Meeting With Remarkable People #38

ムハンマド(マホメット)

570 - 632

イスラム教の創始者。
イスラム教では、モーセ、イエスに続く預言者とみなされている。
ムハンマドが神から受けた啓示は、後にクルアーンとしてまとめられた。

photo by Ali Arif Soydaş on Unsplash


 世界人口78億人の内、イスラム教徒は18億人もの割合を占める(2021年現在)。根っこを同じくするユダヤ教、キリスト教と比較して、イスラム教は現在でもその信者を急速に増やし続けている。世界の緊張状態に関わる大きな要素であるイスラム教の礎は、どのように築かれたのか?

 メッカのハーシム一族に生まれたムハンマドは、誕生前に父を、その数年後には母も亡くし、孤児として伯父に引き取られた。25歳になった彼は有力な商人の未亡人ハディージャに突然結婚を申し込まれて、その妻の元で裕福な商人の道を歩む。

 しかし、40歳頃になると不思議な夢を見るようになった。彼は、当時のキリスト教の風習に習って、定期的に近郊の山で静かな時間を過ごすようになった。

 そして運命の時、いつものように山で過ごしていたら、突然「圧倒的な存在」が手に書物をもって現れ、ムハンマドにそれを読むように命じた。後の回想によると、この時現れたのは、「ジブリール(大天使ガブリエル)」だったという。

 その後も啓示は、断続的に継続。気が狂ったかと思い始めたムハンマドは、妻に相談する。彼女はその一連の現象が啓示であることを確信し、よき理解者として彼を常に支えたのだった。当時のメッカは多神教が中心で、様々な部族がそれぞれの神を祀っていた。しかし、ムハンマドが受けた啓示では神(アッラー)の唯一性を主張し、人類に多神教を捨てるように求めた。その教えを無視する者は、まもなく訪れる終末に恐るべき天罰が下る、と言った。

 ムハンマドの従兄弟や一族が続いて入信し、3年後には公然と布教活動を開始するようにと啓示が降りた。ムハンマドは公に多神教を批判し、唯一神アッラーの前では、人間はすべて等しい存在であることを訴えた。イスラム教の神はユダヤ・キリスト教と同一の神であり、ゆえにムハンマドは、旧約聖書、預言者としてのイエスを認めている。イスラム教の信者の数は増え続け、アラビア半島全域に広まり、メッカの聖域カアバ聖殿の保護者であった歴代の指導者たちは、保身のためムハンマド達への迫害を始めた。

 622年、ムハンマド達はその攻撃から逃れるように、メッカの北方350キロにあるメディナという町に脱出、移住(ヒジュラ)することになった。この大きな移住によって、自立的なイスラム共同体へと転換し、イスラム暦の紀元として定めた。この頃の彼は、宗教家としてだけではなく、政治的手腕を発揮して足場固めをするようになっていた。

 辺境の協力者達を集め、勢力を増したムハンマド達は、ユダヤ教徒やキリスト教徒達とも絶縁。彼らを迫害したメッカ勢と何度となく戦闘を繰り返して、630年に故郷のメッカに戻る。彼自身の手で多神教の数百にも及ぶ偶像を全て破壊し、異教時代の終わりをアピール。それまでの風習、貸借関係、権利、義務を精算することを告げ、全てをアダムの末裔として平等として捉えたのだった。

 征服のわずか2年後の632年、ムハンマドは病に倒れ、程なく没した。キリストやモーゼなどのように神格化され、伝説のベールに包まれることがないのは、一神教の中では後発だったことと、ムハンマド自身神格化されることを拒み、アッラーの前では皆一人の人間として、その教義を実生活でも行っていたからといわれている。

 ナビィー(預言者)、ムハンマドに下された神の言葉は「クルアーン(コーラン)」に納められ、今も多くの人々が唯一の心の拠り所にしている。世界では多くの人々が「絶対なる存在」に日々向き合っている。資本主義経済の中心であるユダヤ・キリスト教社会に対して、拮抗するイスラム教は世界の均衡の鍵を握っている。この先、どのように世界が動くのか、私達は目を離すことができない。


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