108selection #03

108選「天」

当店で選び抜いた、スピリチュアルな本「108選」

人の頭の形。手足を広げた人を正面から見た形の大の上に大きな頭をつけた形である。人の体のいちばん上にある頭を意味する天を借りて、「そら」をというようになった。天は神のいるところと考えられ、天を神聖であるとする考えは殷代にすでにあり、甲骨文では殷は、その都を「天邑商」(てんいふしゃう)と称している。
地のもとの字は(ち)で、天にいる神が(のぼ)り降りするときに使う神の梯を使って降りたつところの意味である。紀元前一〇八八年ころの殷王朝から周王朝への交替は、天命によるものであるという天命の思想は、周王朝になってから生まれた。
すべてのことは天命によって決まると考えらえるようになり、人の力の及ばぬことをすべて天というようになり、天は「自然、生まれつき」の意味にも用いられる。 – 白川 静『常用字解』より


【used】自己催眠
J・H・シュルツ(著)
誠信書房

5500円 (税込)

寝ている間にひどく歯ぎしりする女性に、歯ぎしりを止める催眠術を行ったところ、今度は彼女は夫の首をしめてしまったという。人間の行動には、普段意識していない潜在意識が大きな影響を及ぼしている。また、多かれ少なかれ、人は様々な形で暗示を受けているものだし、また自分に暗示をかけている場合も多い。宗教の世界にも、火の上を渡ったり、刃物を握ったりというパフォーマンスを行うものがあるが、これらも基本的には、人間の心に暗示をかけ、または暗示を解き、常識では考えられないことをしてみせる。催眠術と聞くと、普通は表面的なトリックや手品のような娯楽のイメージを思い浮かべてしまうが、本来は、意識することが難しい潜在意識と、顕在意識との間をつなげるものとして機能する重要な役割をもっている。本書では、大学教授であり催眠研究の先駆者的研究者であった著者が行った催眠研究を述べている。自分自身の心のしくみを知ることで、今まで気づくことができなかった新しい世界が見えてくるかもしれない。古書。

【used】無条件の愛とゆるし
 E・R・スタウファー(著)
誠信書房

1430円 (税込)

誰かを許せないと思う気持ちや深く心が傷ついた経験は、時が経てば意識の表面からは消えていくように見える。しかし、心の奥深くにはそのようなネガティブな思いが蓄積され、自らの内に潜む霊的な部分からますます切り離されてしまう。自分の心の角度によって、世界は変わっていくのだという事実は理解できても、現実の日々の中で、これを実践していくのは非常に難しいものだ。本書は、一応トランスパーソナル心理学という分野から表現されているが、ユニークなのは、古代キリスト教のエッセネ派の教えを中心に持ってきていることだ。心理学と呼ぶよりも、むしろスピリチュアルな世界との良いバランスを作り出す教えを現代の言葉に置き換えたという感じが強い。エッセネ派の教えから、霊的な根源との自然なつながり方を示唆してくれる。特殊な訓練や修行を通してではなく、ひとりでできる瞑想法やエクササイズを通してより高次の自己と接触するための方法を紹介する。特にハイアーセルフという存在を理解するためには非常に役に立ってくれるだろう。他人を許すことによって解放されるのは実は自分自身なのだ。古書。

【used】魂の危機を超えて 
自己発見と癒しの道
スタニスラフ・グロフ、クリスティーナ・グロフ(著)
春秋社

5280円 (税込)

「魂の暗闇」という言葉があるように、霊的探究の途上では、よろこばしい体験だけでなく、逆に絶望や苦しさを体験することを避けては通れない。意識が大きな変容を遂げる時、狂気かと思えるほどの精神的危機に陥ることがある。自分自身では理解不可能な、そして意思によるコントロール不能な状況に対して、私たちはどのように向き合えばいいのだろう?このような状態は、従来であれば単に精神異常ととらえられ、本人も周囲も取り返しのつかない失敗の中に入り込む可能性が多かった。しかし本書では、これを霊的発達にともなう精神的危機「スピリチュアル・エマージェンシー」であると名付け、その対処法も述べている。「異常」とは、ある場面においてはむしろ「正常」なことであると世に提唱した功績は多大である言えるだろう。精神医学や心理学によって、人の心は様々な分析が行われたが、本当の意味で問題を解決する糸口をみつけだしてくれたわけではない。トランスパーソナル心理学という「個」を超えるための心理学は、はたして現代人にとって新しい局面を解明する役割を担ってくれるだろうか? 古書。

