vol.803

2023年12月 満月のたより

いま、再び見つける和のこころ

photo by Photo by Victor Lu on Unsplash 

2023年12月 満月のたより

いま、再び見つける和のこころ

今年も残すところあとわずか。
もうすぐ新しい年を迎えるこの時期は、古くからの行事やしきたりに触れる季節でもあります。
「遠きを知りて近きを知らず。」という言葉があるように、
自分の国の文化を実はあまり知らずにいたり、文化的特性も当たり前すぎて気づいていないということは、日本に限らずよくあることかもしれません。
けれど、深い精神性を持つ日本の伝統文化をよく知らないのは、もったいないことでもあるでしょう。

足元の大地の特徴をよく理解して耕すと植物がよく育つように、日本の文化を再発見することは、新しい年に大きな実りとなってかえってくる。そんなことをイメージして、今年最後のメールマガジンの本を選んでみました。新たな土地へ旅した際は、そこで出会う人々との会話も弾み、たとえ同じ景色を見ても、自分のこころの眼で様々な景色を味わうことができる。

そんな日本の精神文化の魅力を、いま改めて。


花をさがしに、いくたびも山野へ足をはこぶうちに、きれいに咲いた花にもまして、虫に喰われ、風雨に傷つき、息も絶え絶えに枯れきったものなど、生死をおのずと思わせる花々につよくひかれるようになりました。こころの眼がひらかれる思いでした。花をいけるよろこびをほんとうに知ったのは、そのとき以来のことかもしれません。道端で眼にした、なんでもない一本の草が、いけることで、ときには崇高でさえある姿を見せてくれるのですから、楽しくないはずがありません。

-川瀬敏郎- 『川瀬敏郎 一日一花』より


書籍

[Art / 芸術]

新訳 茶の本

岡倉天心 著、大久保喬樹 訳 / KADOKAWA

748円(税込)

戦争に勝利したことで、その戦闘力をもって世界に先進国と認められた日本。そんな時代に日本の伝統文化の持つ精神性こそが真の特性。それを世界に伝えたいと、原文は英語で書かれたのがこの『茶の本』だ。日本の精神文化が凝縮された「茶」を主軸に、その背景にある道教や禅の思想や伝説、静寂と純粋さを生み出す茶室、優れた芸術作品と鑑賞者とは? 人と自然の関係性などが、詩情豊かに語られる。巧みな英文の書き手としても名高い天心の文章と思想を紐解く解説ノートと東洋文明の流れを辿った『東洋の理想』(抄訳)も収録。


[Art /芸術]

川瀬敏郎 一日一花

川瀬敏郎 / 新潮社

3850円(税込)

花人が1日にひとつずつ植物を活けた366日の写真と言葉。枝葉や草花の背景にあるなにかをすくいとるように、人為を最小限に抑えた活けられた姿は、日本の美意識の結晶のようだ。花はもちろん、野山や道で目にする虫喰いの葉や枯れた笹の葉までもがこの本の中では、はっとする存在感でそこに在る。どのページを開いても美しく味わい深い稀有な1冊。贈り物にもおすすめ。


[Art / 芸術]

心理学者の茶道発見

岡本浩一 / 淡交社

1320円(税込)

静かな茶室で点てられる一服のお茶には、知るほどに味わい深い茶の湯の精神性と美意識の宇宙が広がる。手前の所作がもたらす心理的効果や、亭主と客人の間で無言のうちに交わされる豊かな心のコミュニケーション。茶人でもある心理学者の斬新な目線で語られる茶の湯に息づく「癒し」の智慧。


[Wisdom / 禅]

【used】ほっとする禅語70

石飛博光 著、渡會正純 監修 / 二玄社

880円(税込)

70の禅語が、書家、石飛博光の手による墨書とわかりやすい解説によってやさしく心に響く。茶室にかけられた掛け軸は、文字の筆致を見て感じるものともいわれる。意味を理解し、目で味わい、心に残る座右の銘を探して見るのも面白い。
※古書のため、入荷毎に価格変動がございます。
※傷、シミ、折れなどある場合がありますのでご了承ください。


[Art / 芸術]

「凛とした人」になる和の教養手帖
お茶」を学ぶ人だけが知っている

竹田理絵 / 実務教育出版

1760円(税込)

海外の人々に茶道体験を提供し、国外でも茶道の手前を披露する著者が、和の文化や歴史、その魅力を8つの切り口、「人・心・茶・禅・食・器・衣・住」からわかりやすくコンパクトに紹介する。茶道の精神を日々に活かし人間関係や生活を豊かにするためのポイントや茶道の流派や教室選びのコツも伝授。「侘び寂び」の概念や、お茶会に呼ばれた時など、日本文化を紹介する際や改めて触れる機会に役立つ一冊。


[Life / ライフスタイル・生活・住まい]

【used】お坊さんが教えるこころが整う掃除の本

松本圭介 / ディスカヴァー・トゥエンティワン

1100円(税込)

よく掃除が行き届ききれいに整えられた空間では、自然と背筋が伸び、深呼吸がしたくなる。禅宗をはじめとする日本の仏教では、こころを磨く行いとして掃除をとても大切にしてきた歴史がある。普段知ることのない、僧侶の日常生活の様子やイラストを交えつつ、お寺で行われる掃除のやり方や心構え、禅の作法などを紹介。スラスラ読めて掃除がしたくなる読後感。折に触れてページをめくり、暮らしとこころに爽やかな風を吹かせてみては?
※古書のため、入荷毎に価格変動がございます。
※傷、シミ、折れなどある場合がありますのでご了承ください。


[Society / 民族・文化(日本)]

【used】写真で辿る折口信夫の古代 

芳賀日出男 / KADOKAWA

3600円(税込)

全生涯を通じて「古代」を探求した民俗学者、折口信夫。彼が指す「古代」は、奈良時代以前の人々の信仰や生活様式が現代に伝えられる「超時代的精神」であり、ここに「日本人の心の原型」を見いだそうとした。秋の収穫祭の夜に、笠と蓑に身を包んだ神の姿の若者。古代の姿を彷彿とさせる沖縄の巫女。「年中行事は生活の古典」といった折口が重視した千年以上前から続く祈祷と祓いの信仰行事を、オールカラーの写真と文章で紹介する。
※古書のため、入荷毎に価格変動がございます。
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[Wisdom / 神道]

日本人なら知っておきたい神道

武光誠 / 河出書房新社

968円(税込)

日本人は初詣や人生の節目、旅行先で神社を訪れることが多い。全国には約12万もの神社があり、この国は八百万の神の国とも呼ばれている。しかし、多くの人が「神道はどのような宗教か?」と問われれば答えに詰まることが多い。時代とともに変化する神道の姿と変わらぬ本質。八百万の神の系譜や祀り方。自然崇拝、祖霊信仰、現代人に与えている影響まで。神道の実態を明らかにする。


[Art / 文学・詩(日本)]

野の古典

安田登 / 紀伊國屋書店

1980円(税込)

古典というと格調高く、敷居も高いといった印象を持つ人も多そうだ。しかし生きる時代が違ってもそこは同じ人間、煩悩に苦しみ、愛欲に溺れる姿は今も昔も変わらない。『古事記』『万葉集』から『南総里見八犬伝』『武士道』まで、能楽界の奇才が語る、パワフルで野趣に溢れ、生々しい古典の楽しみ方をあなたに。


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