SPECIAL INTERVIEW #13

いのちは循環で生かされている

TWIGGY.代表 松浦美穂

ときに人類にとって脅威となる、ウイルス。

ガイア理論が説くように、もし地球がひとりの生命体なら、
地球にとっての脅威は、まさしく環境を破壊しつづける人類だろう。

新型コロナウイルスに世界が揺れる2020年、春分の日。

既存のワクに囚われることなく、しなやかに感性をアップデートしつづける、
ヘアクリエイター松浦美穂さんから激動する現代を、美しく生き抜くための種をもらった。

心の声にしたがって

 松浦さんは、1990年にヘアサロンTWIGGY.を立ち上げた。ヘアスタイルの提案だけでなく、“オーガニック”という言葉さえ浸透していなかった日本で、いち早く持続可能なライフスタイルを美の現場から発信しはじめた。その根底には、髪の美しさは心と体からつくられ、心と体は、水や空気や食べ物を与えてくれる地球の自然環境によってつくられるという循環する美学があった。

 「嘘つかずに、真正直に、違うことは違うと認めながら、YESに対しては『なぜなのか?』と食いつき、その理由は探すようにしていたんです。今、自分が“気持ち良い”というものに対しては素直でいたい。“気持ち良い”が進化することが、いちばん未来じゃないですか? 私たちは波動で生かされているのに、気持ちよくないことを進化させようとしたらきっと事故が起こる。今回の新型コロナウイルスがもたらした現象は、『良くないかもしれない、だけどしょうがない』と、その勘に嘘をついて、野放しにしてきた結果だと思うの。」

 松浦さんがファッションの世界でヘアメイクの経験を積みたいと海外へ飛び立った1988年は、ニューヨークでエイズ、ヨーロッパでチェルノブイリ原発事故の影響を多大に受けていた頃だった。ロンドン移住後には、狂牛病や鶏肉のサルモネラ菌、豚肉からのコレラ菌までの流行に遭遇する。当時ニールズヤードに勤めていた女性との出会いから東洋医学の基盤となる陰陽のしくみ、そして西洋ハーブを学び、妊娠と出産をきっかけに現在につながる健康的な食生活や地球のエコシステムへの意識が広がったという。

 幼少時代、大気汚染が深刻化する北九州で育った松浦さんの中には、美容室を営んでいた母親ゆずりの鋭い感性と、日々の食事から子供のいのちを守ろうとする子を思う母の愛が循環していた。

 「失敗と成功は表裏一体です。守り過ぎると失敗しないから学びがない。守らずに飛び出るから、痛い思いをして二度としないと学ぶんです。自分が見たくないもの、聞きたくないこと、嫌なこと、マイナスの要素こそが学びだと思う。ポジティブであることは肯定するけど、ポジティブであるためにネガティブに蓋をしちゃいけない。私はその蓋を開けて、なぜネガティブになったのか、なぜそこをポジティブに転換したいのか理由を探したい。といつも思っています。

 コロナウイルスがある今、何をすれば良いのかは、他人にいっぱい聞いて識者から知識をもらって、そこから自分のお腹と脳に聞こうよ。3.11以降、皆んな何のために腸活をしてきたの? 答えは自分しか持ってないし、私は自分を鍛えることがポジティブだと思うから、自分を怠けず、愛してあげる。本当の愛は、“自分好き”じゃないんです。楽チンと楽しいの違いは何かってことなんです。楽しまないと楽チンになれないけど、楽チンをEasy goingって認めた時に、Easy goingは怠けた結果だから、その先はきっと苦しくなるの。だから、ここだけは怠けないという自分を見出した時、はじめてその先に楽しい光が見えてくる。

 必ず全部に陰と陽があるから、人は楽しいとか光を見つけられるのであって、陰だけ、陽だけでカテゴライズされて生きている人なんているわけない。だから、どんな苦しいことがあっても、自分でいのちを絶たないようにしなきゃ。いのちは循環で生かされているのに、循環を忘れてる人が多いじゃないですか。自分の魂も、何億年も前からいて、何億年も先まで浄化を求めて循環していく。今はこの体を借りてるだけで、いつかは終わっちゃうんだから、体に感謝して生きなきゃ魂に失礼じゃない。」

