108selection #02

108選「楽」

当店で選び抜いた、スピリチュアルな本「108選」

もとの字はに作り、柄のある手鈴の形。
白の部分が鈴、その左右のは糸飾り。
もと舞楽ときにこれを振って神をたのしませるのに使用した。
また病気のとき、シャーマン(神がかりの状態となって予言や病気を治すことなどを行う巫女)がこれを振って病魔を祓ったので、病気を治すことを(りょう)という。
はのちに作られた形声の字である。「おんがく」の意味のときにはガク、「たのしむ」の意味のときにはラク、「このむ」の意味のときにはゴウの音でよむ。 – 白川 静『常用字解』より


怒りのダンス
人間関係のパターンを変えるには (わたしらしさの発見)
H・G・レーナー(著)
誠信書房

2970円 (税込)

人間関係では必ず沸き上がっている怒りの感情は、普通、押さえ付けるか爆発させるかなど持て余してしまいがちである。まず、たいていの人はネガティブな感情として、自分自身でも否定的にとらえることが多いだろう。ところが本書では違うのである。怒りそのものは、ネガティブではないと言う。それを聞くだけで何か解放されるような感じがするのは、それだけ現代人が日頃怒りを貯め込んでいるという事か。著者は怒りをエネルギーとしてとらえ、関係性について従来とは違う視点を与えている。自分の中にあるネガティブな感情を直視しようとしても、その感情を生み出しているのは自分の心のわけだから、当然、抵抗が生まれやすい。しかし、本書はその抵抗をはずすような観点を与えてくれる。人間関係をダンスとしてとらえている所など、なるほどと、うなづける所が多い。いかにうまくダンスを踊るか?という視点からなら、何かうまくいきそうだ。怒りについてだけではなく、同じシリーズで親密さについて述べた『親密さのダンス』(誠信書房 (1994/01)もあり、関係性を考える上でどちらも興味深い。

神経言語プログラミング
頭脳(あたま)をつかえば自分も変わる
リチャード・バンドラー(著)
東京図書

1980円 (税込)

どうしてもタバコがやめられない、飛行機が恐くてのれない、不眠症が治らないなどの恐怖症や強迫観念などの問題解決に効果を発揮する神経言語プログラミング(NLP)。人間の心の深層を理解して直接働きかけるこの手法は、自分の問題を治すだけではなく、コミュニケーションにおいても威力を発揮する。心というのは様々なトリックを使って私たちを陥れる。また、固定観念の中にしばりつける。その心のしくみを逆手にとって、ポジティブな方向性に動かしてしまえば、自分でもびっくりするような成果が生まれるというわけだ。なんとなく自分や他人の心を操作するような感じを与えないところもないが、一種のポジティブ・シンキングの手法として考えれば、非常によく練られた体系であり、具体的でわかりやすいテクニックだと言える。無意味な固定観念にしばられすぎている私たちにとっては、それをはずしていくだけで、こんなにも世界が変わるのか、とびっくりするような視点の変容が行われるということを理解させてくれる本である。

本当の自分を取りもどす アーユルヴェーダ 新装版
ジュディス・H・モリスン(著)
ガイアブックス

3300円 (税込)

中国の漢方、中南米や西洋のハーブなど、自然療法にはさまざまな種類があるが、その中でも高度に体系化されているのがインドのアーユルヴェーダである。5000年以上の歴史を持ち、その目指すところは、単に健康を保つことだけではなく、自己認識と自己発見である所が、深遠なヨガ思想を生み出したインドらしい。アーユルヴェーダでは、すべてのものの質をヴァータ、ピッタ、カパの3種類の基本的な生命エネルギーで表し、人の体質もこの3種類の基本的な生命エネルギーで表し、人の体質もこの3種のエネルギーからタイプ分けをしている。そして、それぞれの体質に合った食事や運動法などをアドバイスする。

現在でもインド人の日常生活の中にアーユルヴェーダは深く根付いている。アーユルヴェーダの医師は今もそれなりの地位を保ち、人々から尊敬されているそうである。西洋の対処療法的な方法と違って、人それぞれが自分の体質を知り、その性質に合ったライフスタイルを選ぶことができる点は、日本でも注目され始めており、一部の手法が体験できる様になってきているが、その本質を学ぶには、人種的な体質の違いもあり、そう簡単にはいかないようだ。

