Meeting With Remarkable People #24

エリザベス・キューブラー・ロス

1926 - 2004

スイス生まれの医学博士、精神科医。ターミナルケア、サナトロジーの創始者。死と真摯に向き合うことで、クオリティ・オブ・デスという新しい概念をもたらした。

地球に生まれてきて、あたえられた宿題をぜんぶすませたら、もう、からだをぬぎ捨ててもいいのよ。からだはそこから蝶が飛び立つさなぎみたいに、たましいをつつんでいる殻なの。ときがきたら、からだを手ばなしてもいいわ。そしたら、痛さからも、怖さや心配からも自由になるの。
神さまのお家に帰っていく、とてもきれいな蝶のように、自由に……。

– がんの子どもへの手紙から -『人生は廻る輪のように』より

 人は誰でも死ぬ。しかし、その時が近づいてくるまで、多くの人はその事実に向き合おうとしない。『死ぬ瞬間』という世界的ベストセラーを生み出した、エリザベス・キューブラー・ロスは、クオリティ・オブ・デスという新しい概念をもたらした。「死」という出来事にあくまでも真摯に対峙した彼女の人生を追ってみたい。

 1926年、スイスのチューリッヒで誕生。三つ子の末娘であり、誕生時900gしかない未熟児だった。三つ子という特殊な生い立ちは、彼女を幼い頃から、「自分とは何か」という問いに立ち向かわせ、キューブラー・ロスはこの世に生を受けた意味を考え続けることになった。

 1942年、16歳の時、彼女は医療の道へ進みたいと考えた。しかし、父の反対があったことから家を出る。裕福な教授の未亡人の元でメイドとして働きながら進学を志すが、うまくいかず、結果的に家族の元に再び戻り、チューリッヒのカントン病院の皮膚科研究室で働き始める。

 当時のヨーロッパは、第二次世界大戦の真っ最中で、病院には難民があふれていた。研究の仕事より看護を優先させ、病院の食料を難民たちに分け与えたことで彼女は懲罰を受け解雇された。しかし、新しく室長に就任したワイツ博士に、「難民の子どもを世話することが君の仕事だ」と鼓舞される。彼女は終戦後もヨーロッパ各地でボランティア活動を続けた。

 1957年、31歳の時、ようやく念願のチューリッヒ大学医学部を卒業。翌年、結婚してアメリカに渡った。ニューヨークのマンハッタン州立病院、コロラド大学病院を経て39歳の時、シカゴ大学の研究員となる。そして、医療の現場で目にした末期医療の状況に愕然とした彼女は、「死とその過程」に関するセミナーをはじめる。

 1969年、43歳の時、処女作『死ぬ瞬間』を出版。同書は世界的なベストセラーとなる。それまで医学界で孤立無援の状態にあった彼女だが、国際的な評価を得、一躍注目を浴びるようになる。「私の当時の目標は、患者が心の奥深くの悩みを訴えることを禁じる専門家の拒否の姿勢をうち破ることだった」と彼女は語った。

 その後、各地でワークショップやセミナーを開き、本の執筆を続けた彼女は、49歳の時、ヴァージニア州に、「シャンティー・ニラヤ」(やすらぎの終の棲家)という名のセンターを開設しようとするが、そこには多くの困難があった。身内間のトラブル、自然災害、エイズに偏見を持つ住民の反対……。このセンター開設の計画は一時潰えたが、それでも彼女は意志を貫徹し、1990年、64歳の時に、念願の「エリザベス・キューブラー・ロス・センター」を完成させた。当時、彼女の元には、毎月1万5000通もの励ましの手紙が届いたという。

 その後も、過酷な運命は続き、夫マニーの死後まもなく、エイズの本格的支援に乗り出そうとした矢先、自宅が全焼する。施設の活動への反対者による放火が疑われているこの火事で、研究用の2万件におよぶケースヒストリー、論文、少女時代のアルバムなど全てを失った。

 1995年、69歳の時、キューブラー・ロスは脳卒中で倒れる。ひどい発作におそわれ、麻痺が残り、彼女自身が死と向き合うことになった。命は取り留めたものの、左半身不随となり車椅子での生活を送る。自身が医療を受ける立場となり、35年間携わってきた医療について想いを巡らせることになった。

 1997年、71歳の時、初の自伝『人生は廻る輪のように』を出版。以降、20冊以上の本を出版し、それらが25カ国語以上に翻訳され、また多くの功績によって20を越える名誉博士号を受けた。最後には生きることに関する本を書きたいと、2001年にデヴィッド・ケスラーとの共著『ライフ・レッスン』を、そして2005年には同じくケスラーとの共著である『永遠の別れ』が彼女の死後に上梓された。
晩年は、アリゾナで療養をつづけながら、鳥やコヨーテとともに過ごした。

 どのように死ぬか。それはどのように生きるか、ということである。彼女の生き様は、私たちひとりひとりに、何かを問い続けている。


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死とその過程について

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本書は、死期が近い患者との交流を通して、患者たちの死の受容の段階と、いかに彼らと接するべきかを研究した、終末期ケアの先駆者である著者の代表作である。後に「クオリティ・オブ・デス」という発想を中心にした新しい流れを生み出し、死への理解を深める研究への大きな足掛かりとなった。また、一般の社会にも病名や余命の告知、終末期ケアへの真摯な取り組み、ホスピスなどのターミナルケア施設が普及することに、大きく貢献した一冊である。

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