vol.817

2024年7月 満月のたより

祭りの力

Photo by Kazuo ota on Unsplash

今日は7月の満月です。
今月も皆さまに素敵な出会いをお届けできれば幸いです。

2024年7月 満月のたより

祭りの力

日本では、風土や文化、歴史に根ざした多彩な祭りが古来より受け継がれてきた。日々の恵みに感謝し、豊作や大漁を祈願し、災厄を祓うために、人々は日常の営みを離れて、非日常の時空に集い、酒を酌み交わし、ごちそうを食べ、歌い踊って、神々や先祖をまつる。

祭りで神輿をかつぐときの「わっしょい」というかけ声は、「和を背負(しょ)う」が転じたものと言われるが、祭りは神事や行事を通して、地域共同体の規範やアイデンティティを学ぶ機会でもあり、民俗芸能の継承や非日常体験の共有によって、世代を超えた交流を醸成し、地域の絆を深めるはたらきを持つ。

近年、過疎化や少子高齢化、コロナ禍などの時代の波を受け、存亡の危機にある祭りや途絶えてしまった祭りがある一方で、まちおこしのために新たに誕生し、盛り上がりを見せる祭りも多い。日本神話のなかで、笑い、楽しみ、歌い踊る人々が、天の岩戸を開き、暗闇の世界に光を甦らせたように、かたちを変えながら現代に生きつづける祭り文化は、人々の心をひとつにつなぎ、日常を生きる活力を与え、世界に調和をもたらす力となるはず。
今年の夏は、盆踊り、お囃子、太鼓のリズムにのって、いのちの共鳴に熱狂してみてはいかがだろう。


あらゆる生命は魚の回遊のように宇宙的律動(太陽系の律動の記憶、生命記憶)と呼応する運動(=芸能)をしており、人の芸能もまたそれらと同じように、冬至や夏至の芸能、 インドのラーガのように、宇宙的な律動と感応しながら展開してきた。

歌い、踊ることは、瞑想し、意識変容することである。
瞑想し、意識変容することは、宇宙律動や神の律動と感応するという、生命やあらゆる物質に刻まれた根源的な記憶とフォルスにほかならないのだ……。

– 武田梵声 - 『野生の声音』


書籍

野生の声音
人はなぜ歌い、踊るのか

武田梵声 / 夜間飛行

3520円(税込)

旧石器時代から現代まで古今東西の伝統芸能を壮大なスケールで分析し、「歌うこと/踊ること」の根源的な意味を探求する本。歌唱、発声、舞踊身体論、演劇、瞑想などのメソッドを統合した古代芸能者養成法マレビトシステムを紹介しながら、近代化によって見失われつつある芸能の本質をとり戻し、古代社会の豊かな芸能空間への回帰を目指す。


ニッポンのマツリズム
盆踊り・祭りと出会う旅

大石始 著、ケイコ・K・オオイシ 写真 / アルテスパブリッシング

2200円(税込)

世界中の祝祭空間を飛び回ってきた著者が、「高円寺阿波おどり」と「錦糸町河内音頭大盆踊り」での衝撃の体験をきっかけに、日本列島に鼓動する祭りのダンス・リズム・メロディを訪ね歩いた旅の記録。伝統と革新の融合によってアップデートしつづける現代の祭りの魅力をナビゲートする。


とんまつりJAPAN
日本全国とんまな祭りガイド

みうらじゅん / 集英社

792円(税込)

日本には突拍子もないセンスの祭りがある。いわゆる奇祭と呼ばれている祭りにスポットを当て、みうらじゅんがリポートする。派手な衣装の怪人が笑いを強要する「笑い祭り」、酔っ払い軍団が道端に寝転びゴロゴロする「うじ虫祭り」など、思わず「どーかしてるよ!!」と叫びたくなるとんまな祭りのオンパレード。爆笑、赤面必至!


テキヤの掟
祭りを担った文化、組織、慣習

廣末登 / KADOKAWA

1034円(税込)

祭りや縁日の楽しみといえば、境内や参道に所せましと立ち並ぶ屋台は欠かせない。本書は、テキヤ経験者の社会学者が、祭りや縁日を支えるテキヤ稼業の人々への丹念な聞き取り調査によって、テキヤの知られざる実態や独自の文化、戦後から現在までの縁日史を紐解く。暴走する暴力団排除条例の問題点を指摘しながら、混同されがちなテキヤとヤクザとの違いについても解説する。巻末にはテキヤ社会と裏社会の隠語集を収録。


【 DVD 】
イザイホウ
日本語版・英語字幕版

野村岳也 監督 / 海燕社

各11000円(税込)

「イザイホウ」とは沖縄の久高島に伝わる神事のこと。琉球神話において琉球を創世した女神アマミキヨが降り立った聖地とされる久高島は、昔から神の島として信仰を集めてきた。年間30回にも及ぶ神事が行われるが、なかでも12年に1度午年に行われる最大の祭祀が「イザイホウ」である。30歳から41歳の、島で生まれ、島に生きる女が神となる神事で、4日間の本祭を中心に1ヵ月余の時をかけて行なう。久高島において女たちは、海へと漁に旅立つ男たちを守る神人とされてきたが、担い手不足によって、「イザイホウ」は1978年を最後に中止が続いている。本作は、1966年の「イザイホウ」をモノクロ16ミリフィルムで撮影したドキュメンタリー作品であり、日本古来の祭祀の原形を留めているとされる原始的な歌や踊りを観ることのできる貴重な記録映像である。


文化で地域をデザインする
社会の課題と文化をつなぐ現場から

松本茂章 他 / 学芸出版社

2750円(税込)

全国各地に受け継がれる伝統文化を活かしたまちづくりの現場を紹介する本。地域芸能が他の地域に転じて根を下ろした「よさこいソーラン」「阿波踊り」「サンバ」の事例など、文化芸術の振興によって社会の課題解決に取り組む人々の姿から、地域活性化の新たな可能性が浮かび上がってくる。観光振興、産業振興、多文化共生・国際交流、まちづくり、教育、福祉・医療の各分野で地域の未来を拓く原石が見つかるはず。


ブッククラブ回夏祭り情報

7/27(土)に「駄雑貨屋 トム・ソーヤー工房のハッピー夏祭り」を開催します。自分の内なるハッピーの神と遊び、楽しむ一日。皆さまのお越しをお待ちしております。

駄雑貨屋 トム・ソーヤ工房さんの記事

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