愉気法 1
野口晴哉(著)
全生社

1980円 (税込)

元気、雰囲気、活気など日本語では「気」という言葉が日常的によく使われている。人体や人間の精神から発せられる見えない力を指している「気」については、なんとなく取り上げられ方がいかがわしかった面もあり、最近まではほとんど受け入れられない存在だったが、今では批判はありながらも、一般的な言葉として仲間入りしつつある。毛沢東の時代、中国では「気」は弾圧を受けていたそうが、現在の中国では人気が復活し、様々な医療や健康法などの分野で高く評価されていると言う。日本の身体的「気」の第一人者である野口氏の「愉気法」では、「輸」ではなく「愉」という文字を使うことによって、新しい世界を作りだそうとした。「気」の流れの持つ性質、体や心との関係を、それまでにない感覚でとらえようとしたのだろう。「気」と言うのは個人のだけ中でめぐっているものではない。「気」にも様々なレベルがあるに違いない。これからは、人間の関係性としての見えない「気」が、すべてをつくり出していく時代となっていくかもしれない。

原初生命体としての人間
野口体操の理論
野口三千三(著)
岩波書店

1144円 (税込)

「生きている人間の体は、皮膚という生きた袋の中に、液体的なものがいっぱい入っていて、その中に骨も内蔵も浮かんでいるのだ」という独特の身体観を持つ著者。自らのからだの動きの実感から生み出された理論を述べる本書は、従来の身体観とはまったく違う視点を持っている。彼が考え出した体操は、基本的に体が気持ちいいと感じる方に動かしてゆくものだ。筋肉に負荷を与えて無理に鍛えるのではなく、ただただ体の感覚に身をまかせという発想がおもしろい。そうしていくうちに、自然に体が育ち、人が言葉や頭で物事を理解しようとしがちな事柄を、体全体をつかって感じたり理解してゆくことが可能になる。エクササイズやダイエット、エステなど西洋的な発想の中には、体を外部からの刺激によって加工していく、という感覚があるようだ。それとは全く逆の発想で、体を受けとめることで、今までの固定観念がくずれてゆく。知性や精神も体と深くつながており、体が育っていかない限り、その先に進めないものだ。西洋的発想にはない、身体を育てるという発想を与えてくれる本である。文庫。

愛のヨガ
ルドルフ・フォン・アーバン(著)
新泉社

2200円 (税込)

聖なるものであり、かつ徹底して俗でもある。肉体的な行為であっても同時に精神的交流でもある、とまるで量子力学において素粒子が波であっても粒であるということと同じように、相反する要素を合わせもつセックスという行為。微妙でとらえがたいセックスにおいて、真に満ち足りた経験を得ることは可能なのか。通常行われるセックスは、相手があってもマスターベーション的であるが、本書では「内なる異性」をはずし、純粋女性と純粋男性としてのセックスを提唱している。肉体の結合だけではなく、「気のふれあい」にも言及し、著者が提唱した6箇条を守ることによって、多くの夫婦が満ちたりた関係をとり戻したという。ともすると肉体的なテクニックか精神論にかたむきがちであったセックス論の中で、バランスがとれており、実践的かつセックスの本質を考えさせてくれる本である。また、著者がカウンセラーを引退した後に書かれていることから、類書に多い自己主張的な目的は感じられない。動物は純粋に生殖行為としてセックスを行うが、人間には生殖行為を超えたエネルギーが存在する。密教の立川流などはそのようなエネルギーを扱っていたのではないだろうか。

盛大な人生
中村天風(著)
日本経営合理化協会

10780円 (税込)

