『Interview Archive』は、『NewsLetter』『Spiritual Databook』に掲載されたインタビューです。
内容や役職などは1996年当時のものです。予めご理解のうえお楽しみください。

SPECIAL INTERVIEW ARCHIVE #12 1996

パウロ・コエーリョ

小説家

毎日が常に学ぶ機会です。
わざわざサンチャゴに何かをみつけにいかなくてもそれを日々の人生の中で見つけることができるのです。
これは私のすべての本のメインコンセプトとも言えるでしょうし、あなたがたは自分自身のマジカルな部分に目覚める必要があるのです。

あなたの人生には、この瞬間どんな奇蹟が起こっているだろうか?
「アルケミスト」= 錬金術師 という童話のような不思議な物語が、世界中で300万部というベストセラーになっている。(1996年当時)
まるで人々が、このような物語を待ち望んでいたかのように。
どの瞬間にも奇蹟は起こる、とあなたは信じられるだろうか?

B (ブッククラブ回) ─ 『アルケミスト』 は童話のようなファンタジーのような形式をとっていますが、どういうきっかけでそういう形をとろうとなさったのですか?

『アルケミスト』では何かを教えようとはしていません。ただ人々の体験を変えたかったのです。論理を使うかわりに寓話を使うと人々の心の内に秘められた女性的なエネルギーに触れることができます。私は『アルケミスト』をまず自分が自分を理解するためと同時に、他人と、この古典的であまり知られていない錬金術のビジョンを分かちあうために書きました。あなたは、子どものように、また青年のようにこの本が読めるし、古代の錬金術の教えのように読むこともできます。なぜならば、私は錬金術の古典的なシンボロジーを使っているからです。この本は物語としてだけではなく、錬金術についての本でもあります。文章には隠れた意味があり、それが私がこの本を書いた最大の理由です。錬金術師がもし私の本を読んだなら、錬金術的な意味で理解するでしょう。

B ─ということは、読む度に違う意味を読みとれるかもしれないですね
次に『星の巡礼』ですが、この本はかなり自伝的な要素が強いと聞いています。

『星の巡礼』は、私がサンチャゴ・デ・コンポステーラでまさに体験したことと、習ったことです。何を習ったかというと、知恵というものは秘密結社の中に隠されているのではなく、一般の人たちの中で分かちあうものだということです。魔術に関して、私は過去にとても混乱する瞬間がありました。そしてサンチャゴの巡礼後に初めて、隠れている知識、知恵や秘密というものはないということに気がつきました。私たちは同じ魔法を分かちあっているのです。『星の巡礼』は私がそれを探そうと試みた経験の話で、その時からエソテリック(秘教的)な世界をたどるのをやめたのです。宇宙の知恵をもっているのは私たち一般の人々であるということに気がつき始めたのです。

B ─
本の中にガイドとして登場する人物は本当に実在した方なのですか?

もちろんです。ここにあることは、すべて現実として起きたことです。誰も信じるとは思えないので、本に書いていない点もあります。たとえば時間を止めるということであり、それに関してはあまりにも強烈な経験で、複雑なため、人に教えることは困難であり、何が行われたかということを詳しく説明することはできません。私自身もガイドの役をやったことがあります。

B ─読者の中には、自分にもあんなガイドが現れてほしいと望む人も多いと思うのですが。

私の妻にはガイドも仲間もありませんでした。けれども彼女は彼女自身のマジカルな旅によって、私よりもっと学んだのではないかと思います。あなたは行く先々で様々な人に出会い、彼らは常にあなたが必要としている何かを教えてくれるのです。あなたは<巡礼>を、会社から自宅の間など、日々の人生の中で行うことができるのです。今回の私の来日の主な理由はこの本の宣伝をすることですが、私はこの旅を聖なる巡礼ととらえ、できるだけ学ぼうとしています。この旅は、慣れないからこそ助けになるのであって、毎日が常に学ぶ機会です。わざわざサンチャゴに何かを見つけにいかなくてもそれを日々の人生の中で見つけることができるのです。これは私のすべての本のメインコンセプトとも言えるでしょうし、あなたがたは自分自身のマジカルな部分に目覚める必要があるのです。

