Meeting With Remarkable People #46

アレイスター・クロウリー

1875 - 1947

英国の魔術師。黙示録の「獣666」を名乗り、麻薬や性の領域で、魔術の研究をする。
登山家にして詩人。東洋通としても知られ、ヨガを魔術に導入した。


 「獣666」を自称した、大魔術師アレイスター・クロウリー。カバラ思想から、東洋のヨガ、性魔術に至るまで、多くの魔術実験を行い、存命中の著作は実に147冊。20紀最大のオカルティスト、クロウリーとは、どんな人物だったのだろうか。

 1875年、イギリスのレミントンで出生。父は裕福なビール醸造業者で、地方の御曹子として育てられる。夫婦はキリスト教福音主義の一派、プリマス・ブレザレンの敬虔な信者で、極度の正統派にもとづく生活を送っていた。遊びを覚えるより早く聖書の言葉を口にする利発な子で、4歳にして創世記を読む事ができるようになっていた。

 1887年、12歳の時、父死去。20歳になると巨額な遺産を相続した。彼は次々に豪華な自作の詩集を出版し、奇抜な服装で街を闊歩、詩人として世に出ようと決心する。また、一種の知的ゲームとしての同性愛に興味を抱く。この頃、もっとも熱中していたのが、登山であった。マッターホルン、アイガー、など次々と挑戦をする。1898年、23歳の時、黄金の夜明け団の大幹部、G・C・ジョーンズに出会う。さっそく入団し、魔術研究に乗り出した彼は、驚くべきスピードで団内の位階を駆け上がっていった。魔術師アラン・ベネットに弟子入り、自宅にて二人で暮らしはじめる。また、組織の独裁状態にあったマグレガー・マサースにも傾倒した。

 1900年、25歳の時、黄金の夜明け団が分裂すると、そのきっかけとなったクロウリーは、追放の目に遭う。メキシコ、サンフランシスコ、ハワイ、横浜、上海、セイロンという世界一周旅行に旅立った。スリランカのの首都コロンボでベネットと再会、ヨガを学ぶ。

 1903年、28歳の時、2年ぶりにネス湖のほとりの家へ戻る。学友の姉で美しい美貌の持ち主ローズ・ケリーと電撃結婚した。1904年、29歳の時、カイロにて妻と共に魔術的祭式をしていると、守護天使アイワスが現れ、『法の書』を授かる。

 1907年、32歳の時、魔術結社「銀の星」創立。1909年、34歳の時、機関誌『春秋分点』を発行。誌上で黄金の夜明け団の儀式を公開して、業界を混乱に陥れる。11月、ローズ・ケリーと離婚した。

 1912年、37歳の時、東方聖堂騎士団(O.T.O.)の首領、テオドール・ロイスと接触。1920年、45歳の時、シシリー島にテレマ僧院を開く。世界各国から入門者が集まる。1923年、48歳の時、ムッソリーニ統治下のイタリア当局より、国外退去命令が下る。この頃、英国大衆紙に悪評攻撃が集まり、「世界最大悪人」というイメージが一般に定着する。1925年、50歳の時、O.T.O.全派の長に指名される。

 1929年、54歳の時、フランス当局から国外退去命令が下る。英国にて、『魔術 理論と実践』を出版。マリア・テレサ・ド・ミラマールと結婚したが、一年とたたずに離婚。この頃から晩年にかけて、スキャンダラスな話題の影響で、彼は社会から完璧に葬り去られた。1938年、63歳の時、画家レディ・フリーダ・ハリスとタロットの制作に取りかかる。6年の歳月をかけてトート・タロットが完成。これは生涯において最も成功した作品となった。1947年、72歳の時、心筋の退化及び慢性気管支炎のため死亡。最後まで残った弟子達によって異教式の葬儀が執り行われたが、これは一大スキャンダルにまで発展した。

 新時代の預言者を自認した彼は、世紀のペテン師という汚名も負っている。しかし、彼が数々の秘教的知識を公開したことによって、オカルティズムの流れが大きく変わったことは事実だ。ある意味では、トリックスターとしての役柄を忠実に演じた人と言えるかもしれない。


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魔法が使えたらどんなにいいだろう、というのは誰でもが一度は持つ夢である。映画や小説でも、ある日突然魔法が使えるようになる話や、魔術的な要素がからんだホラーなど、モチーフとしてよく使われるところを見ると、魔術とは、人間の願望や潜在意識の中に埋め込まれた何かの表現方法なのかもしれない。世界を自分の思い通りに動かすというイメージが強いが、実際には無から何かを生み出すのではなく、今ある関係性を変えることで、物事のバランスを変えてみせるのが魔術なのではないか。白魔術と黒魔術の戦いなども興味深いところである。自らを666の獣と称し、稀代の悪党との評判が高かったアレイスター・クロウリー。文豪サマセット・モームがクロウリーをモデルに「魔術師」という小説を書くほど世間を騒がせていたが、その言動がどんなに破天荒であったとしても、クロウリーの目指すところは、人間が幸福になることであったことが本書に記されている。魔術の実践はどんな人にも開かれた道であり、その実践により人がより力を得て幸福になる、それがクロウリーの目指す道だった

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