イギリスに留学して学術誌に論文を投稿するなど、日本人としては異例の活躍をしていた粘菌学の南方熊楠。独立をめざして活動するインド人のチャンドラ・ボースを支援するなど政治的に活躍した頭山満。明治期の日本人には、世界を又にかけてスケールの大きい活躍をしていた人物が沢山いる。そのような巨人達の中で、現在でもその著作が多くの読者を持つ中村天風の講演をまとめた本書。軍事探偵となり、「人斬り天風」と恐れられたこともあるという経歴。また、医学博士の肩書きを持っていたり、銀行の頭取を勤めたりと、ちょっと信じられない程のプロフィールの持ち主だが、この時代には何が起こっても不思議はないようなダイナミックな雰囲気があったのかもしれない。結局、瀕死の病をヨガの修得により回復したことから、宇宙の真理に目覚めた著者が、生命力を活かしてスケール大きく生きるための秘訣を説いてゆく。語り口も非常に魅力的で、松下幸之助や稲森和夫、ロックフェラー三世などを始めとして今なおビジネスマンに人気があるというのもうなづけるところである。

達人のサイエンス
真の自己成長のために
ジョージ・レナード(著)
日本教文社

1560円 (税込)

時代の先を見据え、研ぎ澄まされた五感で導きだす斬新な経営戦略と実行力。「所沢のジャンヌ・ダルク」の異名をもつ著者が、業界の常識を覆し、名経営者をもうならせる「感性の経営論」を語り尽くす。

愛とは、怖れを手ばなすこと
今をよりよく生きるために
ジェラルド・G・ジャンポルスキ ー(著)
サンマーク出版

597円 (税込)

私達は生きているこの瞬間ごとに、意識的であれ無意識的であれさまざまな選択をしている。そして、その選択によって、その後の体験や物事の結果が大きく変わってしまうことに気づいている人も多いだろう。心を開いたか閉ざしたか、勇気をもったか逃げてしまったかなど、あとで思い返してみると、今の結果を作り出している原因が、自分のどの選択によっていたか気づかされることがある。本書では私達が選択するのは究極的には「愛か恐れ」かのどちらかであると述べ、「愛」を選択するための方法をシンプルな言葉にまとめて解説している。ベースにはアメリカの心理学者である女性が導きの声を聴いて書き記した「コース・イン・ミラクルズ」を置いていて、わかりやすい言葉で日々の暮らしの様々な局面を意識的に乗り越えてゆくためのヒントを教えてくれる。セルフヘルプというジャンルは、セラピーなどのように「誰かに助けてもらう」というそれまでの構図から、自分自身で何かを変えていくという考え方で、アメリカを中心に、近年、ますますポピュラーになってきている。文庫。

非電化思考のすすめ
マインドセットを打ち破る幸福な生き方
藤村靖之(著)
WAVE出版

1540円(税込) 

電気を使わない製品の発明家が考えてきた、本当に幸せな生き方。節電やガマンといったネガティブな発想ではなく、人や自然とつながる愉しさを味わい、「自分の幸せ度はあがっているか」という観点から生活と電気の関係を見直す。幸せを形にする真の「知性」。

人は成熟するにつれて若くなる
ヘルマン・ヘッセ(著)
草思社

770円 (税込)

先ごろスペースシャトルでの9日間の飛行を終え、無事に帰還した史上最高齢の現役上院議員のジョン・グレン氏は77歳であった。年を取ると様々な可能性が減る一方というわけではなく、逆に新たな可能性も生まれることを教えてくれるエピソードである。数々のすぐれた文学作品を残したヘッセのエッセイをまとめた本書は、年をとることは、肉体的な機能は衰えても、精神的な面での成熟の可能性を秘めていることを伝えている。晩年は庭仕事を楽しみ、静かな時間を豊かに過ごしたヘッセ。日々の生活の中から、実感として生まれた彼の言葉は、老域に入り、ますます美しくなってゆく。その姿は、何か、世阿弥の風姿花伝をほうふつとさせるものがある。世界一の老人大国になると言われている日本にあって、エイジング(いかに豊かに年を重ねるか)という発想は、これからますます注目を集めていくだろう。はたして、私たちは老いを楽しむ境地に達することができるのだろうか?老いを忌むべきものとして感じている限り、それはなかなか難しい。生きること、死ぬことへの新しい価値観が必要なのではないだろうか? 文庫。

千の顔をもつ英雄 (上)
ジョセフ・キャンベル(著)
人文書院

3080円 (税込)

