『Interview Archive』は、過去の『NewsLetter』に掲載されたインタビューです。
今回のインタビューは、2013年に行われたものです。
予めご理解のうえお楽しみください。

Interview Archive #26

競争が生む共働 同じではないことで実現できる調和

宮嶋望 / 共働学舍新得農場代表

北海道十勝平野にある共働学舎新得農場には、心や体に障害をもつ人、社会に生きづらさを抱えている人、酪農や農業を学びたい人、共働学舎の活動に共鳴したボランティアの人など、さまざまな背景を持った73人が共に暮らし、働いている。この農場で営まれる放牧酪農、バイオダイナミック農業、そして世界一のチーズづくりを支えるのは、自然に寄り添い、いのちを生かしていく、古くて新しい科学「メタサイエンス」の仕組みだ。100haほどの敷地に埋められた20トンを超える炭、鉄骨ではなく木造にこだわった建築の秘密。微生物から草木、人、牛、天体まで自然の働きを生かしたその環境づくりから、健やかな社会の未来設計図が浮かび上がってくる。
今回は、新得共働学舎代表の宮嶋望氏にお話をうかがった。


B:共働学舎の構想には「競争社会から協力社会へ」とありますが、競争社会をどんな風に捉えていますか?

 子供が育っていく時、競争心があるから自分の能力を発揮できると思わない? 僕は競争を否定するつもりはまったくないんです。だけどスポーツの世界であれば、審判がいてルール違反は外されるけど、社会には法律という基本的なルールがあっても、心の中のルールはないじゃないですか。だから、ルールを逸脱する人がいても「退場!」とはならないんだよね。そうすると、パワーゲームや力関係になってしまう。相手をつぶしてでもいいから自分が勝ち残ろうとしてしまったら、本当の意味での競争ではなくて、つぶし合いになってくる。生きることに対して本筋で競争するのならいいんです。自然は競争してるんだから。草の一本一本をとっても光や水のとり合い、条件の良い場所を競争してる。最初に一気に伸びることができる陽樹は、成長が早い。でも、そういう一年草は最初は占めるけど一年で枯れる。その後に出てくる多年草は成長は速くないけど、じわっと伸びてきて根っこを残す。そして翌年は一年草が出る前に芽を出してる。最終的に残るのはどっち? ウサギと亀じゃないけれども、ゆっくりな連中だよね。厳しい環境に耐えて少しずつ伸びていくやつが、結局は「極相林」という一番の葉緑素を持つ森を作る。競争社会のもうひとつ奥の存在の充実感みたいなものがあって、そこでは「競争」という言葉は使えないと思う。最終的に人と一緒に納得をし、自分自身が存在して、生きていて意味があったと思える者が人生の勝者じゃないのかな。より人との接点を求め、他の人を生かしてチームワークを組める人のほうが大きな仕事をするじゃないですか。でもその人は、個人との競争で勝ち残ってきた人かっていうと絶対違うよね。生かし合うところまでいくとね、個人プレーからチームプレーになる。その時、なかなか達成できなくても、チームで動いてなんとか解決しようという方向に意識が向いていけば、競った社会プレーになる。競争心というのを否定するのではなくて、その生きようとする勢いを生かしつつ、全体としてバランスが取れた良い森ができるようにするには、ルールが必要なんですよね。「ルールって何?」と言った時に、生きていくために必要な光はまんべんなく全部に当たらないといけないのではなくて、光が最初に当たってパッと伸びるやつと、後から日陰でも伸びてくるやつと、最終的にひっくり返される。そこにエコロジーの妙味がある。この農場のチーズがヨーロッパで受賞できたのも、今年3月に頂いた農林水産大臣賞も、ここの連中が地道な毎日の作業をやっていてくれるからだよね。そこにその光や栄養素を分けてやらなければ、元気出ないじゃないですか。だから賞をもって帰ってきた時、「皆が頑張ったからこれがあるんだよ」ということをきちっと伝えることが重要だと思う。それぞれの役目があるってことが理解されていればいい。皆、やらされてるんじゃなくて、自分で仕事をしてる。効率という面で見るとバラバラなんだけど、その人が持っている能力をどうやって生かしていくかという面で見るとね、無理がなく結果が残せるわけです。そこで無理をさせてしまうと、事故が起こったり、仲違いが起こったり、チームワークが乱れるんです。だから無理させないように、「食事の時にやりたいことを言え」と、「休みたい時に休んでいいんだよ」と通しているから、皆が無理しなくていい。だけど心の中では、自分はここで役立ってると周りの人に思われたい。それが根底にある。何故かというと、ここへ来る前はほとんど存在そのものを認められずに、「何もできない子なんですけど」と連れてこられちゃってるから。「いや、自分のポジションがある」という認識がここで初めてできた。そのポジションは大切にしたいと思うし、取られたくない (笑)。だから一生懸命やるし、そこに競争心があるわけでしよ? だからバランスが取れてるわけですよ。そういう風にして全体が動いている。

