vol.0734

2021年2月満月のたより

未来を守る知識

Photo by Gabriel McCallin on Unsplash

ここに「三・五%」という数字がある。
なんの数字かわかるだろうか。
ハーヴァード大学の政治学者エリカ・チェノウェスらの研究によると、
「三・五%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、
社会が大きく変わるというのである。

– 斎藤幸平 –
「人新世の『資本論』」より


– 未来を守る知識 –

世界を席巻したパンデミックを前に、「私たちはかけがえのない一つの地球の上で暮らし、大地や大気を通じても繋がっている。」という当たり前のような事実に改めて気づくこととなりました。

そしてもう一つの地球規模の問題、気候変動は今後数年間が地球の未来を左右する正念場といわれており、日本も今現在、大変重要な局面を迎えています。 (※1 詳しくは下記「ATO4NEN あと4年未来を守れるのは今」を御覧ください。とてもわかりやすくまとめられています。)

大規模な自然災害や異常気象に危機感を持ちつつも、よくわからないまま漠然とした不安を持っている人も多いのではないでしょうか?
切迫した「気候危機」について知ることに恐れを感じるかもしれません。
しかし知識をより多くの人が持つことが、地球の未来を守ることに繋がります。

国際条約「パリ協定」では当初、世界の平均気温の上昇を、産業革命前の時と比べて2℃未満に抑える目標をたてました。しかし、それでは危険だということがわかり、できれば1.5℃未満に抑えることを目標にしています。
(既に1.0℃上昇しており、0.5℃未満に抑えることが目標)一方、世界の第一線の科学者たちは、「各国がそれぞれに掲げた目標では、2030年から2052年の間に、1.5℃の上昇を超える可能性が高い。」と警告し、2030年までに温暖化効果ガスの排出量を半分にすることが必要だと指摘しています。
(※2、※3 国連IPCCの2018年「IPCC1.5℃特別報告書」から)

1.5℃でも、深刻な被害が出る可能性がありますが、2℃と1.5℃では大きな違いが出てくることも、この報告書では明らかにされました。
例えば、北極の氷が全て溶けるリスクは、2℃では10年に1回に対し、1.5℃では100年に1回に抑えられます。2℃では、99%のサンゴ礁が消滅すると予想されますが、1.5℃だと70%~90%に抑えられます。災害に備える時間や、サンゴ礁を復活させられる可能性が大きく変わってくるのです。 (その他の比較は※2の中の表「1.5℃と2℃で比較した影響及びリスク」で参照可。)

世界中で様々な人々が、この問題について考え、行動を起こしています。緊急性を帯びた「気候危機」に際し、世界は変化を見せてきていますが、安全に暮らせる地球を残すためには、スピードをさらに速める必要があります。

何が起こっているのか?
どうしたらよいのか?
世界の人々はどう向き合っているのか?
日本や国際社会は急ピッチでどの方向に進めばよいのか?

こういった知識を得て、社会に大きな影響力を持つ人々に声を届けること。それは、私たちの手の中に未来を取り戻すことに繋がります。

今回は本に限定せず、気候危機について役立つ情報も併せてご紹介することにしました。気候変動が現象化するには、タイムラグがあり、実感が湧きにくいこともありますが、今は、全ての人が団結する瀬戸際の時。大きく舵をきって進んでいきましょう。

※1 「ATO4NEN あと4年未来を守れるのは今」はこちらから

※2 グリーンピースによる日本語版:「今が最後のチャンスIPCC特別報告書『1.5℃の地球温暖化』の主な論点」はこちらから

※3「IPCC1.5℃特別報告書」英語原文はこちらから

Emerald Practices

「Emerald Practices」は、LA在住の女優TAOと、モデルで気候正義アクティビストの小野りりあんがホストをつとめるポッドキャスト。環境の専門家のゲストらと、難しくなりがちな環境問題をわかりやすく伝えてくれる。人間の暮らしも動植物の暮らしも、地球の未来も守るための音の教科書。1.5倍速、2倍速再生もできるので気軽に聴けておすすめ。

