エマニュエル・スウェデンボルグ
スウェーデン生まれの神秘思想家。機械工学を修め、実用的な発明なども行うが、晩年、幻視的兆候が始まり、その体験を記した膨大な記録『霊界日記』を残した。
「霊界とこの世は、一枚の金貨の裏表のように切り離しがたく結びついているのではなくて、もともと一枚の金貨の裏表なのだ。」
『エマニュエル・スウェデンボルグの霊界 Ⅰ』より
私たちの目の前にある現実とは違う、もう一つの世界。その異次元を、リアルに体験する人がいる。『霊界日記』という膨大な記録を残した、エマヌエル・スウェデンボルグ。生涯の前半は技術者、晩年は幻視者として過ごした、彼の生涯とはどのようなものだったのか。
1688年、スウェーデンのストックホルムで鉱山を経営していた祖父と宮廷専属牧師だった父の元、スウェデンボルグは9人兄弟の3番目の子として生まれた。子どもの頃から神秘的な傾向を持っていた彼は12才の時、聖職者たちから教えられた内的呼吸法を行なっていたという。また、シャーマニズムや古代宗教的象徴、植物学、人体解剖学など、様々な分野に旺盛な関心を示してゆく。
22才になったスウェデンボルグは、機械工学を志してイギリスへ向かった。時計、家具、楽器、彫刻、レンズなどの職人の家を渡り歩いて下宿生活をくり返しながら技術を修得。科学に出会った彼は、ニュートンの著作を毎週チェックし数学者や科学者たちと、毎夜、議論をかわした。
様々な体験を重ねた後、スウェデンボルグは祖国へ帰る。そして研究の成果となる多くの実用的な発明品を構想。それらの多くは実際に製作、実用化された。航空機の研究、科学雑誌の創刊、鉱山局の臨時監督官、貴族院の議員等々、壮年期に至るまで多忙な時を過ごす。
しかし、スウェデンボルグが55才の時、大きな転機が訪れる。1744年4月6日の真夜中、自分の身体がベッドから落ちる程の震えに襲われ、幻視的徴候が始まった。
その後、昼食時、再度幻視の中に入る。初めて聞いたのは、「食べ過ぎるな」という声だった。このような体験が立て続けに起こった結果、彼は人生において進む方向を大きく変えることを決意。鉱山局も退職し、残りの生涯を神秘思想の研究に費やす事となる。
彼の幻視・透視能力は次第に周知の事実となってゆく。ある時は女王から個人的な秘密の透視依頼を受け見事成功。うわさは海を越えヨーロッパ大陸にも広まった。
彼は霊界の様子を詳細に日記に収めた。その記録は膨大な量にのぼり非常にリアルな解説がなされている。
彼は、霊的な聖書解釈に関する本も多数出版していたが、その透視能力により魔術的な印象もあったらしい。人間を一つの小宇宙、天界を一つの人間と見る視点は当時のキリスト教を逸脱していたため、異端とされたのだ。しかし支持者たちの力添えも強く生涯を大過なく送った。
当時の下宿先の家政婦に自らの死期を伝え、話したとおりの日、1772年3月29日に息をひきとった。
スピリチュアリズムの先駆けとして偉業を残したスウェデンボルグ。彼はまた現実の社会でも才能を発揮する力を持っていた。その彼を霊界に導いた意志はどこから来たのだろう。しかし、彼がその後のヨーロッパ神秘思想に大きな影響を残した事は言うまでもない事実である。
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