Meeting With Remarkable People #20

ヘルマン・ヘッセ

1877 - 1962

ドイツの詩人・小説家。第一次大戦当時よりスイスに居住。非戦論者の立場を取った。東洋思想に傾倒し、人間精神の幸福を綴り続けた。1946年にノーベル文学賞を受賞。

去ってしまった人たちは、彼らがそれによって私たちに影響を与えた本質的なものをもって、私たち自身が生きている限り、私たちとともに生きつづける。多くの場合、私たちは生きている人とよりも、死者とのほうがずっとよく話をしたり相談したり助言を得たりすることができる。

光に向かうにせよ夜に向かうにせよ、あらゆる運動は死に通じる。魂がその苦しみをおそれる新たな誕生へと通じる。しかしすべての者がこの道を行く。すべての者が死ぬ。すべての者が生まれる。なぜなら永遠の母(大地)はすべての者を永遠に昼(生)に返すからである。

– ヘルマン・ヘッセ -『人は成熟するにつれて若くなる』より

「スピリチュアルな文学」というジャンルがあるとしたら、ヘッセの作品群は、たしかにこれに当てはまる。東洋的、神秘的、アウトサイダー的傾向、あたかも魂の巡礼者であるかのような、その生涯。賢人ヘッセの生涯とはいかなるものだったのか?

1877年、 南ドイツのカルフという小さな町に、宣教師である父と著名なインド学者の娘である母の元、第2子の長男として誕生。音楽的素質に優れ、自ら詩や曲を作り歌った。9歳で手にしたバイオリンは「心の避難所」となった。

14歳の時に、両親の願いに応えてマウルブロン修道院の神学校へ入学。 「詩人になりたい」という衝動に突き動かされ、入学6ヶ月目にして大胆な逃走劇を演じた。一時は神学者の元に預けられたが、恋に破れ今度はピストル自殺を図った。鬱病と診断された彼は、療養施設に4ヶ月滞在。退院後、再び別のギムナージウムに入学したが、志願兵資格取得後に退学してしまう。その後、父の助手として出版協会で働く。塔時計工場を経てヘッケンハウアー書店に勤務。ゲーテやドイツ文学を読み漁り、詩や散文を書き始める。

1899年、22歳の頃初めて自身の作品を出版。ほとんど売れなかったがリルケに賞讃される。ライヒ書店の助手となり販売及び古書部を担当。書店勤務の合間に執筆した自作の出版が相次ぎ、徐々に評判を高めていくこととなる。この頃ヘッセはニーチェにも大きな影響を受けた。

1902年、母の死をきっかけに彼の創作意欲は増し、27歳の彼は自然讃歌である『郷愁』で一躍有名になる。 9歳年上の女性と結婚し湖畔の農家に移り住む。 近代文明の及ばない世間と隔絶した生活を好んだ。長男が誕生した29歳の時、『車輪の下』を出版し大反響を呼ぶ。

しかし、やがて安住への苛立ちが湧き起こり「孤独な放浪者」でない自分の存在に疑問を持ち始めた。1911年、34歳の彼は画家の友人と共にインドへ旅立つ。ペナン、シンガポール、ビルマなどを巡るが酷い暑さ、不潔さ、社会的情勢、人々の卑屈さに辟易し、「西洋世界に回帰すべき」という認識のみで終わる。旅の成果は1922年の『シッダールタ』に現れた。

戦争、父の死、息子の重病と妻の精神病が重なり、彼は深刻な鬱状態に陥り健康状態も悪化、ユング派の博士の元で精神分析の治療を受ける。この経験はヘッセの生涯で重要な転機となった。1919年、匿名で『デミアン』を出版。郊外に一人で移住し、芸術家と交流を持ち再婚を果たす。この頃から、水彩画を描くことに熱中した。1927年『荒野の狼』を50歳の誕生日に出版。 2つの魂の分裂に悩む男はヘッセそのものだった。54歳でヘッセは三度目の結婚を経験する。

『知と愛』『東方への旅』を綴った直後、ナチスが台頭。スイスに移り住んでいた彼に出来たのは作品でそれに応えることだけだった。晩年の超大作『ガラス玉遊戯』はユートピア小説としてカルト的な人気を誇る。1946年69歳、ノーベル文学賞を受賞するが、すでに彼はスイス西部に籠もる療養生活に入っていた。晩年は自然に愛情を傾け静かな日々を送った。1962年85歳でモンタニョ-ラで没する。

ヘッセは常に「良心的なアウトサイダー」であった。社会通念や支配的な世界観にまみれることを断り、しかし同時に時代と社会、自己と他者を目を逸らさずに見つめ続ける誠実さと勇気を持っていた。それは彼の「魂の気高さ」がもたらしたのではないだろうか? 行き先の定かではない道を歩き続ける者にとって彼の作品は、いつでも最良の友となる。


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