それぞれ違ってて良い


 「このお店にカフェをつくったのは、食べることが髪の毛をつくるという循環を知って欲しかったからです。頭皮を切ったら血が出ます。だけど髪の毛は切っても血が出ないですよね。頭皮の中の細胞が活性して、その細胞の血液の余りで髪が生え、生かされた細胞の最後にある髪の毛が、良い意味の墓場。そして、第7チャクラの抜ける道です。」

 チャクラとは、サンスクリット語で「車輪」や「渦」を意味する人の体にあるエネルギーの出入り口のこと。主要な7つのチャクラは、会陰、臍下、臍、胸、喉、眉間、頭頂に位置し、健康な時はチャクラのエネルギーはスムーズに流れているが、エネルギーが滞ってバランスが崩れると、その影響は心身の不調として現れる。各チャクラは異なる周波数をもち、対応する音や色や天然石の力でチャクラを調整する考え方もある。会陰にある第1チャクラは、大地のエネルギーとつながり、生命エネルギーの源となる場所。そして頭頂にある第7チャクラは、宇宙や高次のエネルギーとつながり、霊的な感性や創造を司ると言われている。

 「瞑想する時に、第1チャクラを地面にグッとつけて坐ることによって、グラウンディングして自分の内なる力を意識できる。常にチャクラを意識して、自分らしく生きる。それが個性だと思う。『この色にしなさい』『この石を持ちなさい』と言う人もいるけど、別に気にしなくて良いです。ただそこにチャクラがあることを知っていけば、今、自分が何を意識して生きていけば良いかわかる。腸活と一緒です! 納豆で腸活できる人もいれば、雑草を食べたほうが良いと言う人もいるんだから(笑)、それぞれ違ってて良い。心と体が喜べば善玉菌になるに違いないと思うの。」

 松浦さんが開発を手がけたヘアケア製品“YUME DREAMING EPICUREAN”の“EPICUREAN(エピキュリアン)”とは快楽主義者を意味する言葉で、語源となったのは古代ギリシャの哲学者エピキュロス。快楽を追求しつづけた彼が見出した人生の満足とは「小さな庭、そこに植わっている数本のイチジクの木、今日生きるためのパンと水、数人の良き友人たち」だったという。「満足が贅沢」なのだ。

 「遊ぶことが大好きだから表面的な意味でも快楽主義を持ってるし、エピキュロスが言ったディープな意味でも捉えてます。快楽は、自分が秤。そういう意味の私のエピキュリアンなんです。数千万円の宝石を買うことが、本当にその人にとって快楽だったらそれも良し。シルバーの可愛いリングが好きならそれも良し! その時の自分を知ることが大事だと思います。

 私は、ある皮膚科の先生と出会えて息子のアトピーをステロイドで治そうと決めた時に、『それじゃダメ!』と言う自分を否定して、自分のエピキュリアンをまた開花できたんです。ステロイドや化学物質はやっぱり大事です、だからその怖さや解毒する方法を知ることも大事。例えば私たちが着ているコットンも天然素材のように見えるけど、実は化学繊維が含まれたコットンのことを今はコットン100%と呼べるんです。70%のコットンに30~40%のポリエステルを足すことで傷みにくくなっています。ファッション業界の方たちからそのことを学び、今これをやっているんです。」

 そこには“BRING”と書かれた古着の回収ボックスが置かれていた。「日本環境設計の岩元さんという方がされている会社です」。服のごみをリサイクルして、コットンからバイオエタノール、石油由来原料で再生ポリエステルを生産し、100回でも1000回でもリサイクルできることをやっている唯一無二の会社が立ち上げた服から服をつくるプロジェクトだという。

