vol.0732

2021年1月満月のたより

生きる力を呼び覚ます

Photo by Jaanus Jagomägi on Unsplash

子どもたちの世界は、
いつも生き生きとして新鮮で美しく、
驚きと感激にみちあふれています。

残念なことに、
わたしたちの多くは大人になるまえに
澄みきった洞察力や、美しいもの、
畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、
あるときはまったく失ってしまいます。

もしもわたしが、
すべての子どもの成長を見守る
善良な妖精に話しかける力をもっている
としたら、世界中の子どもに、
生涯消えることのない
「センス・オブ・ワンダー =神秘さや不思議さに目を見はる感性」 を
授けてほしいとたのむでしょう。

この感性は、
やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、
わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、
つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、

かわらぬ解毒剤になるのです。

– レイチェル・カーソン –
『センス・オブ・ワンダー』より


– 生きる力を呼び覚ます –


新しい年が始まりました。

けれど、なんだか落ち着かない戸惑いの日々を過ごしている方も多いかもしれません。

今月の満月は、
“生きる力を呼び覚ます”
というテーマで本を集めてみました。

自然の神秘の中に
星々や神話の中に
アニミズムの世界に
わたしたちの内側やからだに
たくさんの可能性や力が眠っています。

これから春に向かって
新しい可能性を開くためにも
冬の間に
自分の中に根づく生命の種に
栄養を与えてみませんか。

ITEM

センス・オブ・ワンダー
レイチェル・カーソン / 新潮社 / 1540円(税込)

早くから環境問題に取り組み、現代文明に警鐘を鳴らしてきた著者が、すべての人が生まれながらに持つ「センス・オブ・ワンダー」、つまり「神秘さや不思議さに目を見はる感性」を、いつまでも失わないでほしいという願いを込めた本書。嵐の夜の海の荒々しい興奮、夏の森の散歩で出会う岩やシダ…。生きることの喜びを思い出させてくれる。

星野道夫の神話
未来を照らすそのスピリチュアリティ
濁川孝志 / コスモス・ライブラリー / 1540円(税込)

先行きの見えない現代こそ人々が共通して理解できる神話的視点が必要だと語っていた星野の言葉を受け継いだ本書は、星野道夫のスピリチュアリティを、万物の繋がり、自然との調和、古い知恵の継承、輪廻、年長者への敬意、目に見えない存在の価値という6つの要素から読み取り、これからの私たちがもう一つの時間に思いを馳せて生きるための新たな価値観を与えてくれる。

モノも石も死者も生きている世界の民から人類学者が教わったこと
奥野克巳 / 亜紀書房 / 1870円(税込)

アニミズムは「原初の人間の心性」として過去のものとされてきた。しかし、そこには、人間の精神を豊かにするヒントが隠されているのではないか。文学、哲学の大胆な解釈とフィールド経験を縦横に織り合わせて、「人間的なるもの」の外へと通じるアニミズムの沃野を探検する。

すべてはひとつの命
安らぎと自由への新しい道
やすだひでお / 地湧社 / 1650円(税込)

哲学や宗教では内なる問いに答えが出ず、癒されることのない渇望感に突き動かされて、世界を彷徨い続けた哲学者。行き着いたニューヨークで、探し求めていた真理「ひとつの命」が自身の心の内にあることに気づく。自由と安らぎを見出すまでの思索の旅を対話形式でやさしく語る。

いのちを呼びさますもの
ひとのこころとからだ
稲葉俊郎 / アノニマ・スタジオ / 1760円(税込)

病いを敵とし、身体を戦場として戦うのではなく、常に変化する調和と不調和のバランスを取りながら生きる。それを著者は「全体性を取り戻す」と表現し、西洋、東洋などの枠組みを越えた医師として活動を行う。全体性を取り戻すための医療の可能性を、芸術や心の働きに見出す考察。生きていることの不思議を知るあたらしい人間賛歌。

マイナスもプラスに生きる
心の健康は身体も健康に導く
東城百合子 / あなたと健康社 / 1210円(税込)

自然食や自然療法を通して、命の尊さを説き続ける著者が、自身の半生を振り返りながら、自然から学ぶ心を綴る。死を覚悟するほどの肺結核の治癒や、離婚や災難を通して、マイナス(逆縁)をプラス(良縁)に変えていく力強さや、命の巡りや尊さに開かれていく様が語られる。

からだ=魂のドラマ
「生きる力」がめざめるために
林竹二、竹内敏晴 / 藤原書店 / 2420円(税込)

演出家竹内敏晴が、子どもたちを強く魅了した哲学者の授業の本質に迫り、人間の「生きる力」を取り戻すために何が必要かを考える。ソクラテスの言う「魂」とほとんど同じである「からだ」とは…?

いのちは即興だ
近藤等則 / 地湧社 / 1870円(税込)

「死ぬ時をイメージしたら、笑いながら死ねる音楽の道に進んだ方がいいと思った」。トランペッターである著者の志望動機である。社会的なワクよりも、自分のいのちに突き動かされて、世界中の大自然の中で即興演奏し、地球との共振・共鳴感覚を体験してきた著者。自分なりのスタイルをみつけたいとき、手にとりたい一冊。

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