数々の神話で、主人公が冒険の途上で直面する危機やジレンマ、死や再生などは、時代や場所が変わっても現代の私達が人生で遭遇する出来事と本質は共通している。だからだろうか、神話を読む時、私たちは登場する英雄とともに同じカタルシスを感じる。残酷な話や理不尽な話も多いが、それはデフォルメされているだけであって、現実の世界となんら変わるところはないのではないだろうか。神話は人間の意識の奥底に眠る原型をわかりやすい形に取り出したものだという説がある。宇宙創世の物語などが、全く別の場所で生まれたのにもかかわらず、共通した要素を持っているのも、本来、人間全体が持っている共同無意識が生み出した物語だとすれば、理解できる話である。著者のキャンベルは、神話研究の第一人者として、長年膨大な成果をもたらしてきた人物だが、ここ数年、再び彼の研究が多くの人の関心を集めている様である。大きな変革の時代を迎える時、人は知らず知らずのうちに、内なる英雄を呼び起こす必要性を感じているのかもしれない。オンデマンド版。

宇宙船地球号 操縦マニュアル 
リチャード・バックミンスター・フラー(著)
筑摩書房

990円 (税込)

<ジオデシック・ドーム>で知られる建築家バックミンスター・フラーの代表的著作。 「地球は宇宙を航行する一隻の船であり、 限られたエネルギーを最大効率で利用しなければならない」 という著者の思想は、現在のエコロジー思想に大きな影響を与えている。 個が全体のために何を成し遂げられるのか。 文庫。

竜の柩 1
聖邪の顔編
高橋克彦(著)
祥伝社

680円 (税込)

世界各地の文明に、竜の伝説が残されている。しかし、その扱いは地域によって大きく異なる。なぜ東洋では神に近い存在としてあがめられ、西洋では悪魔として退治されるべき存在として忌み嫌われているのか?そして実在しないはずの竜という概念は、どのようにして生まれてきたのか?古代日本、中国、インド、トルコに伝わる竜の歴史を辿り、それぞれの文明の共通項から人類創世の謎に迫る本書は、フィクションであるが、筆者が古代文明について詳細に調べて書いていることから、専門書を何冊も読むよりもリアルな感覚をつかめるところがある。カッパドキア、モヘンジョダロなどの多くの謎を残している古代文明の遺跡も登場し、私たちの想像を掻き立てる。古代文明については諸説が存在していることから、解釈が分かれることも多いが、その時代の「気」を感じることができれば本当は十分なのかもしれない。竜というシンボルは、いまだに私たちの心を惹きつける「気」を持ち続けている。それがいったい何なのかという答は、自分の魂の奥底に眠っているのではないだろうか。シリーズ全6部作。文庫。古書。

魔術
理論と実践

アレイスター・クロウリー(著)
国書刊行会
6270円 (税込)

魔法が使えたらどんなにいいだろう、というのは誰でもが一度は持つ夢である。映画や小説でも、ある日突然魔法が使えるようになる話とか、魔術的な要素がからんだホラーなど、モチーフとしてよく使われるところを見ると、魔術とは、人間の願望や潜在意識の中に埋め込まれた何かの表現方法なのかもしれない。世界を自分の思い通りに動かすというイメージが強いが、実際には無から何かを生み出すのではなく、今ある関係性を変えることで、物事のバランスを変えてみせるのが魔術なのではないかという気がする。白魔術と黒魔術の戦いなどもおもしろいところである。自らを666の獣と称し、稀代の悪党との評判が高かったアレイスター・クロウリー。文豪サマセット・モームがクロウリーをモデルに「魔術師」という小説を書くほど世間を騒がせていたが、その言動がどんなに破天荒であったとしても、クロウリーの目指すところは、人間が幸福になることであったことが本書に記されている。魔術の実践はどんな人にも開かれた道であり、その実践により人がより力を得て幸福になる、それがクロウリーの目指す道だった。

役行者ものがたり
銭谷武平(著)
人文書院

1540円 (税込)