※ポッドキャストとは、いつでも聴けるラジオ番組のようなもの。
下記のリンク先から無料で聴ける。

詳しくはこちら

パワーシフトキャンペーン

未来をつくる“でんき”のえらび方
パワーシフトとは、持続可能な社会に向けて、電力や権力(パワー)の在り方を変えていくこと。2016年から電力小売が全面的に自由化され、一般家庭でも電力会社が選べるようになった。電力会社を変えることは、個人でできる効果的なアクション。パワーシフトを広めるためのこのサイト内「電力会社紹介」では、再生可能エネルギーを中心とした電力会社を日本地図から探すことができる。

詳しくはこちらから

ITEM

Weの市民革命
佐久間裕美子 / 朝日出版社 / 1650円(税込)

トランプ政権の発足後、ミレニアル世代は、購買、不買の意思表示とSNSの力を通じ、社会運動を繰り広げた。企業も政治や社会的スタンスを明確にするようになったという。パンデミック、ブラック・ライブズ・マター、大統領選の最中に起こるアメリカ社会のシフト、新たなサービス、サスティナビリティ。アメリカで沸きあがる新たなムーブメント、そのリアルな希望をNY在住の著者がレポート。よりよい社会を望む人へのエンパワーメントの書。

地球が燃えている
気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言
ナオミ・クライン / 大月書店 / 2860円(税込)

クラインは、著作『これがすべてを変える』が「『沈黙の春』以来の重要な環境本」と評されたジャーナリスト。本書は、クラインが発表してきたルポルタージュ、論考、講演などを時系列にまとめたアンソロジーだ。気候対策を妨げる様々な障壁。温暖化対策として自然システムをいじる地球工学のリスク。気候変動と経済的不平等に関して提唱されたグリーン・ニューディールなどを鋭い考察とともに明らかにする。

人新世の「資本論」
斎藤幸平 / 集英社 / 1122円(税込)

「人新世」とは、人類の経済活動や核実験、プラスチック廃棄物などが与える影響が地球を破壊する時代=環境の危機的時代を指す言葉。著者は、無制限に経済成長を追求する資本主義システムそのものを今すぐ止めなければ、気候変動は止まらないという。では、それに代わる社会システムとは? 気鋭の哲学者で経済思想史研究者が、未来社会への道筋を描き出す。

プラスチック・フリー生活
今すぐできる小さな革命
シャンタル・プラモンドン、ジェイ・シンハ / NHK出版 / 2200円(税込)

実は日本のプラスチックリサイクル率は、燃焼処理分もリサイクルに含まれ、こうした見せかけのリサイクル率をアピールする業界の傾向は、欧米でも見られてきたという。製造、廃棄過程のみならず、使用中にも体に害を及ぼすプラスチック。そこから滲み出す化学物質の作用とは? その危険性の徹底解説から、代替品を使った暮らし方までを網羅した“プラスチック・フリーへの実践”ガイド。

ゼロ・ウェイスト・ホーム
ごみを出さないシンプルな暮らし
ベア・ジョンソン / アノニマ・スタジオ / 1870円(税込)

著者はカリフォルニア在住のフランス人女性。「台所と買い物」「仕事部屋」など生活のシーンごとに、リフューズ(断る)、リデュース(減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(資源化)、ロット(堆肥化)の5ステップをもとにモノを持たない暮らしを紹介。

Bee Eco Wrap S/Mサイズ
2310円(税込)

繰り返し使えて地球に優しいオーガニックフードラップ。オーガニック認証を受けた生地に、持続可能な方法で採集した蜜蝋とコールドプレス製法のホホバ油、そして木の樹脂をブレンドした液を染み込ませ手づくりされています。蜜蝋とホホバ油の抗菌・殺菌作用により、食品を長持ちする効果も。使い捨ての商品が溢れる時代。落ち着いて呼吸をし、心を込めて身の回りにあるものに触れることを思い出してみては?

LFCコンポストセット
4268円(税込)

生ごみを減らし、美味しい野菜づくりのための堆肥(土)が作れるコンポスト。形は、水や虫の侵入を防ぐ特注ファスナーが付いたバッグ型。生ごみの分解を速め、悪臭の発生を抑える独自の配合基材(生ごみと混ぜる原料)や、LINEでアンバサダーに相談できるサービスなど、初心者にも続けやすい工夫が施されています。別売りのLFC基材を購入することで継続利用も可能。堆肥ができたらベランダ菜園を始めてみませんか

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