meeting with remarkable people #27

桜沢如一

1893 - 1966

京都生まれ。その土地にある伝統の食物と穀菜食を中心とし、
東洋の易、陰陽の宇宙観から導きだした独自の食養法、「マクロビオティック」を提唱。
現在は世界中にその思想が広まっている。

しかし、ドーしても人間は浅はかなもので、どちらかに片よる。
そこで争いとか、苦しみとか、病気とかが起こる。
しかし、どんなに人間の世の中が乱れたところで、また、どんなに病人がふえたところで、
けっきょくこの世界全体の▽(陰)と△(陽)は合計して見れば変わらないのだし、
それに▽(陰)きわまれば△(陽)が、△(陽)きわまれば▽(陰)ができるのだからキット、
ある程度までゆくとまた元へもどるのさ。
だから、心配はいらない。
ただ、この世をたのしく、しあわせにくらすのには、この陰陽無双原理の世界観を磁石にして、
中庸へ中庸へと方向をとって行けばいいのだ。
これが世界観をもっている人の徳で、無双原理の奥義(おうぎ)だ。

『魔法のメガネ』より

 人間は何をどのように食べるべきなのか? 20世紀初頭、「食」と「人間」を繋ぐ万物の現象を読み解く『魔法のメガネ』をもつ人物がいた。彼の名は桜沢如一(サクラザワ・ユキカズ)。海外では「ジョージ・オーサワ」の名で親しまれている桜沢は、その土地にある伝統の食物と穀菜食を中心とし、東洋の易、陰陽の宇宙観から導きだした独自の食養法、「マクロビオティック」を提唱した。

 1893年、京都生まれ。6歳の頃、父は愛人を作って家出、母親は助産婦として一家の生計を支えたが、如一が11歳の時に結核でこの世を去った。幼少時代は貧困、病気に苦しみながら、寺の小僧、牛乳配達、店員、船員などをして生活をつないだ。

20歳の頃、卓抜した手腕で知られた陸軍薬剤官、石塚左玄の食養法を学び、実践した桜沢は、自らの肺結核や長年の持病を治すことに成功。その後の桜沢の人生の方向性を決める大きな転機となった。

 高校を卒業した桜沢は、各種職を経て貿易商として活動。会社を経営しながら、自身の命を救った石塚左玄の食養法の伝統を受け継ぐ社団法人「食養会」に入会。以後、同会の復興、執筆、指導に専念し、会長となる。この理論は、ナトリウム、カリウムのバランス論、夫婦アルカリ説などの観点で食べ物を認識するという、当時の日本では斬新なものだった。

 桜沢は、このバランスという観点を東洋思想の陰陽の考え方に当てはめた。そして世界に問うべく、1929年にシベリア鉄道経由で渡欧。フランス、パリまで無銭旅行をし、耐乏生活をしながらソルボンヌ大学で学び、東洋文化を紹介した著書『無双原理・易』を出版。日本で、近代的な制度からはみ出す宗教団体や共同体への風当たりが強くなってきたのもこの頃であった。その後も何度も海外に行き来し、見聞を広めた桜沢は、軍事中心にして世界を敵にまわそうとする日本の帝国主義の愚を力説する反戦運動家として活動した。

 帰国後の1937年、44歳の桜沢は、『食物だけで病気の癒る・新食養療法』を発刊し、
たちまち300版以上も増刷を繰り返すほどの注目を浴びた。しかし、世は戦時中。真珠湾攻撃や日本の敗戦を予言したため、反戦平和運動家として軍部に投獄される。
1939年には食養会と袂を分かち、無双原理講究所、真生活協同組合、横浜勤労大学、青年塾のMI塾などを運営し、多くの研究生を海外へ送りだした。この活動が、不老長寿という意味のギリシャ語「マクロビオス」に由来する、現在のマクロビオティック(正食)運動の源流となる。

 国内外に強力な賛同者を得て広くネットワークを築き、アメリカでは後に発生するニューエイジ・ムーブメントやホリスティック医療の下地を作る程の影響力を与えた。1966年、72歳でこの世を去る。死因は心筋梗塞。技術なき原理を嫌い、老齢期においても自らの体を実験台にし、様々な漢方薬や植物を試していたという。52年間、全力で不老長寿、万病根治の秘法を説いたが、死の間際になると、それすらも自然の摂理の前には無効無用であったとも綴っている。

 最初の問いである「何をどのように食べるべきなのか」だが、今でもその正確な答えはなさそうである。住んでいる場所、家系、ライフスタイルなどの様々な要因、そして陰陽をはじめとする種々の思想など、そこにはそれぞれの現実がある。物を食べずには生きられない私たちは、今一度、食べるということを見直す時期に来ている。食を知るには、あらゆる原理に目を向けなければならない。感謝の心で食べ物をいただくことを忘れかけた人間に、桜沢は今でも檄を飛ばしているのかもしれない。


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