役行者は日本の歴史上の中でも、類を見ない不思議な存在である。幼児の時からサンスクリットを操る神童であり、超能力を使ったり、空を飛んだりができたと言う。様々な力を操った役行者であるが、その力は主に民衆を助ける方向に向かっていた。いわばアンダーグラウンドの世界のスーパーヒーローと言ったところだろう。そして彼は修験道の開祖となる。神秘的な力の存在する山の中で修行を行うことによって超人的な力を獲得する修験道。日本では古くから、山には神秘的な力が宿っていると考えられており、山岳宗教も今なお残っている。山に住む霊的な存在と言えば、天狗がいるが、天狗も修験道の姿格好をしていることが多いことから、神秘的な力を発揮する行者達から想像されたものなのかもしれない。今では、修験道一日体験コースなどというプログラムもあるらしい。山に深く分け入り、滝に打たれれば、心が清められていくのだろう。山や樹木が持つ力とこだまして、生物なら必ず持っている本能的で神秘的な能力がよみがえってくるのではないだろうか。

輪廻転生
驚くべき現代の神話
ジョエル・L・ホイットン 他(著)
人文書院

1980円 (税込)

禅には「未生以前」という言葉がある。自分の両親が生まれる以前の自分とは何であったのかを考えさせる考案である。「生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し」という空海の言葉もあるように、人は何度も生まれては死ぬをくり返しているという考えが、古今東西さまざまな文化に伝わっている。生まれ変わりはないと主張しているキリスト教でさえ、かつて一部の派では輪廻転生の思想が息づいていたとされている。本書は、精神科医が催眠療法のさなかに、偶然に患者が語った前世の記憶を記したものである。ニューエイジ思想の中でも、特に前世については非常に大きな関心を集めた。「私」とは何かを考える時、人との関係性を理解したい時、前世の存在がまた違ったものさしを与えてくれる。しかし考えてみると、自分の両親を100代さかのぼればあっと言う間に、人口以上の人数になることは、計算上でもすぐわかることである。そういう意味では、本来、ありとあらゆる人と何らかの関係をもった上で、私たちが生まれてきていると言うことができるだろう。

【used】永遠のエドガー・ケイシー
20世紀最大の予言者・感動の生涯
トマス・サグルー(著)
たま出版

2420円 (税込)

平凡な写真技師であったケイシーが偶然に催眠状態におちいった時、その口からはケイシ-自身も知らないような叡智の言葉が語られ始めた。人々の健康上の相談から人生での問題解決に至るまで、数多くのリーディングを行った今世紀最大の予言者といわれるエドガー・ケイシーの生涯を綴った本書。みずからの能力におごることなく、リーディングからは報酬を受け取ることもなかったと伝えられるほど謙虚で誠実な人物であったという。ケイシーは人間に霊的世界の存在を伝えるために選ばれた存在であったのだろう。スピリチュアルな存在と人間との関係性は、単純には言い表せない部分も多いが、霊媒体質の人が必ずしも幸せな人生を送れるというわけではない。むしろ特殊な能力を持ったが故の苦しみが生まれてしまうのではないだろうか?周囲の人々は、その特殊な能力だけに注目し褒め称える。結果、人間としては未発達な部分を残したままになってしまうことになる。ケイシーは、人間として奢りを持つことなく生きたからこそ、このようなすばらしい成果を残すことができたのかもしれない。古書。

神々の糧(ドラッグ)
太古の知恵の木を求めて
テレンス・マッケナ(著)
第三書館

2750円 (税込)

神をかいま見ようとして、または、普段とは違った意識状態に達するため、人間は厳しい修行や瞑想などさまざまな行為を行ってきた。そのような行為の中で、古来から植物などの意識変容の効果をもたらすドラッグが多くの文化で使われてきている。現在は科学的な分野でも、人間が自ら生成し分泌する脳内麻薬が発見され、ある状況のもとでは、意識の変容を促すため、自然に分泌され、反応を引き起こすことがわかっている。人間の内から分泌される麻薬は、自然に解毒消化されるが、外から接種する麻薬は似ているようでも成分が異なり、分解は遅れ、習慣性になるだどの害になることが知られている。フロイトがヨーロッパにコカインを広めたと言われているが、これは内なる変性意識を研究してみると、ほぼコカインがもたらす使用状況に近かったためであり、ゆえに治療という目的で患者に使ってしまったためである。フロイト自身は自らその状態を作り出せる力をもっていたが、患者たちはその力はなかったので、依存状態を作り出してしまった。本書は、ドラッグと人類の意識の変容の歴史に関して独自の解釈を行い、世界中に話題を呼び起こした。