B ─実際にそうだと気がつくのはすごく難しいですね。特別な状況に身を置かなくても、毎日の日々の中で、それができるということをなかなか人は認められません。
たぶんこの本が売れると、物語の舞台サンチャゴを巡るツアーが企画されるのではないかと思います。

実際、オランダとブラジル、スペインでもそういうツアーがオーガナイズされました。しかし、たとえばあなたはこのような本屋を持ち、訪れる人たちに会うということは、それ自体が日々の旅であり、サンチャゴに行くのと同じようなことです。私たちが何か壊す必要があるとしたら、弟子と師という古い関係でしょう。私たちはめぐりめぐって師であり同時に弟子であるのです。人々は私の言葉を誤解するかもしれませんが、それに対してはどうしようもないことです。

B ─パウロさんは<トラディション>という秘密結社に所属されているのですね。

 私は22才から26才のころ魔術的な世界に関して、沢山の過ちをおかしました。私はとても若く、エソテリックなものにとても魅力を感じていたのです。いわゆるヒッピーの時代であり、私はいろいろなことを少しずつ試しました。全てのものは、現実に存在するより、より精神的(サイコロジカル)になりえると教えられていました。それを利用して、女の子を感心させるために自分は特別な人間であるという風にふるまったりもしましたが、ある時期、私は魔術的なとても変わった秘密結社に入りました。しかし、ある日突然ひどい経験をしたのです。たった一日です。それまで私はやりたいようにやっていて、すべてうまくいっていると思えたのですが、誰かがやってきて私にスピリチュアルな世界のある情景を見せたのです。それはとてもとても恐ろしい体験でした。その時、もうスピリチュアルなものに関わらないと決心をし、すべてを捨てたのです。そして1982年に私のガイドとなる彼に出会い<トラディション>を知りました。<トラディション>は、特別なものは何もなく、秘密結社というより仲間といった感じです。隠されていることは何もないのです。彼自身は私の先生であるというとらえかたはしていません。彼はとても一般的な人でレコード会社に勤務しています。彼は森に住むグルのような存在ではなく、国際的な会社で働いています。私とは信頼関係をつくりあげ、経験や信頼を分かちあっています。

B ─やはり神秘主義的なことは体験してみないとわからないというジレンマがあります。
ある所に入ってみて違うと思っても、閉ざされた環境にいるために洗脳されてしまうこともあります。
精神世界というのはネガティブな面とポジティブな面があって、パウロさんにはネガティブな体験があったからこそ、今のパウロさんがあるのだと感じました。ニューエイジ的なポジティブな面だけが全面に出ているのは危ないような気がします。

とても危険です。私の4作目『ヴァルキリーズ』では、私個人のとてもネガティブな部分を強調しています。自分の結婚や疑いなどについてです。私たちは自分のネガティブな部分から学ぶ必要があります。そうでないと、人は自分を責め、いつまでたっても道を歩もうとせず、準備ができていないと思うだけです。もしくは自分より他人の方が知識があると思うだけです。これは私のガイドがサンチャゴへの巡礼中に教えてくれたことです。彼はタバコも吸うし薬も飲む、私たちと同じ普通の人なんです。私はカスタネダのマスター、ドン・ファン的な人を想像していたのですが。通常人々は一番良い道は聖人になろうとすることだと思いがちですが、われわれは、ある意味でなんでもするからこそ聖人であるともいえるのではないでしょうか。

B ─人々の中には神秘主義的な方に逃げたい人と、現実の中で普通に生活していて、でも何か新しいものを探そうとしている人がいます。
例えば会社経営者などの社会的地位にある人が、非常に神秘主義的な考え方をしているのに、普段は見せないという場合も多いですね。

スピリチュアリティに関して見せびらかす傾向にある人がいますが、それはまちがっていると思います。リーダー的な立場の人は、逆にスピリチュアリティを表現することを恥ずかしく思うはずです。しかし、ますます多くの人たちが、スピリチュアルな道に関する責任を感じ受け入れ始めているのではないでしょうか。スピリチュアルな道は個人的な道です。医者の友だちが話してくれたことですが、彼はある手術の後、病院の外へ出て行き、泣き始めたのです。自分の仕事にアガペーを感じたからです。愛よりも強い愛です。田舎で出会う人たちであろうが、誰でもがそういったものを持っているのです。それは、受けとり、贈り、育てることができます。

