人間学
人間自身と人間世界と人間環境の理解を進めていくのが人間学である。とりたてて悪いことをしなくても、無知、無感覚が人間を不幸にしていくことがある。また観念や、偏った感覚の過敏さが人間を不幸にしていくことがある。人間の資質の中には良いものも悪いものも雑多に混ざり合っている。だからそのまま生きるのでなく、良いものをどうやって活かし、悪いものをどうやって消していくことができるかを学ぶことが人間としての成長、成熟につながっていく。人間のための文化を育てなければならない。
人間の研究という、新しい学問が生まれつつあります。これは、全員参加の学問です。人間を知ろうとする努力は、人間の歴史と共に絶えることなくおこなわれてきました。宗教・哲学・芸術もそうでしょうし、近代西欧科学が活発になってからは、様々な分野が生まれてきました。生理学・心理学・生物学・社会学・経済学、等々。より研究を深くするために細分化されてきた各分野ですが、各研究者たちはどんなに追及をすすめていっても、その枠の中だけにとどまっていれば何らかの不足が生じてくることを感じています。人間は各部分の集合したものとは、とらえられないのです。
そこで、それら全体をトータルな目で見ようとする新しい観点が必要になります。散り散りになった知識を拾い直し、総合的に、もう一度、人間を見ようとします。―――それは自分の中にある、自然を発見し、味わうことです。人間とは自然そのものです。自然食を実践したり、田舎暮らしをしたり、ということだけが自然に帰るということではありません。一つ、一つ、自然を理解していかなくてはなりません。
ここでは、そういう観点から、いろいろな分野の研究も紹介しながら、みなさんといっしょに<人間>というものを見ていきたいと思います。それはあなた自身と、あなたのとなりにいる誰かさん。その人を理解することです。そこに初めてコミュニケーションが生まれます。人間は群生動物ですので<誰か>なしには生きられません。他人が必要なのです。人間は孤独を恐れます。ですが、人を求める時にただ「孤独の恐怖から解放されたい」という所から出発しますと、近づけば近づくほど、いろいろな悲喜劇を生みます。そうでなく「自分を理解し、同じように誰かを理解したい」というコミュニケーションを育てていきましょう。それが活き活きと楽しく生きていくためのガイドラインになっていければ幸いです。