし、私たちはそれが簡単ではないことをよく学ばなければなりません。一生かかっても解決しないかもしれないことなのです。大切なのは自分の人生の方向を選び見定めることです。たとえばお金持ちになりたかったら長い年月と努力が必要なように、魂を豊かにしたかったら同じように長い時間と努力が必要なのです。私たちのできる事は内的成長や成熟への自然な過程を早めようと試みることです。

B ─実を言うと、私が『グローバル・ブレイン』を読んで特に興味深く感じた点は、人が意図しなくてもとにかく進化は起こっているという部分でした。たとえば、地球上を駆け巡っている情報網は世界を平和にしたいという人々ではなく、ビジネスとして利益を産み出そうとした人々によって進められました。人間の意図を超えて地球全体は自然にある方向へ進もうとしているのでしょうか? 今回の本では個人の努力と目覚めが強調されていますが。

人類、地球は進化し、それはどんどん加速しています。又、私たちには自由意志があります。人生で何をしたいか決断できるのです。それも進歩の一部です。私たちは目覚めれば目覚めるほどスピリチュアルな事の大きな価値を理解でき、その可能性に目を開かれるためさらに探求を進めたくなります。

本の中で私が試みたことは、人生の深い目的を与えられるような絵を描くことです。私が言う目覚めなくてはいけないということもプロセスの一部なのでしょう。進化は自然に起きるものであると私たちがあとずさりをしてしまうことがいいとは思えません。たぶん私たちはシステムの一部なのでしょう。私たちは時間と勝負していて、テクノロジーは日に日に進化し、環境はどんどん破壊されています。私たちはできるだけ早く目覚めるべきなのです。社会をよくするために物質的な面での発展が必要という意見もありますが、内面の成長が必要なのだと多くの人が感じています。

B─おっしゃっているように進化は加速している可能性があります。それはカオスに向かっているとも言えると思うのですが、渾沌の中には光があれば闇もあります。そこにはニューエイジの人々がいうような光だけではなく、闇もあるのではないでしょうか。

何が起きるかはわかりませんが、10年、15年先には多くの困難が待ち受けているのは確かでしょう。環境の破壊や政治、社会の混乱など。そこから逃れる道はありません。

西洋文明はあまりに物質的でエゴが中心だったため上手くいかなかったことがわかります。

しかし私は人類は滅びないと思います。多くの苦しみ、死があると思いますが。人類はその経験から学び、100年、1000年後には新しい文明が生まれるでしょう。

今日の私たちにできることは、世界の状況がひどくても、より良く生きようと試みることです。そうすれば、私たちは自分達の愛する能力を高めることによって他の人々を助けることができるようになります。困難な時でも同情を忘れず助け合えるのです。

B─その「より良い」というのは何を指すのでしょうか? 本の中でも言われている通り、宇宙というものが始まり、元々は一つだったものがプロセスを経るうちに私たちとなっています。この世に現われる現象が、本当は全て一つのものなのだとしたら、何をもってして物事をより良い、悪いと判断出来るのですか?

それは、どのような状況でその言葉を使うかに大きく関係すると思います。私たちが人を判断する時、その人が私に何かをしてくれると良い人と呼び、ひどいことをすると悪い人と考えます。

絶対的に良い悪いということは言えませんが、私が平和な気持ちになれることは良いと判断します。私は私のために、人はそれぞれ自分で判断すべきです。

しかし人々の間で共通する判断もあります。例えば拷問はよくないことで、それをなくすことに多くの人は同意するでしょう。結局何がより良いことかと言うと、人々の苦痛を減らし、もっと健康に、幸せな方向に向かうことで意見は一致するでしょう。

B─自分にとって良いと思うことが必ずしも人々や全体にとって良いとは限らないし、その判断が可能な人がいるのでしょうか?

私たちは常に、自分の出来るだけの努力をはらって成長に向かうべきでしょう。カオスの中で人はストレスや心配に満ちあふれてしまいますが、その中でより平和を感じて生きることも出来るのです。

B ─人間である以上ジレンマやフラストレーションを感じるのは当然だとおもいますが、今、 ピーターさんがお感じになっているのはどのようなことでしょうか?

もちろんたくさんのフラストレーションを感じています。特に目覚めていない人々の生き方をみていると。結局言葉は理解のための便利な道具にすぎないことは私もわかっています。

大切なのは何をするかでしょう。実を言うと私も今はあまり本を読みません。時間があれば、自分で探究を進めます。本は地図に過ぎません。理解することはやさしいけれども、それを実行するとなると非常な努力を要します。

私にとって興味をひかれるのは、スピリチュアルな教師としての人との関係の価値です。ジレンマは私の人生や時間、能力をどのようにしたらより良く活かせるかということです。

私は人々とコミュニケーションをとるためにもっと本を書くべきなのかもしれない。そして自分が本に書いた通りに生きる必要があります。そのためには人生で何をすべきか自問します。

私はいつも世界中を移動していて、それは多くの人々と話ができてよいのですが、自分にとっては一箇所にとどまる方がよいのかもしれません。次に本を書くとしたら、私の個人的な探究の話で、科学とスピリチュアリティを統合したい思っています。

しかし今のところまったく別のことも考えています。庭師になるといったような。人生は本を書くには短かすぎますからね。

B ─ありがとうございました。


ピーター・ラッセル Peter Russell
1946年生まれ。 ケンブリッジ大学で数学、理論物理学、実験心理学、コンピューター・サイエンスを学び、その後ブリストル大学で瞑想心理に関する研究に従事。 国際的企業でさまざまなコンサルティングをするかたわら、数多くの国際会議で基調講演を行なう。

※インタビューは当時のものです。

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関連書籍紹介

グローバル・ブレイン
情報ネットワーク社会と人間の課題
ピーター・ラッセル
工作舎
1900円+税

ニューサイエンスの潮流は、地球を一つの生命体と考えるガイア思想を多くの人の感覚に植え付けた。この考え方は、一時期、ブームを引き起こしもしたが、そのブームの波が去った後でも消えてなくなるということは無く、むしろ新しい常識として一般的な教養として定着しつつあるようである。本書もガイア思想の一つとしてよく知られるものであるが、「情報」や「ネットワーク」の捉え方が、より現実的で具体性を帯びているのが特徴だ。「地球は一つの生命体であり、地球上に張り巡らされている情報ネットワークはその生命体の神経のようなものである」という考え方は、インターネットの普及を予言していたかのようである。進化という側面から見た時に、あくまでも人間単体の進化はどうなっていくのかを考えるより、シフトをチェンジさせることで、関係性としての進化を提示して見せたところがおもしろい。科学的な読み物ではあるのだが、これからの未来に対して、明るさを感じさせてくれるという意味では、楽しい小説のようでもある。

ホワイトホール・イン・タイム
進化の意味と人間の未来
ピーター・ラッセル
地湧社
2200円+税

光と意識の関係とは? 地球の誕生から現在、未来までを視野に入れ、さらに神秘主義や心理学まで折り込んだ、 『グローバル・ブレイン』の著者が放つ進化論。「今」だけがあるという意味を人類は気づくのか。