B ─アガペーの意味はすごく複雑で難しいと思うのですが。普通、愛というとすごくやさしい感じがしますけど、もっと異質な感じですよね。
すごく興味深いと思ったのは、パウロさんは作品の中で、アガペーの愛が非常に強烈で焼尽くすというような表現をされていました。ニューエイジでも無条件の愛のような表現はあるのですが、すごく強烈な火のようなものであるという言われかたが印象深かったです。

エロスは他の人と結ばれた時に最初に感じる愛であり、とても光り輝くものです。フィロスはやさしい愛で、生け花や禅の庭などを愛する時のような哲学的な見方ができます。そしてアガペーは、愛よりも先の愛です。それは理論的な感覚や理由を超えています。本当の敵をゆるす愛です。マルティン・ルーサー・キングがいつか言ったように、「敵を好きにはなれない、なぜなら彼はあなたの敵であるから、しかし、あなたは彼を愛すことができる。それは、人を好きになるということを超えているから。」アガペーは最大の愛であり、表現することも感じることもむずかしいのです。アガペーを感じると、それはとても不思議な経験で、通常は涙が出てきます。うれし涙でもなく、ただ涙が出てきて理由もないのです。

B ─まだ未翻訳の本がどんな展開になっていくのか教えていただけますか?

3冊目は『ブリーダ』という題名で、私が出会った魔女の話です。4作目は『ヴァルキリーズ』で、自分のガーディアンエンジェルと話し、関係を築くために妻といっしょに砂漠に出かけ、40日間滞在した話。私たちには信じられない出来事が起こり、ヴァルキリーズの女性の集団やその他の人々に出会いました。5作目『ピエドラ川のほとりで私は泣いた』はロマンス的なものですが、根底では神の女性的な面を語っています。これは、私が初めて女性として書いた、今までとは違う作品です。女性が女性を語る本なのです。この本を書き終えた時、私はかなりナーバスになりました。なぜなら、自分の妻がこの本を読み、あなたの女性性は最悪であると言ってくることが心配だったからです。しかし彼女は私を責めることなく、何も問題はありませんでした。これは基本的に愛の物語であり、スピリチュアリティそのものは扱っていませんが、まわりにスピリチュアリティを漂わせています。彼等は旅に出ますが今回は短い旅です。この愛の関係は、他の宗教と同様にわれわれを神の近くにもっていくことができるのです。6冊目はいくつかの新聞で発表したコラムを集めたもので、伝説やお話、個人的な出来事など、ただ私が書きたいことを書いたものです。そして、『アルケミスト』が映画として1998年位に出来る予定です。これもクロード・ルルーシュ監督が良い映画にしてくれることを確信しています。私は『アルケミスト』の主人公のように、何も知らず予感に従うだけです。本を計画するという風にはしません。通常は予定を決めないで、現在に生きようとしています。何かを吸収するにはそのようにするしかないと思うからです。不思議なのですが、私は本を書いた時に初めて自分が学んだことを自覚するのであって、それ以前ではないのです。

B ─『アルケミスト』の映画化が楽しみです。ありがとうございました。


パウロ・コエーリョ
1947年 ブラジル、リオ・デ・ジャネイロ生まれ。
法律学校に学ぶが、1970年に退学し世界中を放浪。
帰国後、音楽とジャーナリズムの世界に入る。
1987年、初めての小説『O Diário de um mago』(邦題『星の巡礼』)を発表。
現在ではベストセラー作家として世界中で知られる存在となる。

※インタビューは当時のものです。

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「私たちは皆、未知なるものを追い求める巡礼者だ」。日常に訪れる前兆やシンボルを読みとり、大いなる闘いの道を歩みつづける現役の魔術師、そして光の戦士であるパウロの生き方や考え方には、精神的な道を探究するための貴重な智恵が隠されている。変化を恐れない力強い情熱とともに、言葉を超えた何かが読み手の心と共鳴し、運命を追い求める勇気を与えてくれる一冊。