B:都会では、そういったバランスを感じられない場面に出会うことが多くあります

 物事の本質をどうやって見ていくか、何をベースに判断してるかということなんです。都会の人たちの生活の判断基準が何かというと、いわゆるそこでの常識であったり、効率、数字に見えるもの、色んな看板に指示が書いてあるじゃないですか。タバコ吸っちゃダメだとかさ。内在的な思いではないもので基準がつくられてるよね。なぜそうなるの? ここには何もないでしょ。だけど周りの人の存在を認識して、できるだけ傷つけないようにという配慮がなんとなくされて、和が保たれてる。でも、それが都会でできるかというと、基本的にやりにくいよね。なぜかと言うと、人間の脳がちゃんと情報処理できずに、正しい決断ができていない。外から指令が来ないと判断できないんです。

B:情報が多すぎるということですか?

 それもあるけれども、情報が多くたって、普通だったら瞬時に処理するじゃないですか。思考して決断というのができてないんです。ルールや処罰というバッシングに従わせること。自分で決断しないで、外からの情報で自分の行動を決めてる。だから都会の中にやたら指示が多いんです。そこから外れてる人間は、責められてもしょうがない、ルールを守らないからダメという怒り方になる。物事の本質が考慮されてるわけではないんです。本来はルールではなくて、お互いを生かして生きることを自ら考えてるはずなんだよね。都会は生理的に指示が多くなってしまう理屈があるんです。

B:「メタサイエンス」で言われている磁場ですか?

 そうです。元東京医科歯科大学の角田忠信博士が情報処理をする脳梁にスイッチ細胞があることを発見した。例えば、音楽は右脳で、言葉は左脳という風に、スイッチ細胞が情報を右脳と左脳のどちらに入れれば良いかを決めていて、それがきちっと情報処理ができれば言葉は左脳に入り、思考ができて右脳の直観と照らし合わせて遜色がなければ決断ができる。ところがその情報がちゃんと整理されてないと、思考が成り立たず決断できない。そして角田博士は、女性の周期的なものや月の影響、そして重力のかかってる鉄のそばだと、脳梁のスイッチ細胞がミスをすることに気がついたわけ。重力のかかってる鉄のそば、要するに鉄骨のビルディングの柱のそばって意味ですよ。もともと地球には磁力線があって、一定の方向に流れてる。その中で情報処理をしているからこそ、人間は安定した情報処理と決断ができていたはずです。ところが、その自然の南北の磁力線は鉄によって乱されているんです。(ここで実験を見せてもらう。鉄パイプの下から上へと持ち上げていくと、方位磁石の針が回転する。)

B:こんなにも影響を受けるとは知りませんでした!

 磁針が、180度変わるわけ。この空間は自然の地場が乱されている、ということ。パイプ椅子だけでもこんな風になるんだよ。あんな何十階、何百階という重力のかかった鉄の柱のそばだと、どれくらい離れたら影響が消えるの? 方位磁石をもって都会の中を歩いてごらん。電車なんか乗ったらおもしろいよ、針がクルクル回るから。

B:もし都会で暮らすとしたら、その影響をなるべく少なくするためにどうしますか?

 炭を埋めることと樹木を植えること。高圧線の鉄塔がありますよね。あの影響はものすごい。でも住居との間に樹木を入れることで、影響を和らげることができる。それと、炭を埋めることによってマイナスの電子を入れて、そこに流れをつくることで磁場が強くなる。要するに、地球の磁場が強くなり、鉄の影響を弱めてくれるんです。

B:埋めないといけないんですか?

 そう、地球に接していないと意味がないです。部屋に炭を置くのは臭いを吸着するとか、マイナスイオンを増やすという意味では良いけども、磁場という地球とのエネルギーの連絡の接点にはならないです。

B:なるほど。家の周りに埋めたらいいですか?

 まあ多少は良いんだけど、少なくとも1個は家の床下に置きたいね。

B:マンションの人はどうすれば良いでしょうか?