 「地下資源をこれ以上採らないで、化学物質を地球の上だけでつくり直そうとしています。化学物質を否定するのではなくて、こういう上手い地球の循環の仕方を知ることが、私たちのエピキュリアンであり、オーガニックライフなのかなって思う。地球を壊さない人間は、結局、地球によって壊されない。

 良い母を持っていたこと、お客様や農家の人たちとつながれたこと、農家の人たちの顔が見えるものを食べられること、お金を稼げていること、そのお金を使ってオーガニックのものを着られること、感謝しかないです。すべてが感謝と愛という糸でつながって、共存していけば、地球が悪くなるわけがないです。だけど政治の裏側でお金が動くような社会のシステムに対して、私たちは真っ向からパンク精神をもって『バカ野郎!』と言ってなきゃいけない、魂を売ったらおしまいだと思うんです。自分のオーガニックライフを全うして生きるためには、戦いの心もなきゃいけない。でも戦いの心は魂を黒くするから、良い水や、皆さんが愛でつくってくれた食物を食べることによって、体の中を癒していく。全部循環して、つながるんです。」

自分を愛するという原点回帰

 松浦さんのヘアカットによって「人生が開けた」と語る人は数知れない。美容師という仕事、そして、訪れる人たちのそんな声を、自身ではどう感じているのだろう?

 「人が好きなんです。美容師って、自分主体じゃなくて、人ありき。だから、アーティストになっちゃいけない、クリエイターでいなきゃいけないと思うんですね。じゃないと、その人を知って、その人に似合うというところで、最後落とし込めないから。

 カットに来ていただいてる皆さんが『運が良くなる』と言ってくれるのは嬉しいです。最近は『私が切ったら、上がるよ!』と思って切ってる。そう思わないで切ったら申し訳ない。私が元気でなきゃ相手を元気にできないと思うので、まず自分に戻るようにしています。だから最初の話と一緒ですね。自分好きになることによって、人を見落としてしまったり、足元が見えなくなることにいちばん怖れを感じるから、自分好きにならないように自分を守ることも愛だと思う。そういうところが多分、私の皆んなを上げていけるポイントなのかなという気はしています。だから自分に素直に正直に、いつも私は私を愛しています。」

 “今、ここ”から、活き活きと楽しく生きていく道は、いつだって自分を愛するという原点回帰が出発点なのだ。



松浦美穂(まつうら・みほ)

美容師、ヘアメイクを経て渡英。1990年、帰国後にヘアサロンTWIGGY.を設立。サロンワークに加え、雑誌、広告、ショーなどトップヘアクリエイターとして幅広く活躍する。2003年のAVEDA日本上陸に伴いアーティスティックディレクターに就任し、5年に渡り商品開発アドバイスやヘアスタイル提案を行う。2009年、人間本来の自然治癒力に着目し、国産にこだわったヘアケアプロダクツ「ユメドリーミン エピキュリアン」を発表(2011年にリニューアル)。一人ひとりの個性に応じた美容、健康、ファッションを考え、ナチュラルな中に革新的な要素を加えたヘアスタイルをテーマとする。モデルをはじめ、女優、タレントなど、その人の“今”を表現するヘアスタイルを提案し続けている。


TWIGGY.(ツイギー)

美のトレンドを牽引するTWIGGY.では、ヘアスタイル、ヘアカラー、ヘッドスパを追求してきたスペシャリストたちの手によるクオリティの高いパーソナルな施術で、新しい自分と出会える。サロン3階にはTWIGGY.cafeが併設されており、選び抜かれた旬の食材を使った身体にやさしいメニューが味わえる。100%自然電力に切り替えるなど、健やかないのちと地球環境を考えた様々な取り組みやイベントを行っている。富士山が一望できる緑溢れる屋上菜園はじめ、建物のすみずみまで流れる気持ち良い波動が、心と体と魂に活力を呼び覚ましてくれる都会のヒーリングスポット。
2019年にはサロン2階にギャラリースペース「Flat101」をオープン。
サスティナブルをテーマに様々なPOPUPを開催している。

TWIGGY.
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-35-7
TEL.03-6413-1590
https://twiggy.co.jp


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