アウト・オン・ア・リム
シャーリー・マクレーン(著)
角川書店

924円 (税込)

世界的に有名な映画女優として地位も名誉も獲得していた著者が、「自分自身を知る」ことこそが人生で最も大切であると気がつき、自分の本性を探究する過程を綴った本書。精神世界的な事柄に懐疑的であった彼女が、報われない恋愛や、さまざなな人々との出合い、神秘体験を通して新たな世界へつきすすんでいく様子が誠実に描かれている。地位や名誉を失うことを恐れずに己に忠実に生きる著者の姿勢は探究の旅に進む多くの人々を勇気づけ続けている。そういう意味では、「ニューエイジ」という位置づけにとどまらず、人生を考える本として変わらぬ輝きを持ち続けることだろう。だからなのか、アメリカではこのシリーズが約200万冊以上売れたといわれており、それが正しければ、人工の約1%が買った計算になる。日本においてもそれまで閉鎖的な感のあった精神世界の門戸を大きく広げ、普通の人が新しい価値観を求め始めるきっかけを作ったと言えるだろう。著者のスピリチュアルな探求はこの後も次々に繰り広げられていくのだが、やはり初めに書かれた本書が一番力を持っている。文庫。

【used】陋巷に在り1
儒の巻
酒見賢一(著)
新潮社

440円 (税込)

論語で伝えられる逸話や人物を操りつつ、大胆な発想で孔子の生涯を描いた歴史長編。孔子の愛弟子・顔回が、師に迫る魑魅魍魎や政敵と戦闘する。野心が無く、無為の顔回には誰も勝てなかった。この世界をサヴァイバルしてゆく時、顔回の「仁」が思い出される。シリーズ全13巻。古書。文庫。

一休
水上勉(著)
中央公論社

1026円 (税込)

禅の始祖ボーディダルマはインドから中国へ渡り、時の皇帝である武帝に手厚く迎えられた。仏教に帰依していた武帝が、ダルマに功徳の価値を問うと、答は「何も無い」だったと言う。禅の本質を知る上で、わかりやすいエピソードである。しかし、禅が今あるように花開いたのは、中国を通過し、日本の文化の中で変容を遂げたからである。禅は本来、日本人の気質に合っていたのかもしれない。毎日が死と隣り合わせの世界で生きていた戦国武将たちは、戦いの前になると、こぞって禅の高僧のところへ出向いた。(話は逸れるが、元巨人軍監督の川上哲治もよく禅寺にいっていたそうである)茶道も禅の流れから生まれたものである。禅の公案の中には人をぎょっとさせるものがある。それは人間の持つ固定観念をはずすために、思いもかけない方法を取るためだ。たとえば、「ブッダに会ったらブッダを殺せ」という言葉。とても仏教とは思えない表現である。今でこそ禅寺も一定の形式を守っているが、本来、禅の世界では、真理に到達するためならば、方法を選ばない思想なのだ。破天荒な禅僧、一休はその本質を身をもって具現した人物だと言えるだろう。文庫。

タオ自然学
現代物理学の先端から「東洋の世紀」がはじまる
フリッチョフ・カプラ(著)
工作舎

2420円 (税込)

人類の文化が段々発達をしていく中で生み出された科学技術。人間が環境や自然を支配し、万能になるために発達していった科学が行き着いた先はどこだったのだろう? 量子物理学や相対性理論で発見されたことは、明確にはとらえがたい不確実性やパラドックスに満ち満ちている現実の姿であったとは、皮肉と言おうか滑稽と言おうか面白い。そして、その現実のいわく捉え難い曖昧さという本質は、とっくの昔、2000年前に東洋では神秘家たちが気がついていたのである。その発見に大いにインスパイアされた物理学者の著者は、それまで水と油のように相容れないと考えられていた科学と神秘主義を見事に結びつけている。「語ることのできる道は道ではない」とのべるタオと、不確実性に満ち満ちている量子物理学を関連させたことにより、科学的な読み物とは思わせないほどの興奮を、私たちにもたらせひてくれる本書。執筆後、40年近く経た今でも知的好奇心を刺激し続けるクオリティは色あせない。現代では、焦点が、量子力学からカオス理論、そして複雑系へと新しい潮流に移ってきている。ビジネスの世界でも複雑系が真剣にとりあげられているそうである。

