meeting with remarkable people #10

バックミンスター・フラー

1895 - 1983

アメリカ生まれ。数学者、哲学者、エンジニア、建築家。独自の数学・物理学体系「エネルギー/シナジー幾何学」を構築する。「宇宙船地球号」という概念の提唱者。

「すべての人類は地球にとどまらず、ローカルな宇宙を享受することになるだろう。「どこに住んでいるの?」「月だよ」「宇宙船地球号だよ」といった会話が交わされるようになるだろう。」
『バックミンスター・フラーの宇宙学校』より

発明家にして建築家、数学者にして哲学者。独創的な業績を残した20世紀の偉人、バックミンスター・フラー。 その多才ぶりは、「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と称された。独特のエコロジー的視点からの発想は未来的でスピリチュアル。そんな彼の生涯に迫ってみたい。

1895年、アメリカ、マサチューセッツ州ミルトンに生まれる。商人、牧師、作家など、地位のある親族に囲まれて暮らした。ありきたりな四角形よりも円形や三角形に魅せられる少年だった。この図形へのこだわりが様々な個性的発明へと繋がってゆく。

18歳、ハーバード大学に入学、二度に渡って放校処分となる。自由奔放な思想と行動はこの頃から確立されてゆく。カナダの紡績工場の見習い、肉の梱包業の会社などに勤めた。

1917年、21歳。有名建築家の娘、アン・ヒューレットと結婚。 戦時中のため徴兵を受け海軍に入隊。副官を経て大尉へ。退役後、梱包業の輸送副支配人、運送会社の販売支配人を経験。海に落ちた飛行機を救出するための装置を考案する。その功績が認められ海軍兵学校の特別教育の受講が許された。地球規模のロジスティックスに基づいて思考することを学び、ここでの経験が将来の仕事の要となっていった。

27歳の時、義父の仕事を手伝い、建築関係の会社を設立。同じ年、長女アレクサンドラが病死、精神的打撃を受ける。

4年後、事業は失敗に終わり社長を辞任させられた。人生の中で最も過酷な瞬間を味わい自殺まで考えたという。この孤独な時期は「沈黙の年」と呼ばれた。

1927年、32歳。次女アレグラが誕生したことで、社交的な外交員だった彼が精力的な理論家へと変貌を遂げた。劇的な精神的再生の後「シナジー幾何学」を発見する。

飛行船グラーフ・ツェッペリン号などに衝撃を受け、自身のアイディアを綴った限定本『4ーD(四次元思考)』を執筆。この時期から「最少の材料で最大の効果をあげる」を信念に、「ダイマクション・ハウス」の研究開発に乗り出してゆく。

「ダイマクション」は造語で、彼が頻繁に使用する3つの言葉、「ダイナミック」「マキシマム」「イオン」の組み合わせ。この概念は彼の人生そのものを象徴するものとなった。

1929年、世界大恐慌の年、ニューヨークへ移住。1933年に「ダイマクション・カー」を製作、発表。翌年のシカゴ万博「世紀の進歩」に出品され、話題を集める。この頃から「ダイマクション・ハウス」の試作が繰り返され、1948年には「ジオデシック・ドーム(フラードーム)」を発明。構造、材質、耐久性、生産性、そのすべてにおいて、より優れたものとなった。1953年、「フラードーム」の建設が完成し、発表されると、「天才的な技術者フラー」の名が広く知れ渡った。

富士山頂の気象観測所、南極の米観測基地、モントリオール万国博の米パビリオンなど、フラー発明のドーム型構造物は世界で20万棟を越す。軍用シェルターなどにも採用された。

1958年から、世界各地の大学で講議を行なうようになり多忙な日々へ。「シナジー幾何学」が物理学者や生物学者から注目を集める。南イリノイ大学の教授に就任し様々なワークショップを実施した。晩年は、国境を超えて世界平和と環境保護を訴え続け、世界中の大学がフラーに合計43個の名誉博士号を贈った。1983年、87歳、心不全のためロサンゼルスの病院で死去。

夢見る力を持つ人、フラー。彼はまた、その夢を現実に具現化する適正技術も生み出した。宇宙船地球号が航海に乗り出す時、未来の人類は、彼の指さす方向を見据えようとするだろう。


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