魂のコード
心のとびらをひらく
ジェイムズ・ヒルマン(著)
河出書房新社

2640円 (税込)

人の育つ環境や親から引き継いだ遺伝子が、その人の人生や人格を決定するという還元主義的な思想にまっこうから意を唱える本書。人は魂にその生の目的を刻み込んで生まれて来るのであって、その可能性を育てながら生きていくのだということを述べている。言うなれば、魂にも遺伝子があるのだという発想である。生まれた時からその人の運命の方向性は決まっているという考え方は、多くの占星術において採用されている。星や天体の動きと人間の運命には密接な関係があるというのがその基本思想である。そういう意味で言えば、魂に刻み込まれたコードとは、占星術に近い発想と言えるかもしれない。それもそのはず、著者は心理学者であるが、占星術にも非常に造詣が深いことで知られているのだ。魂に自分をつき動かしている理由が刻み込まれているのだとしたら、自分がなぜこのような質を持ち、どこへ向かっているのかを理由づけることが可能になる。また、どんなに先が見えない不安な日々の中にいても、本来の目的が消えて無くなることはない、と腹をくくって運命にのぞむことができるのではないだろうか。

ユング自伝 1
思い出・夢・思想
C・G・ユング(著)
みすず書房

3080円 (税込)

現在では大きな学問に育ち、一般的にもよく知られる心理学という分野だが、フロイトによって提唱された時代には、それまでの常識を覆す驚くべき新発想だった。そのような時代において「心理学」という分野を築き上げた人々は、ある意味で命がけの戦いをしていたに違いない。そんな立役者の一人として、集合無意識や元型など、心理学の概念で大きな発見を行ったユング。彼は東洋思想や仏教、神秘主義などにも深い関心を持っていたため、その発見は心理学の分野にとどまらず、人間の心について新しい側面を教えてくれた。いったい彼はどんなことを思い、このような研究に向かっていったのか。本書はユングがその生涯を回想した口述をまとめた一冊。彼の人生を描いた自伝だけに、ユングの本当の姿が浮かび上がってくる。ユングの生涯は、少年時代から人間の内面に潜む世界の探究に向かっていた。科学というよりも、むしろ生きていることの神秘を求め続けた少年だったことがわかる。ユングはフロイトの弟子であり、父のように彼を慕いながらも、後には異論を唱えて決別をした。その過程が生々しく描かれている『ユング・フロイト往復書簡』もたいへん興味深い。

【used】夢の劇場
明晰夢の世界
マルコム・ゴドウィン(著)
青土社

6534円 (税込)

夢は意識と無意識、現実と非現実の接点と考えられている。特別な能力がなくても、今、感じている世界とは違う、別のリアリティを感じさせてくれる機会という意味では、多くの人にとってなじみ深いものと言えるだろう。多くの種類の夢辞典が存在するが、夢のほとんどが自分の心のおそうじというか、いらないものを消化するための自律的な働きであることが多い。しかし、ある日、突然、不思議な夢を見たことで、それまで問題になっていたことの意味や、解決法がわかってしまうこともある。そのような夢の不思議な働きに魅せられてしまう人間も多いことだろう。古来からシャーマンの夢見術やチベット密教での夢を利用して行う修行など、夢は精神世界の中で特別な位置を占めてきた。本来は無意識的な動きである夢を、意識的に使ってしまおうという試みである。本書では、夢を見ている最中に夢を見ているということを自覚できる明晰夢をテーマに、明晰夢を見るための方法や歴史について、夢にまつわる図版をさまざまにちりばめて紹介している。古書。

武産合気
植芝盛平 (口述)
白光真宏会出版本部

1815円 (税込)

宇宙と一体化することにより、どんなに力の強い相手に向かっても強さを発揮することのできるという合気道。武道でありながら、究極の目的は宇宙との合一のための修練であるその合気道の真髄は、創始者である植芝盛平の生前はなかなか理解されず、死後に弟子たちがやさしく解釈をして一般的となった。植芝盛平は一時期、大本教の出口王仁三郎のボディガードをしていたとも言われている。合気道という希有な武道が持つ精神性も、彼が神道を学ぶことにより獲得した世界であるのかもしれない。体系化され、スポーツの一種となった現在の合気道からは、なかなかその特殊な世界をうかがい知ることはできないが、創始者自身が映っているビデオなら今でも入手することが可能だ。空気投げや何十人の人と戦う姿を見ることができて、とても興味深い。武道に限らず、『クォンタム・ゴルフ』など、スポーツの世界にもユニークな視点で世界観を描いた良書がいくつかある。ある極限の状態を作り出すために、何か共通したものを持っているのかもしれない。