 知ってる? テレビのスイッチを入れた瞬間、部屋の反対側の柱のそばに置いた方位磁石の針がバッと振れるんだよ。だって鉄の柱がつながってるんだから。それにテレビの裏側はものすごく磁場が強いから、スイッチを入れた瞬間にバーン!と磁場が動くわけ。

B:そういう自然の磁場ではないところにずっといたら、人間の脳にも影響がありますよね。

 思考できないって。だからキレてしまう。

B:生まれつき都会にいるということは、つまりつながったことがないということでしょうか?

 ない。だから生命というものに対してつながるということがわからないし、そういう母親から生まれた子供は母親とのつながりも希薄なわけ。生命を持つ生命体としてのつながりが、意識の上では希薄なわけでしょ。本来は100%あるはずですよ。子宮から出てくる寸前までは。そのつながりが体験できないで脳ができてしまうわけだから、なかなか難しいよね。だからアウトドアが流行るわけさ。でもね、キャンピングカーで行って鉄のかたまりの中で寝て、携帯持って、ゲームやってって、意味ない! (笑)。「薪を焚いて飯盒で飯を炊いてみろ」と。「自然を本当に見て、感じ、そして共鳴しろよ」と思うよね。

B:共鳴ですね。

 そう、共鳴ですよ。それぞれが違った波動をもってるのは、当たり前。こうやって話している時に、それぞれ違った意識をもっていても、今は集中して会話を成り立たせようとしてるから、その場は調和させるわけです。そうすると、意識が通じてくる。でも、これをできない人がいるんです。それは思考の中に遊びがないから。それぞれが合わせようという意識、遊びがあるからこそ、調和をさせられる。調和をすると、本来の自分だけでいる時とまったく違った波ができる。争いとなると、波長が細かくなり、周波数が上がってしまう。ところがチューニングされた時、必ず波長が長くなり、周波数が落ちる。ということは、穏やかな流れが走るわけ。それが「和」であり、そのことを尊しとした日本の文化があるはずなんだよね。何百年かけてエデンの東に人々が移動してきて、最後は日本。もともとのルーツはひとつだけど、違う道を通って何百年と移動するうちに、神様はいろんな形に変わってしまった。そして、八百万の神様。皆それぞれの神様を持っていればいいじゃないか、だからお互いの神様は尊重しましょう、と。とりあえずここから先は大海原でないんだから、仲良くやろうぜと言って、大和の国ですよ。大きな和の国。だから、この五千年の中で一番最初に多民族国家をつくったのは大和だ、というのが僕の考え方なんです。それぞれの個性を認めつつ、調和をする術を持ったのが日本人だった。そうでない社会はどうなるかというと、同じ波長のものだけが凝り固まって、違った波長の相手をぶっつぶす。それが西洋の歴史。そうでない民族も沢山いたはず、例えば縄文、マヤ、インカ、ケルトの前のダーナ。ところがそれは、鉄と家畜の文明が来たところで壊れてしまった。病気になって消えてしまうんです。なぜか?
それは鉄が来たことによって、免疫力が落ち、家畜から運ばれてきた流行病で死に絶えた、ということをジャレド・ダイアモンドは『銃・病原菌・鉄』で書いたんです。鉄を持ってなかった連中は、もともとすごく進んでいたから、鉄が持つ性格を知っていて、意図的に使わなかったかもしれない。もしくは、使う必要がないぐらい豊かな暮らしをしていたかもしれない。そこへ鉄を持っていなければ生き抜けなかった人たちがいる。じゃあ、なんで同じ人間なのに鉄を担えたのか? そこにあるのは、乳製品。乳の中には、ラクトフェリンという、鉄の吸収をコントロールする物質やいろんな免疫物質が入ってる。ヨーロッパ人というのは、日本人の10倍以上のチーズを食べているんです。それも、無殺菌牛乳でつくったチーズを食べてる。だからこそ鉄文化を担えたというわけ。

B:鉄文化はグローバリズムの土台となりますが、最近では自然と調和したローカルな生き方を選ぶ人も増えてきました。

 グローバリズムが100%抑えきった、ということは絶対ない。ローカリズムがグローバリズムを追いやったということも、まだない。せめぎ合いをしている。でも、どちらが重要視されているかというと、今、意識転換の時期だと感じるわけです。去年の暮れからね。今までは、グローバリズムに従っていれば安全だって思えていたのに、そう思わない人が多くなった。マヤの暦では去年の12月21日か22日で暦が変わると言ってたわけじゃないですか。何も起こらなかったと言う人たちがいるけど、違う違う。情報の選ばれ方が変わったんですよ。

B:マヤ暦をメタサイエンス的に言うならばなんと言われますか?

