vol.0738

2021年4月満月のたより

いま古典にできること

「昔の人は、百歳をこえても衰えはなかった」

二千年以上も前に誕生した『黄帝内経』は、こういった書き出しで始まります。

医学知識のなかった大昔、古人はどう病気と対応し、
自然界のいろいろの現象に出合った時、どう理解したのでしょうか。

『黄帝内経』は独特の味わい深い言葉で、その対処法を語っています。

– 張恵悌 編訳 –
『まんが 黄帝内経-中国古代の養生奇書』より


– いま古典にできること –

流行よりも、時がたっても良さの変わらないものが見直されているようです。

本にも長い時を超えて愛されてきたものがあります。

今月の満月のメルマガは、ブッククラブ回に置いてある数百年、
数千年を超えて読み継がれてきた書物や古い言い伝えを集めてみました。

日々起こる新しい出来事に心はついつい向いてしまいますが、

少し立ち止まって変わらないものを見つめてみると、

世界は何も変わらずいつでも素晴らしいまま、そこにあるものなのかもしれません。

ITEM

神の詩 バガヴァッド・ギーター
田中嫺玉 訳 / TAO LAB BOOKS / 2200円(税込)

神々の間の戦いを描いたインドの古典である『バガヴァッド・ギーター』。物語の形を取っているが、ヒンズー教の世界観や神々の考え方を伝えてくれる貴重な聖典であり、宇宙の真理に触れる内容は今もなお世界中の人々を惹きつける。芭蕉、一茶、世阿弥などが作り上げた世界観が、日本人の魂に根付いている思想だとすると、『バガヴァッド・ギーター』こそはインド人の魂の根元であると言えるだろう。

セブン・アローズⅠ 聖なる輪の教え
ヘェメヨースツ・ストーム / 地湧社 / 2420円(税込)

インディアンの長老が子供達に語り聞かせたのは、小さな鼠が聖なる力を捜し求める物語。叡知と神話力に満ちた比類なく美しい本。平原インディアンの人々が幾世代にもわたって巻き込まれていった白人との戦いを背景に、ネイティブ・アメリカンのスピリッツを教えるたくさんの物語がちりばめられた、死と再生の叙事詩。

新編 スッタニパータ
ブッダの〈智恵の言葉〉
今枝由郎 訳/ トランスビュー / 1320円(税込)

仏教経典の最初期に成立し、ブッダの肉声にもっとも近いと言われる原始仏教の書『スッタニパータ』。その言葉は研ぎ澄まされているが柔らかく、箴言のようでいてタオのような心地よさもある。ブッダの覚醒は人々が思うよりももっと素朴なものだったのかもしれない。

知の教科書 カバラー
ピンカス・ギラー / 講談社 / 1925円(税込)

二千年以上にわたって連綿と続くユダヤ教神秘主義=カバラー。宇宙の運行、国と社会、男女の関係、心理とカラダなど、全ての関係性に通じる。フリーメイソン、薔薇十字団など多様な形態を通してヨーロッパ精神史に多大の影響を与え、西洋神秘思想の源流とも言われる。カバラーの奥義に基づいた運命解読の秘法「数秘術」がよく知られる。本書は謎に満ちたカバラーをわかりやすく解説した入門書。

歎異抄
金子大栄 校注 / 岩波書店 / 462円(税込)

浄土真宗の宗祖である親鸞の弟子に継がれ大事にされた教え。現代でも宗派を超えて愛され、手元に置いておく最後の一冊にあげる人も多い。親鸞は「他力本願」「悪人こそが救われる」と説いた。人間と真実相と真の自由を追求し、あるがままに、思うままに生きようと「自己」を解き放ったのだろう。その思想は奥深く、多くの人を思索にふけさせる。

自省録
マルクス・アウレーリウス / 岩波書店 / 924円(税込)

約二千年前のローマ皇帝アウレーリウスが、孤独な時間に自らを省み、行動のひとつひとつを点検しながら、深い瞑想の中で、人生の教訓を自らに向けて書き残したメモの数々。内面は哲人であった皇帝の、激しい人間性への追求に満ちた書。皇帝の見せる人の弱さとの葛藤は、時代を超えて無数の人達に勇気を与えてきただろう。時の権力者にも愛読者は多く、南アフリカ初の黒人大統領ネルソン・マンデラも獄中でくり返し熟読したという。ストア派特有の生真面目な思想を持つ皇帝は、日々何を想っていたのだろうか。

まんが 黄帝内経-中国古代の養生奇書
張恵悌 編訳 / アプライ / 1540円(税込)

二千年ほど前に書かれた現存する中国最古の医学書。気功、鍼灸、漢方、風水、易、按摩など東洋医学の源流であり、基本の書。伝説上の皇帝である黄帝が、「先人は百歳を超えても衰えなかったのに、なぜ今の人は五十歳くらいで衰えてしまうのか?」と、師である岐白に尋ねる問答集。季節や朝晩などの自然の動きや、陰陽などの宇宙の理と調和することで心身を整える「養生」の仕組みを平易に説く。本書は漫画によってそのエッセンスを伝える入門書。

カレワラ物語
フィンランドの国民叙事詩
キルスティ・マキネン / 春風社 / 1980円(税込)

フィンランド人の心の拠り所となっている民族叙事詩『カレワラ』は、カレリア地方に古くから伝わる口承詩を、19世紀初頭にエリアス・ロンロートが採集・編纂した文学作品である。その後に起こる、フィンランドのロシア帝国からの独立に大きな影響を与えた。吟遊詩人や神霊治療者が歌いついできた創世記、英雄物語、祭りの儀礼歌、牧畜や戦いや癒しのための呪文などの物語から、本書では20話を抜粋。魔法と冒険、笑いとファンタジーの世界を楽しめる。

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