海からの贈物 
アン・モロー・リンドバーグ(著)
新潮社

473円 (税込)

あくせくした日常に生きる現代人がその生活をみつめ直すというコンセプトの書籍は近年、多数出版されているが、本書はその草分け的存在とも言える。著名な飛行家リンドバーグの妻であり、自らも女流飛行家であったリンドバーグ夫人が、海で過ごした休暇の日々の中から生活を見つめ直す。自然の中の造形、普段気づかずに見過ごしていたふとした世界の表情などに目を向けているうちに、結果的に自らの内面を見つめ直すという作業につながってゆく。その文章は詩的な美しさと洞察の鋭さを両方持ち、読むものに夫人と同じく海辺で過ごしたかのような豊かな時間を与えてくれる。しかし短いエッセイを集めた、文章量もさほど多くないこの本書が、ロングセラーとしてその価値をいつまでも持ち続けているのはなぜだろうか? それはリンドバーグ夫人という人の知性と、女流飛行家という当時はまだめずらしい存在であったであろう生き方がもたらした勇気のエッセンスが、本の中からにじみでてくるような輝きをもたらしているからかもしれない。文庫。

内なる異性
アニムスとアニマ (バウンダリー叢書)
エンマ・ユング(著)
海鳴社

1320円 (税込)

本書が提唱した、人の心には誰にでも内なる男性と女性であるアニマとアニムスが潜んでいる、という発見は画期的なものだった。男性と女性は明らかに違う存在と分けて考える視点から、心の内に異性が存在するという視点に転換する。それは言うなれば、自分に足りないものを外に求めるのではなく、自己の内に見い出することにより、より統合された存在となれるということだ。関係性には共通するものと異質なものがあるときのみ、友好性と必然性が存在するのだ。男性は自らの女性性を育てることにより、そして女性は自らの男性性を育てることにより、人間としての成熟が始まる。こういうと中性的な人間になってゆくようなイメージがあるかもしれないが、自分の中の異性を育てることは、逆に本質の性自身を豊かにしてゆく結果をもたらすはずだ。男らしさ、女らしさが逆に深まってゆく。母系社会が中心だった古代から変換し、近代から現代では男性的な社会として発展をとげてきた。今、あらゆる事が変化を遂げようとしている時代に、改めて女性的なエネルギーを学ぶ必要が生まれてきてるのかもしれない。

死ぬ瞬間
死とその過程について
E・キューブラー=ロス(著)
中央公論新社

1152円 (税込)

死は恐るべきもの、不幸なことと考えられがちな文化では、死に対する心構えや理解も生じにくい。特に現代社会では、日頃、死に接する機会が少なくなり、どうしても、「普段は考えないようにしているもの」になってしまっている。しかし、インドでは「メメントモリ(死を想え)」と言うように、死は、生を豊かにしてゆくための非常に有効な要素にも成りうるのだ。カスタネダに対するドンファンの言葉の中でも、「力を得るためには、死を最高の友達にしろ。」と言っている。本書では、死期が近い末期患者に接することによって、患者達の死の受容の段階と、いかに接するべきかを研究した先駆者である著者の代表作である。後に、「クオリティ・オブ・デス」という発想を中心にした、新しい流れの原点を生み出した本とも言える。一般的に、死への理解が深まる研究へとつながる大きな足掛かりとなった。欧米では、エイズやガンの問題を真っ向からとらえて、早くからホスピスなどの施設も次々に生まれてきている。日本でも徐々にそのような動きが生まれてきているが、まだまだ社会の中でオープンに語られるところまでは来ていないようである。文庫。

【used】青い狐  ドゴンの宇宙哲学
M・グリオール ホカ(著)
せりか書房

8470円 (税込)

それぞれの文明には独特の文化や伝説が残されているが、その多様性は驚く程の豊かさを秘めている。本書では、独自の神秘的な宇宙観を持つアフリカ、ドゴン族の生命の哲学を綿密なフィールドワークにより描き出す。ドゴン族の神話は、実は現在科学者や古代文明の研究者から、たいへん注目を集めていると言う事実をご存知だろうか?それと言うのも、ドゴン族の伝える宇宙創世の物語が、最新の宇宙科学が到達した宇宙の誕生のしくみに、非常によく似ていたからである。また、ドゴンの神話の中には、シリウスからやってきた宇宙人の話があり、これがまた最近話題になっているオリオン・ミステリーの中で重要な意味を持つことになるのだ。DNAの研究結果によれば、アフリカは現代人すべての祖先が生きていた場所らしい。ドゴンの他にも、注目に値する様々な部族が今も生きており、彼らの世界観は、私たちが持っているアフリカのイメージとかなりかけ離れていることを、知る人は少ない。