 天体のひとつのリズム。人間の意識がどうのこうの関係ない。天体の変化が来ることを言ってただけ。きちっと自然のリズムに合わせて生活することで、自給自足ができる。それぞれが自立して、それぞれの地域で生活できるわけです。そのためには、陰暦でないと自然のリズムに合わせられない。それをグレゴリオ暦に変えて意図的に外した。それが普及したのは16世紀の大航海時代。なぜグレゴリオ暦はこんなに世界中に広がったのか? ヨーロッパの国々は植民地を支配したかった。ということは、自給自足体制を壊さないと植民地にならない。だから暦を変えて、自然のリズムから人の意識をひっぺがす。そのために使われたのが機械仕掛けの時計なんです。では、なぜグレゴリオ暦は1年が12月なの? 「満月が12回あるから」で良い説明になるけど、地球も太陽の周りをまわってるから、満月が12回くるためには、月は地球の周りを13回まわらなきゃいけない。生き物は、太陽と月のどちらの影響に支配されてるのかというと、両方の影響があります。だけど、生き物の基本形は女性ですよね。女性はどちらに影響されてますか?

B:月ですね。

 月ですよね。28日×13ヶ月= 364日だと1日足らない。だからマヤは、暦のない日を1日つくって7月26日にお祭りをした。そうすると1ヶ月は28日、1週間は7日、1日が月曜日だから、計算もしやすいでしょ。少しずつずれてはいくけど、その方が理にかなってる。それが陰暦なんです。そういう目で見ていくと、13という数と20という数のサイクルがあり、一番大きいのが「グレートバクツゥーン」と呼ばれる5125年の周期。その度に大きな周期の重なりがきて、ひとつの文明が立ちあがり、滅びると言われてる。去年の暮れまで鉄とカの文化だったわけです。でも力で支配されるということに対して、我々、辟易してるじゃないですか。違うでしょと。個をもっと大切にしようと皆思ってるよね。経済システムという道具を使って、力で個を抹消し、自分たちだけが生き残ろうとしてた人たちに、今、一人ひとりの個人が気づきだしちゃったわけですよ。それはなぜかというと、FacebookやTwitterで有象無象コントロールされてない情報が飛び交っていて、若者たちの意識はマスコミ主体の情報からそっちに移っちゃった。情報そのもの、要するに価値観がばらけちゃったわけです。それこそ個同士が情報を交換しだして、つながってきてる。

B:樹、人、宇宙、すべてのお話に一環したつながりを感じます。

 物理学者の楢崎皐月がおこした「相似象学」という学問があって、次元が違ってもひとつの法則が貫いている、とフラクタル幾何学と同じことを言っています。フラクタルというのは、相似形の小さなものが重なっていくことで、同じ法則が表現されるということ。樹形も地形も全部フラクタルで表すことができます。もともと遺伝子の中に内蔵されていた法則があって、それが1個が2個、2個が4個、4個が8個と数が増えていき、その情報が外に出てくるわけです。全一体として表現された時、白樺は白樺になり、人間は人間になる。その法則を見抜ければ、まだ芽が出ていなくても、この環境で育ったらどうなるかという推測ができる。僕は大学時代に植物間の競争をいかに数式で表すかという植物生態学を卒論でやってたから、そういう考え方は当時からあった。すべてのものに法則があると気がついた時、イエスも仏陀も「真理はひとつだ」と言っていたと思ったわけです。コンピューターのソフトみたいに、ある決まったルールがすべての場面で働いてるとすると、例えばそれが教育であれ、チーズであれ、話の大筋はそんなに違わないわけです。言葉を置き換えていけば、話の筋が見えてくるし、物事の変化をシミュレーションできる。だから、ずっと以前から、経済を中心にしたパワーゲームはもう終わり、今はまだ見えないところにある次の力、調和の力が芽生えようとしてることを感じてた。スポットを当ててみたら次々に証拠が見えてきて、それを『いのちが教えるメタサイエンス』に書いた。まだ全体は表せていないと思うけど、こうやってお話できるということは、ある程度機能して失敗はしなかったってこと。いのちあるものの法則に乗ったシステムというのが、完璧でないにしろ、ここにあるということなんです。それがもっと広がっていけば、意識変化ができるよね? 土地と融合して生きていく生活スタイルができた時、パワーゲームに支配されなくていいんです。そのためにはエネルギーを自立しなきゃいけない。でもエネルギーを自立するための技術的な道具というのは、もうほとんど揃ってますよ。日本の民間の技術というのを駆使すれば原発がなくても当然いけます。だって今、原発はいくつ動いているかといったら、無理して2基動かしてるだけ。そんなのなくたって大丈夫なんですよ。その分、国民は節電するでしょ?

