出雲と神さま
旧暦10月(新暦では10月下旬~12月上旬)は、
全国の神々が出雲の国に集い、話し合いをするといわれています。
この時期のことを、
多くの地域では神さまが留守になるということで神無月といいますが、
出雲では神在月と呼ぶのだそうです。
これにちなみ、
今回の満月のたよりでは、出雲の暮らしや神さまに関する本をご紹介します。
天高く、風も澄み渡るこの季節、
縁結びの神といわれ、因幡の白兎を助けた心優しい神さまの御座す出雲の地に、
思いを巡らせてみてはいかがでしょうか?
ブッククラブ回では今年11月30日まで、
「神在月のフェア 神の集う出雲の秋」 を開催し、
出雲から届いた珍しい品々をご紹介しています。
よろしければこちらのページも併せてご覧ください。
十一月も下旬といえば、もう日本海の波は荒い。
夕刻、浜にしつらえられた斎場には、
神職一同が威儀を正して、神々の到来を待ち受けている。
かがり火が焚かれ、浜に据えられた白木の机の上の神離を、照らし出している。
しばしときあって、海の彼方から神々を満載した船が近づいてくるさまを、
波間に幻視した最高位の神主は、
声ろうろうと、「神々をいまお迎え申す」、と祝詞を奏上する。
人々の目には、八百万の神々の姿は見えない。
しかし、いままさに神々が浜に上陸して、
こちらに向かって進んでくるさまを、人々は「想像の眼」で見ることができた。
それは見えない神々の一団の先頭に立って、
先導役をつとめる竜蛇様の姿を、はっきりと「見る」ことができるからである。
- 中沢新一 - 『アースダイバー 神社編』
書籍
[Body / ハーブ・薬草]
出雲の薬草と暮らす
須田ひとみ / 出雲ハーブプロジェクト
2200円(税込)
『出雲國風土記』に掲載される植物を中心に、温かい目線で丁寧につづられたコラムや薬草を使ったレシピ、自然療法、染めなどを紹介する。自然とともにあった古の日本の豊かな暮らしは、遠い誰かのものではなく、私たちの日常の中にもしっくりと馴染み、私たちを楽しませたり癒してくれたりするのだと感じさせてくれる。
[Art / マンガ]
水木しげるの古代出雲
水木しげる / KADOKAWA
792円(税込)
妖怪漫画で知られ、自身も多くの神秘体験を持つ作者が、夢枕に立った古代人の青年に導かれながら描く古代出雲。スサノオノミコト、オオクニヌシノミコトと出雲との関わりや、天孫降臨につらなる天津神(あまつかみ)と、国津神(くにつかみ)との関係性などが、独特のユーモアと人間臭さに溢れた筆致で描かれる。オオクニヌシノミコトがどのような存在だったのか、古代世界に関する著者の考察も興味深い。
[Society / 神話]
悲嘆とケアの神話論
須佐之男と大国主
鎌田東二 / 春秋社
2420円(税込)
神話を読んでいると、なぜこの神はこのような行動をとるのかと、測り難い気持ちになることがよくある。だがそれを神話詩の形で表現することで、なぜ須佐之男が泣き叫び、乱暴狼藉を尽くしたのか、また、大国主が様々な苦難の末に築き上げた国を譲ったのかが、身近に迫ってくる。繰り返し殺されながら、女神の力添えでよみがえった、癒しとケアの神としての大国主の存在は、危急存亡の瀬戸際ともいえる現代においてこそ、受け継ぐべき必要があるように思われる。
[Society / 民族・文化(日本)]
中沢新一 / 講談社
2420円(税込)
神社として時代を超えて守られてきた日本の聖地を「縄文系/海民系」に分け、その深層部に息づく精霊と神々の世界から日本人のルーツを探っていくシリーズ最新作。海や陸を渡って日本列島に辿りついた旧石器人、縄文人、弥生人(=倭人)の足跡を豊かなイマジネーションで考察し、時空を超えた旅へと連れ出してくれる。
[Society / 神話]
西田長男、三橋健 / 平河出版社
2136円(税込)
日本人の心の底に流れている霊性の源流「神道」「神」というものを、母子神信仰・神社縁起・神と仏の関係など様々な角度から浮き彫りにする。神道学者と一般意識の落差が激しいこのジャンルで、広い視野から語られた本。
[Wisdom / 神道]
教養としての神道
生きのびる神々
島薗進 / 東洋経済新報社
1980円(税込)
かつては世界中で存在していた、多神教的な神々の祭祀が消えつつある中、日本では、神道という形をとることでアニミズムや古代の神々の祭祀といった日本固有の信仰のバイタリティが残ったという。神道研究の第一人者によって解き明かされる、神道1300年の歴史。