vol.750

2021年10月満月のたより

資本主義に代わるもの

Photo by karolina grabowska on Pexels

資本主義に代わるもの

精神世界に「未来は変わる」という言葉がありますが、
未来のすべては誰にもわからないものなのかもしれません。

それでも未来を考えてしまうのが人間というもの。

今月の満月のメルマガは、
気になる社会やお金の未来について考えてみました。

過去の歴史に未来を見出そうとした人。
全く新たな理想の社会モデルを試みた人。
お金の不思議を探求した人。
この世界を動かしている正体に迫ろうとした人。
そして、何にも影響されずに自らの力で生きることを選んだ人。

誰にも未来のすべてがわからないのであれば、
色々な考え方に触れるのは良い事かもしれません。
中心に自分の考え方を持ちながら


どちらがいいのだろう―
賢い社会に愚かに生まれるのと、狂った社会に賢く生まれるのと?

– オールダス・ハクスレー –
『島』より

ITEM

Art/文学・詩(その他国)

【used】島
オールダス・ハクスレー / 人文書院 / 9130円(税込)

新しい生き方を模索する人たちにとって、ハクスレーの著書は宝庫である。東洋の小島パラに漂着した英国人ウィルが、島の人々の暮らしの知恵やすぐれた道徳を見聞するなかで真如に目覚めていくユートピア物語。東洋思想、西洋思想、科学、心理学、社会学など、様々なものの良い部分を取り出し調和させたような島の文化は、ハクスレーがこの物語によって実現可能な理想社会を試みた事をうかがわせる。『すばらしい新世界』に並ぶ傑作。

Thought/思想ノンジャンル

<帝国>
グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性
アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート / 以文社 / 6160円(税込)

2000年代に話題になったアントニオ・ネグリの『<帝国>』は難解と言われたが、今読んだ方が理解できる事が多いかもしれない。この世界の流れを作っているのは、国家や謎の秘密結社など特定の人物ではなく、影の正体は「概念」だとネグリは見抜き「帝国」と名付けた。帝国のストーリーは長い人類の歴史と共にあり、今や帝国は世界を単一の管理下に置こうとしている。歴代の権力というものは帝国の一手段に過ぎず、今や国家にも主権は無いと言う。国や大企業や富豪などに向けられる、相手を誤った革命や社会運動の力を、帝国は取り込んで逆に自らの安定の力に変えてしまう。帝国はあらゆるものを飲み込んでいる。実は我々自身が無意識に、世界を動かす影の正体になっている可能性があるのだ。ネグリは帝国の脅威は、人間が愛や創造性などの人間性を失ってしまう事だと感じた。単一の管理を目指す帝国への対抗策は、「特異性の多様性(多数性)」と言っている。一人ひとりのオリジナリティに人間存在の未来が懸かっている様にも聞こえる。

Society/歴史

歴史の大局を見渡す
人類の遺産の創造とその記録
ウィル・デュラント、アリエル・デュラント / パンローリング / 1320円(税込)

「現在は過去の集積に他ならない」。たった160頁ほどの13章のエッセイで、古今東西の人類の壮大な過去の体験を概観できる良書。「自由と平等は、一方が栄えると一方が滅びる」「民主主義が行くところまで行くと、次は独裁主義が受け入れられる」等々の歴史のパターンからは、未来を見出すヒントが得られるかもしれない。「真の革命とは理性を磨き品性を高めることである。真の解放とは一人一人がそれを達成することである」。デュラント夫妻の社会を読み解く視点は前述のアントニオ・ネグリとは違っているが、読者へのメッセージは似ているように思う。

Society/政治・経済

【used】マネーを生みだす怪物
連邦準備制度という壮大な詐欺システム
エドワード・グリフィン / 草思社 / 26770円(税込)

銀行は無からお金を生み出せるという話を聞いた事があるだろう。しかし、その理由や仕組みを知っている人はあまり多くないかもしれない。お金の価値が減っていくのは決してあたりまえの事ではない。本書はこの話の説明では抜きん出た一冊。一部、眉唾物な箇所も見受けられるが、この本が書かれた1994年の時点で「国家のお金を浪費させるために、戦争はもうできないので、次はウイルスか、環境問題か、宇宙人の存在の可能性を匂わせる」という内容の予測を紹介している。

Society/政治・経済

財政赤字の神話
MMTと国民のための経済の誕生
ステファニー・ケルトン / 早川書房 / 2640円(税込)

借金はどんどん増やしても良い。子供だったら親に叱られてしまう考えだが、今、国家財政論では主流になりつつある理論だ。本書によれば、自国通貨建の借金であれば、国の赤字は民間の黒字になると言う。そして今のところは、この理論は通っている。だが、もし国家が破綻しなくても、お金の価値は希薄していく事になる。金本位制の廃止、マイナス金利、「あたりまえ」が次々に変わっていくのもお金の世界の不思議である。

Science/仮想通貨・アルトコイン

ビットコイン・スタンダード
お金が変わると世界が変わる
S・アモウズ / ミネルヴァ書房 / 4400円(税込)

古代、貝殻が貨幣に使われていた時代がある。しかし漁業の進歩で貝殻が簡単に獲れるようになると貝貨は価値を失った。現代のお金も中央銀行や国が簡単に増やせるようになってから価値は下がり続けている。有史以来、希少性を失った貨幣は必ず他の貨幣に取って代わられると言う。貨幣の長い歴史を眺めると、ビットコインに価値がついてしまう理由の理解が深まるかもしれない。

Art/文学・詩(その他国)

肩をすくめるアトラス 第一部 矛盾律
アイン・ランド / アトランティス / 1980円(税込)

愚かな社会を抜け出した人たちの物語。本書は聖書の次に米国人に影響を与えたとも言われる、米国資本主義思想の母であるアイン・ランドの代表作。果たして今の米国や世界はランドが望んだ形へ進んでいるのだろうか。愚かな社会は巧妙である。その時に人はどう行動すべきかを考えさせられる作品。全3巻。

Life/ナチュラルライフ

完全版 自給自足の本
ジョン・シーモア / 文化出版局 / 3190円(税込)

最後にご紹介するのは、社会の経済や情報と距離を置き、何にも影響されずに静かに生きるという選択。本書は、完全自給自足生活の必読書と言ってよい一冊。住居の建て方や農業などの衣食住を整える内容はもちろん、各種道具の作り方、羊の毛の刈り方から、風力発電設備の建設方法まで、豊かな自給自足生活を送るためのノウハウが驚くほど広く網羅されている。

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