 「エコ」って、もともとは調和の響きなんです。それを聴きとり従うという感覚をもつのであれば「エコ」。ところが欲がついて「エゴ」になるとお互いにつぶし合うんです。その「我」の点々をとるには、メンタルな成熟が必要なのです。僕は、グローバリズムを否定しない。こうやって今まで皆が生きてきたんだから。その経済性のルールに則りながら、心の豊かな実質的な生活に穏やかに移行していきたいわけです。そのためには経済システムの遊びを広げることで、力ではなく質というものに経済価値を付与する。いのちのリズムと共鳴できる食べ物、いのちのリズムを生かしてくれる建物、そういう生活そのものが共鳴をする場をつくってくれるもの、そちらに価値があるんだという経済価値へ移行することで経済という道具を使いながら、もっと豊かな生活ができて経済に依存しなくていいわけです。エコノミーをエコロジーにエコさせることができれば移行できるんです。環境論者のレスター・ブラウンは、「エコロジーとエコノミーとが共鳴し合わなければ、幸せな生命の生活の場はない」と言っていて、そうやって共鳴させられれば、経済がひとつのルールとして、いのちを生かす方向にいくはずなんですよ。そういう「いのちの経済」をつくっていきたいわけです。今のお金を放棄する必要はないけど、お金がお金を生むという仕組みは機能しなくなる。実質経済だけになるとすると、競争の原理や経済的に豊かになりましょう、みたいなモチベーションがあがらない。だから経済が衰退するという風に考えちゃうわけ。だけど今、それどころじゃないでしょう? そのシステムをつくらなければ、地球そのものがいのちを育めない状況になりますよ、それでもいいんですか?と。

 我々を生み出してくれたこの地球というプラネットが、ガイアとして生き続けて欲しいと思うのであれば、その上に生活する一人ひとりが、その母体である地球のリズムにきちっとチューニングしましょうよ。それを言ったのが、1980年代に『自然界の調律』という本を書いたP・S・キャラハン博士。僕はフロリダにあるキャラハンの家に3日間泊まって生命を生かしているエネルギーと生命との接点について聞いた。彼は樹の幹、枝、葉は太陽エネルギーを受け取るアンテナで、植物はエネルギーを吸収する生命活動のシステムを持っているんだ、と説明してくれた。アンテナを樹の幹にあてると、複数の波形が組み合わさった複合波がとれるんです。樹は、太陽光から好みのエネルギーを調合して光合成をしているんです。波長の異なるエネルギーが重なり、うなり現象が起こります。例えば振動数16と14をかけ合わせてチューニングできたとすると、エネルギーは倍の量になる。ところが、打ち消し合うところと倍になるところと出てきて、うなりをつくる。これは周波数が2になるから、必ず波長が長くなって、周波数は落ちるんです。チューニングされ、調和をすると、ゆるやかになる。だから複数の波長の違うものを合わせて非常に穏やかなエネルギーをつくることで、生き物が生きていくエネルギーをつくる。その振動数に共鳴することが、生き物が生きるのにプラスになるわけです。それは地球自身が持っているシューマン共振と呼ばれる振動数で人の脳波と一致しています。だから、我々のエコロジーの土台である地球の振動というのが、生き物が生きる本能的なシグナルなわけですよ。

 例えば、百何十人というオーケストラですべての楽器の波長は違う。ところがコンダクター(指揮者)は音を出してないけど、シグナルは出してる。そしてチューニングしてる。沢山の違った波長が、チューニングして和を作った時に、波長が長くなる。波長が50サイクル以下になってきた時、これは聞こえません。でもチューニングしてできた総合波は、地球のシューマン共振に乗ってくる。すると、耳で聞こえていなくても、脳はキャッチする。そこで感銘が生まれる。その波長を聞き分けてチューニングを促すのが、コンダクター。だから、コンダクターによって、同じ演奏者でも上手くいく時と、いかない時があるんです。同様に、生きていくという時のコンダクトが必要なんです。それは皆の意識がそこに集まらないとできない。一人の演奏者が乱すだけでチューニングできないんです。それを今までは「お前はいらない」と排除してた。ところが排除することによって、だんだん数が少なくなっていくと、局部的なものしかない。すると、あるひとつの価値観のものだけが集まっても、全体としては大きな波長をつくれないんですよ。

