Meeting With Remarkable People #33

出口王仁三郎

1871 - 1948

「三千世界の大化け物」と言われ、大本教を形創った人物。
その影響力は大きく、現代日本の新興宗教やスピリチュアリズムは、
彼の系統を受け継いでいるものも多い。

 幕末から明治、大正、昭和初期にかけての日本は、巨大な精神的変換期のサイクルにあった。この頃の日本には、異能の者達が多数輩出された時代でもあった。彼らは見えないものを見聞し、現象をつかさどるあらゆる法則を超越した奇想天外な能力を発揮した。その中でも、現在のスピリチュアリズムに計り知れない影響を残した出口王仁三郎。彼が人々に示した未来のビジョンとは何だったのか?

 幕末から間もない1871年、京都で出生した喜三郎(幼名)は、言霊学の素養をもつ祖母の元で育てられ、青年期にかけて、書生や代用教員、牛乳搾取場を経営するなど、様々な職種についた。

 27才の頃、彼に一大転機が訪れる。地元の侠客との争いにより生死の境をさまよった喜三郎は、一種のトランス状態になり山の岩窟へ導かれた。そこで肉体を離れた意識は、過去から未来への一切を幻視した。この体験は後の著作『霊界物語』の原型となる。霊界からの濃密なアプローチを受け始めた彼は、様々な修業を重ね、日本霊学上の正当な継承者となった。

 その後、神霊の導きにより、大本教開祖の出口なおと運命の出会いを果たし、1900年には、なおの娘の澄子と結婚、出口王仁三郎と改名した。しかし、教団の幹部たちは、王仁三郎に対して異常なまでの反発を示し暗殺未遂事件にまで発展する。その大きな原因は、なおと王仁三郎にそれぞれ憑いている神霊にあった。本人達の意志とは別に、一度神霊同士の戦いが始まると、家中が揺れ始め、雄叫び、熾烈な言霊戦となったという。

 この頃、大きな変換期に入った日本は、熱狂的なオカルトブームとなっていた。後に教団の右腕と呼ばれる浅野和三郎との出会いもこの頃。新聞社を買収しメディアを布教活動に使うなど大きな影響力を日本中に広めたのだが、このブームは王仁三郎自身が求めたものではなかった。世界の立て直しを教義に掲げる教団は、国から数度に渡って大弾圧を受け、壊滅的な打撃を受けた。自分にとってマイナスに思える、こういった出来事さえも、王仁三郎にはある確信をもって見通していた。しかし、あえてそれを避けることはせず、世界を変えるためには、必要不可欠なプロセスであると考えていた。そして、暗い終末観を掲げる教団幹部達とは異なり、世界の立て直しに必要なものは、個々の心のあり方だと説いた。1923年には、中国へ進出し宗教国家建設を目論むが、途中で抵抗にあい挫折。その時、王仁三郎と同行した人物に合気道開祖、植芝盛平がいた。

 帰国後も布教活動を続け、ピーク時には800万人もの賛同者を集めた。天地創造に始まる地上霊界の歴史を記載した『霊界物語』全81巻を書き上げるほかにも、晩年にはその力を芸術活動へ向け「窯変」という不思議な色彩をもつ陶器を作り出したり、50万首もの歌をすらすら詠んだりと、神懸かり的な芸術作品を残した。また、女装や奇妙な出で立ちで、周りの失笑をかったりし、その行動を推し量れるものはいなかった。1948年、数年前から患っていた脳出血の影響で容態が急変。眠るように、この世を去った。

 現代日本の新興宗教やスピリチュアリズムは、彼の系統を受け継いでいるものも多い。それだけの運命的な存在の力を発揮しながら、彼は自分を限定するような枠を一切もたず、怒濤の人生を生き抜いた。ユーモアを忘れず、世界で起こる出来事のプロセスを、限りない愛でもって見据えていた。本当の意味でのスピリチュアリティには、底知れぬ深みがあることを、王仁三郎は誰よりも痛感していたのかもしれない。


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日本にはさまざまな新宗教がある。大正から昭和にかけて誕生したこれらの宗教の多くが、出口王仁三郎に行き着くと言う。王仁三郎についてのエピソードは数多く存在しているが、その膨大な著作や残されている文献を見ても、彼が人並み外れたオリジナルでユニークな存在だったことがわかる。彼が生きていた時代には、その周りに多くの人々が集まった。多大な影響を受けた何人かはその後、自らが教祖となり新宗教を起こしていった。自分で宗教を起こせるだけのパワーを持った人間に対して影響力を与えた王仁三郎の存在感には驚くばかりである。本書は、王仁三郎自身が天界や霊の世界について語っている。

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