POWERS OF TEN パワーズ・オブ・テン
宇宙・人間・素粒子をめぐる大きさの旅
フィリップ・モリソン、チャールズ・イームズ事務所(著)
日経サイエンス社

4271円 (税込)

ピクニックシートの上で気持ちよさそうにねそべっている男性。とりたてて何ということもないこの写真から、世界をダイナミックに10の自乗倍でマクロ、ミクロに変えていくと、世界は全く違った様相を見せてくる。人間を起点に宇宙から素粒子の世界までをとらえるという画期的なアイデアによって作られた本書は、普段自分の視野だけで物事を見てしまいがちな私達の枠を、一気にぶち破る。今ここにあると信じている世界以外にも別の世界が存在しているというのは、まるでパラレルワールドか、異次元の世界の話のようだが、何もSFのジャンルに行かなくても、世界は十分にパラレルワールドとして存在しているのだ。それらすべてが今この瞬間に存在するリアリティであることを考えると、ありのままの宇宙を認識すること自体、人間にとってはあまりにも許容量を超えていることがわかる。悟りを開く時と言うのは、このような世界をいっぺんに認識するような感じなのか?科学というのは、人間の次元ではない世界を理解するための一つのツールと言えるだろう。

【used】東洋の心 新版
鈴木大拙(著)
春秋社

1870円 (税込)

繊細であり微妙、包括的であり深遠な東洋の文化。しかし、その中で生きている私たちは、本当にその価値を十分に理解できているのだろうか?東洋の文化を一言で表せばそれは禅であると著者、鈴木大拙は言う。大拙はもちろん偉大な仏教者として名高いが、その名声も、もしかしたら海外での方が大きいぐらいかもしれない。それと言うのも、禅を初めとした東洋思想の価値を海外に広めた人物こそ彼だからである。禅は、タオとともに、欧米の人々にとっては、最も洗練された高度な精神世界だとうつったようだ。日本人としてはうれしい限りだが、それではその禅の心を理解できている日本人がどれほどいるか、と考えると心配になってくる。禅やタオについて知ったのは、アメリカで書かれた翻訳本である、という人が結構いるのではないだろうか。たしかに大拙らの残した足跡によって、禅のエッセンスとでも言うべき物が欧米では上手に受け取られたようなところがある。しかし、大拙自身が語った言葉や本が今も残っているのだから、それらを読まないでいるとしたら、とてももったいない話である。ぜひ、一度は手に取っていただきたい。古書。

いのちが教えるメタサイエンス
炭・水・光そしてナチュラルチーズ
宮嶋望(著)
地湧社

2200円 (税込)

世界をうならせるチーズの秘密は、自然に寄り添い、いのちを活かす科学「メタサイエンス」にあった。生命とエネルギーを巡る壮大な旅を、共働学舎新得農場の代表がナビゲートする。未来の希望は、自然が織りなす秩序の中にある。

【used】ウォーキング・メディテーション 
ティク・ナット・ハン(著)
星雲社(渓声社)

8800円 (税込)

あらゆる宗教体系の中で、瞑想は重要な修行の要素となっている。ブッダは菩提樹の下で瞑想中に悟りを得、インドのヨガ行者は瞑想により宇宙との合一を目指し、密教では瞑想により超常の力を獲得するなど、さまざまな瞑想方法が行われてきた。それは、瞑想という行為が、エゴに焦点を当てた通常の人間の意識を、違う方向へシフトすることができるからであろう。それでは何を瞑想と呼ぶかと言えば、様々な形式はうわべの姿でしかないはずだ。意識の持ち方によって、どんな瞬間も瞑想に成りうる。しかし、現在よく行われている瞑想法は、むしろリラックスするための手段と勘違いされているところがある。瞑想は本来人間の持つ強烈な力であり、リラックスとは異質なものなはずだ。なぜなら、それは「自我を認識する自己」を自我から引きはなすことだからだ。本書では、座って行う瞑想ではなく、歩きながら出来る瞑想法を紹介する。ただ、禅的に表現すれば、型にとらわれないことにも、とらわれなくなる瞑想の世界があるのだろう。古書。