B:なるほど。多様性が大きな波長を生むということですね。

 だから、僕らが共働学舎を始めた時というのは、学生運動が終わった頃で「共同」と書く共同体が沢山できたんです。これは同じ考え方、同じ能力を集めたから、ほとんど崩壊したじゃないですか。でも「共働」と共に働くといった共働学舎は、違いを受け入れるということを大前提にしているから、生きのびたんです。だからこそ、ここは時間がゆっくり流れているように感じるわけです。「とにかく皆で仲良くやろうぜ」ということは、お互いに遊びを生かしてチューニングしようと受け入れる。受け入れるためには気が長くなきゃいけない。聖書に書いてあるじゃないですか、愛とはなんぞや、忍耐だって (笑)。だから忍者、忍の字なんですよ。

B:では、宮嶋さんの子供たちに対する愛というのは「忍」なんですね ()

 忍の字です(笑)。「好きなことをやっていいぞ」とずっと言い続けてるってことは、忍耐ですよ。うまくいかないのがわかってても、やってみろと言うんです。自分で体験して、判断して、失敗して、それを自分の失敗からこうなったんだと理解した時に、次のステージに進めるわけです。人から言われた通りにやって成功して、技術は身についていくかもしれない。でも心の鍛錬や成長につながっていかない。人間は技術だけで生きていける? そう思ってる人は沢山いるけど、それは経済の世界だけの話で、心を合わせなかったら、どんなに技術を持ってたって、活きない。だから心が合えば、いろんなゆっくりな連中でも仕事していけますよ。そうしたら世界的な品質のチーズをつくれたじゃない、というのがうちの実証なわけです。だからここでは、一番ゆっくりやる人たちに合わせた。機械を入れず、コンピューターを使わず手作業しかできないというスピードに合わせたわけさ。牛たちも同じで、一頭あたりの乳量を追わない。リラックスしてるから、僕らが行ってもバタバタ騒がない。そういう健康な牛から搾れるミルクというのが、その分の味を持ってるはずだから、それを傷めないように、ポンプを使わないでチーズをつくった。でも、衛生管理はしなきゃダメということから立て直していったら、品質が世界一になった。経済性優先ではなくて、品質というのを優先させたら、後から経済がついてくる。そこに価値観の転換が潜んでいる。チューニングという現象を理解できた時に初めて次の社会がボンと開けるんですよ。

B:今後どんな取り組みや発信をしていきたいですか?

 このメタサイエンスをきっちりと説明できるようにしていきたい、まだまだ不十分だからね。そしてエネルギーの自立をしたい。そうすることで、他に依存しなくていいわけです。人が本当に自立した気持ちで他に影響されないでものを言える。そういうモデルとなる空間をつくっておきたいなと思いますよね。本当に美味しいものは人に感銘を与えます。そして、なぜこういう美味しいものができるのかと関心をもって来るわけです。「いのちをもったものの法則」というのをこの農場で少しでも感じてもらえれば、それを帰ったところで実現してくれるわけでしょ。そうするとそれが広がっていくじゃないですか。だからこれを我々のもんだって囲わないで、オープンにしてどんどん教えていきたいね。

 B:どうもありがとうございました。


宮嶋望(みやじま のぞむ)

1951年東京育ち。自由学園最高学部卒。アメリカ・ウィスコンシン州立大学で酷農学などを学ぶ。1978年北海道上川郡新得町に共働学舎新得農場を設立、代表を務める。NPO法人「共働学舎」副理事長、 NPO法人「チーズプロフェッショナル協会」副会長、NPO法人「新月の木国際協「会」副理事長。2013年農林水産大臣賞「マイスター部門」を受賞。新得農場のナチュラルチーズは、1998年「第1回オールジャパンナチュラルチーズコンテスト」でラクレットが金賞・グランプリ、2004年「第3回山のチーズオリンピック」(スイス)で「さくら」が金賞・グランプリ、2012年農林水産大臣賞「マイスター」受賞、2018年黄綬褒章受賞、ほか国内外で数多くの賞を受賞している。

 下記、公式サイトからチーズなどを購入できる。
共働学舎新得農場: http://www.kyodogakusha.org/index.html
共働学舎公式サイト: http://www.kyodogakusya.or.jp/

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