宮沢賢治詩集 
谷川徹三 (編)
岩波書店 

792円 (税込)

心あたたまる美しい童話を数多く残している宮沢賢治は、その素朴で美しい物語の世界とは対照的に、己のどろどろした闇の部分を書いた詩「春と修羅」を残している。彼が描く童話の登場人物たちも、心の中に悲しさやさびしさを持っている。仏教者としても知られる賢治であるが、その様に傾倒したのは、自分の中にある闇の部分をどうすればよいかわからなかったからかもしれない。力あるものには裏の世界がある場合が多い。物事には必ず二面性があるからだ。賢治も自己に潜む闇の深さを見つめ続けたからこそ、美しい物語を残せたのではないだろうか。彼の描く美しい世界と闇の世界に、スピリチュアリストとしての賢治の姿が浮かび上がる。日本に残されている昔話も、時として非常に残酷な表情を見せることがある。それは人間という存在の、二つの面を描いているからだろう。昔話はシンプルな構造であるが、人間の本質をすばり描いてみせることが多い。人間の中にうずまくたくさんの欲望や願望が、長い時間をかけて結晶化し、残ったからなのであろう。文庫。

【used】世界は音  
ナーダ・ブラーマ
J・E・ベーレント(著)
人文書院

7700円 (税込)

私達が物を判断する時は、まず視覚を重要な要素と考えがちである。触れたり、嗅いだり、聴いたり、味わうよりも、まず見て判断することが多い。しかし、視覚を偏重しすぎることが人間の意識の片寄りに繋がっているととらえる著者は、本書において、聴くことこそが人間に意識の変容をもたらすと考えている。ジャズの評論家として名を馳せながらも、禅やインドの神秘思想など世界各地の神秘思想の研究に強くひかれて探究をしていった著者は、音楽と神秘思想との接点をだんだんと感じとっていく。本書は、インド哲学から現代物理学、禅の公案などさまざまな分野にわたって書かれており、音楽論や文化論にとどまらず、聴くことの新しい可能性を教えてくれる。音と神秘主義という観点では、古くはギリシャ時代のピタゴラスやグレゴリオ讃歌を生み出したキリスト教などを思いつくが、音階というものの存在自体が何か私たちに示唆を与えてくれるようなところもある。音の波動は空間に拡がりの感覚を与え、それぞれの関係性と結びつけてくれる力を持っているに違いない。古書。

預言者 小型版
カリール・ジブラン(著)
至光社

935円 (税込)

預言者アルムスタファ。彼が語り始める時、私達はみなぎる静けさの中で耳を傾ける。<超えた者>が持つ孤独と人々への愛。レバノン生れの、詩人、哲学者、画家である。作者が生み出したこの作品は、数々の啓示に満ちている。預言者とは未来を語る者のことだ。

植物の神秘生活
緑の賢者たちの新しい博物誌
P・トムプキンズ 他(著)
工作舎

4180円 (税込)

世界の神話や伝説では様々な形で、樹木崇拝の信仰が残っている。日本の神社では巨木に神が宿っているとして祀ったり、宗教的な儀式で植物が使われるなど、人間は、植物には何か特別な力があると考えてきた。能動的な存在である動物に対して、受動的な存在である植物。一見、動物の方が力関係では上に立っている様にも見えるが、長いスパンで考えてみた時、はたして本当にそうなのだろうか、という疑問が浮かぶ。植物は着実に地に根を張り、子孫を増やし、そして酸素まで作り出している。生きる長さは1000年以上に及ぶものがあるぐらいである。そういう視点から見てみれば、人間がなぜ植物に対して特別な力を感じてきたのか、うなずける点が多い。本書は、従来、科学的にとらえられることがなかった、植物の独自の感情世界の可能性について探究した先駆的な書である。共生という発想で考えた時、植物は無くてはならない地球の宝物である。人間もそんな植物の存在のあり方を理解し、学ぶ時が来ているのかもしれない。

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