【used】チベットの生と死の書
ソギャル・リンポチェ(著)
講談社

2420円 (税込)

日本で密教と言えば、真言宗や天台宗がまずあげられるが、より広い視野で見た場合、最も高度に、そして根強く定着した密教と言えば、やはりチベット密教と言えるだろう。チベット密教は、ニューエイジの流れに乗り、欧米でもある時から非常によく読まれるようになった。その教えの中でも、特に注目されたのが「死者の書」である。「チベット死者の書」は、死を迎えた人間の魂が、体を離れてから、とまどいや恐れで迷ったりすることなく、無事にあの世に到達させるための指南書である。そのような死に対する具体的な方法あるということが、死に対して不安を覚えている現代人の心を惹きつけたのだろう。本書は、そのような状況の中、アメリカで出版されベストセラーとなった、現代版「死者の書」である。著者は、幼少の頃からチベット密教に帰依し、後に欧米でチベット密教の教えを広めるリーダーとなっている。現代人のために死のガイドを行う。チベット密教の教えをわかりやすく解きあかし、死へと旅立つ時の心構えを差し示してくれる。文庫。古書。

死海文書の謎 新装版
マイケル・ベイジェント(著)
柏書房

5126円 (税込)

1947年に発見された『死海文書』は、今世紀最大の考古学的発見と言われている。それまで直接の資料がなかった紀元後一世紀の事情をつたえる原資料であり、神秘のベールに包まれていた古代キリスト教について、従来の説を覆すような内容であったからだ。その中には、当時のキリスト教徒たちの宗教観や祈りの方法、生活などが記されていた。キリスト教は、勢力を拡大していく中で、様々な改ざんが行われたと言われている。現在伝えられている聖書や教えの中には、時の権力者に都合がいいように、大幅に手を加えられてしまったものがあることは以前から知られていた。だから『死海文書』の内容は、今あるキリスト教にとって、まさに異端であり、その公開までには数々の壁が立ちはだかっていたらしい。宗教と言うのは往々にして、教祖が生まれた時代からだんだんと別の顔を持つようになるものだ。それはキリスト教に限らず、仏教やイスラム教などどんな宗教にも見られる運命である。『死海文書』はイエスが生きた時代の本当のキリスト教の姿を垣間みる希有な情報と言えるだろう。

オレンジ・ブック
和尚の瞑想テクニック
OSHO(著)
めるくまーる

1540円 (税込)

グルとしてカリスマ的な魅力を持ち、多くの信者を集めた和尚(ラジニーシ)は、古今東西の思想のエッセンスをうまく取り入れて講話を行う並外れた知性を持っていた。彼の読書量は、並大抵のものではなかったらしい。特にタオを代表とする東洋思想の講和は、そのエッセンスがたくみに表現されており、理解を深めるための格好の教科書となってくれる。晩年、ラジニーシは様々なスキャンダルを起こしてアメリカを追われた事もあり、その評価は分かれるところだが、彼の事を好きでない人も、もしも様々な宗教や思想に興味を持っているなら、彼の知性から紬だされる言葉に耳を傾けてみるべきである。普通の研究書からは読みとることのできなかった、新たな視点をきっと与えてくれるだろう。本書は、和尚が古今東西のテクニックを集め、現代に生きる人々の内的成長を促すよう数多くの方法を指し示してくれる。呼吸法あり、動きあり、笑いあり、ダンスあり、ごくあたりまえのお茶ありの100あまりの瞑想法。これが瞑想?本当はすべての瞬間が瞑想なのだ。

完全なる結婚
サマエル・アウン・ベオール(著)
ノーシス書院

3300円 (税込)

人間の持つ力の中でも大きな位置を占める性エネルギー。そのエネルギーを使ってより高次の意識の段階を目指す方法は、密教のタントラやインドのカーマスートラなどでも述べられているが、本書ではより多くの創造的エネルギーを体内に充電し、黄金の霊体をつくるための秘儀が明かされている。人間の次元を複数のレベルでとらえ、理想はすべてのレベルの結婚であるとして、それぞれの結婚の意味と可能性を個性的なものととらえることで、完全な結婚の可能性を示している。神秘主義というのは、本来、なかなか公の中に出てこないものである。成長の段階により、イニシエーションとなる通過儀礼を行うことも多いが、その秘儀も当事者にしか明かされないものだ。なぜならば、それらの知恵や感覚は人間の常識を超える者であり、準備のできていない者に対しては、むしろ毒となる可能性も高いからだ。ある準備が整った者にのみ、口伝などによって伝えられていた神秘主義の奥義であるが、人々の関心の高さからか、いつしか情報としてオープンされてきている傾向も強い。それらの情報がはたして有効なのかどうかは議論のわかれるところである。

