Meeting With Remarkable People #42

モーセ

B.C.13世紀頃

イスラエルの預言者。
数々の奇跡を起こし、神と人との契約「十戒」を結んだ。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教では、重要な宗教的指導者として認知されている。

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 世界の50%以上の人々が信仰上の重要な宗教的指導者として認知する人物がいる。それがモーセだ。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、同じ唯一神を祖にする三兄弟だが、その宗教人口を全て合わせると、現時点で人類の半数以上になる。そしてモーセは、神と人間との間で初めて「契約」を交わした、歴史上、極めて重要な位置にいる人物だ。その後、キリストが生まれ、ムハンマドが生まれ、宗教上の三兄弟は血で血を洗う抗争を繰り広げてきたが、いずれの宗教でも、モーセは今も聖人として尊ばれている。

 紀元前13世紀、メソポタミアのカナンの地から離散したイスラエル人達は、エジプトで奴隷として暮らしていた。彼らはピラミッドの建設などに従事していたと言われている。何の望みも無い生活だったが、ある日、アムラムと妻ヨケベトの間にモーセという男の子が誕生する。時のエジプト王が、イスラエル人に男の子が産まれたら、すべてナイル川に投げ込めという勅命を出していたため、二人は赤ん坊を隠し、3ヶ月後、パピルスの籠に入れてナイル川のほとりに置いた。奇遇にもエジプト王の娘がその籠を見つけ、モーセは彼女の養子として育てられることになった。実母ヨケベトは密かに乳母となり、モーセの元で暮らした。

 エジプトの王族としての立場にいながら、モーセは自分がイスラエル人であることを知っていた。同胞の過酷な境遇を痛切に感じていた彼は、イスラエル人に暴力をふるうエジプト人を思いあまって殺してしまう。彼はこの罪から逃れるために、荒野へ旅立たざるをえなかった。やがて遊牧民の娘と結婚したモーセは、羊飼いとして暮らしていたが、ある日シナイ山で奇妙な光景を目撃する。柴のしげみが突如めらめらと燃え上がり、彼に語りかけたのだ。それがモーセと神との出会いだった。

 神はモーセに自分が彼らの神であると告げ、モーセにイスラエルの民を解放し、カナンの地へ連れ戻すという使命を与える。そして奇跡を起こす力を彼に与えた。

 モーセは神を信じ、エジプトに戻って王と交渉した。栄華を誇っていたエジプト王がそんな戯言に耳を貸すはずもなく、また同胞たちも彼の言葉を信じなかった。しかし、イスラエルの神は、エジプトの地に凄まじい天災をいくつも起こし、ついにはモーセの言葉に従うしかない状況を作り出す。半信半疑だったイスラエルの民達も、モーセが起こす数々の奇跡を見て、徐々に彼をリーダーとして認めるようになった。災害に困り果てたエジプト王は、モーセにイスラエルの民たちを連れて、すぐさま出て行けと命じた。こうして、モーセは200万人ともいわれる民を連れ、カナンの地に向かったのだ。しかしエジプト王は心を翻し、イスラエル人を皆殺しにすることを決意、彼らの後を追った。紅海にたどり着いた時、あの有名な「海が真っ二つに分かれる」という奇跡が起こった。イスラエルの民達は歩いて海の底を渡り、エジプト軍の追撃から逃れた。

 そして、ついに歴史的な大転換を迎える。イスラエルの地に向かう途中、再びシナイ山で、モーセは神と人との間の契約、「十戒」を結んだのだ。神は自らが唯一全能の神であると宣言し、イスラエルの民がそのことを認め、自分との契約を守るなら、永遠の魂の救済を約束すると伝えた。そして、イスラエルの民はそうすることを「選択」した。原始的な宗教は自然発生的なアミニズムから生まれる。多神教全盛だった当時において、この「選択」は、前例のない異質さを持っていた。神が人を選び、また人も神を選んだのだ。その後、モーセはカナンの地を目前に使命を果たし、その生涯を終えた。

 以来、現代に至るまで、この神は人類にどれだけの影響を与えてきただろうか。神と人間との間に交わされたこの契約が、最終的にどのような結末を導くのか、私達はまだ知らない。


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旧約聖書 出エジプト記
関根正雄 訳
岩波書店
660円(税込)

モーセが、神と出会い、イスラエルの民を連れて、エジプトからイスラエルの地に向かうまでを描いた壮大なドラマ。モーセと神との対話が興味深い。

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