新アダムスキー全集 1
第2惑星からの地球訪問者
ジョージ・アダムスキー(著)
中央アート出版社

2200円 (税込)

UFOや異星人については、「未知との遭遇」や「E.T」、「インデペンデント・デイズ」「エイリアン」など、ハリウッド映画の格好の題材であり続けている。近年ではカール・セーガンの「コンタクト」も映画化されている。多くの人の興味を集めているのは事実なのだが、一部の熱狂的な人々を除いては、興味本位の関心を持つか、まったく存在を否定してしまうか、という判断基準が多くを占めているようだ。ユングが『空飛ぶ円盤』という書籍を執筆して、UFO現象を元型と関連させて考察しているように、人類以外の宇宙生命体について、もっとリアルに考察する可能性もあっていいのではないだろうか。UFO研究の先駆者であり、現在でも多くの支持者を持つアダムスキーの著作は、単にUFO体験を述べただけではなく、著者による宇宙哲学がベースとなっている。その真否はともかくとして、限られた情報しか入手できない現代人にとって、UFO現象の意味を考察する時の手がかりとして、かかすことのできない資料であることは間違いないだろう。シリーズ全12巻+別巻。

ブレイク詩集 
無心の歌、経験の歌、天国と地獄との結婚
ウィリアム・ブレイク(著)
平凡社

880円 (税込)

芸術の中には多かれ少なかれ、スピリチュアルな要素が含まれているものだ。スピリチュアルな能力にすぐれたアーティストが描く世界は、時として宗教家や神秘主義者を凌駕するような力を持っている場合がある。イギリスの版画家ウィリアム・ブレイクは、まさにそのような希有な存在と言えるだろう。ウィリアム・ブレイクは、版画や詩を通して、スピリチュアルな世界を生々しく描いたことで知られている。時には美しく、時には恐ろしいその作品が描く世界は、まばゆい光と深淵の闇の双方を示し、見る者に畏怖の念を与える。旧約聖書を描いた数々の作品からは、息を飲むような臨場感があふれてくるのはなぜだろう。芸術だからこそ表現できる、霊的な世界の真実がそこにあると言えるだろう。彼は、いったいどこからこのような感覚の世界のインスピレーションを得たのだろうか。彼が書いた詩を読むことによって、そんなブレイクの世界観を垣間みることができる。本書では、ブレイクの詩の中でも代表作とされる「無垢の歌」と「天国と地獄の結婚」を収録。言葉の中にちりばめられた視覚的なイメージがすばらしい。文庫。

バガヴァッド・ギーター
上村勝彦 (訳)
岩波書店 
792円 (税込)

神々の間の戦いを描いているインドの古典である本書。ヒンズー教の世界観や神々の考え方を伝えてくれる貴重な聖典である。この物語に登場する神々は、家族や親戚たちと戦いを交える宿命を持っている。この世はそのような矛盾に満ちた世界であるのだ。ある日戦いにつかれた心優しい戦士は、「家族や親戚と争う位なら自分が殺される方を選びたい」とクリシュナに問いかける。道義的に考えればそれはたいへん立派な愛に満ちた決断である。しかし、クリシュナは「それは弱者の考え方である、卑小な心の弱さを捨てて立ち上がれ」とさとすのだ。このことがどのような意味を表しているのかは読む人の心にまかせよう。バガヴァッド・ギータは物語の形を取っているが、まぎれもない宇宙の真理を説く教典なのだから。芭蕉、一茶、世阿弥などが作り上げた世界観が、日本人の魂に根付いている思想だとすると、『バガヴァッドギータ』こそはインド人の魂にの根元であると言えるだろう。インドの国や人々が独特の魅力を放ち、今も世界中の人々を惹きつける理由はこんなところにあるのかもしれない。文庫。

ギャーナ・ヨーガ
知識のヨーガ
スワミ・ヴィヴェーカーナンダ(著)
日本ヴェーダーンタ協会

1540円 (税込)

ヨガは紀元前数千年前にはすでにその体系が完成されていたと言われている。ふつうヨガと聞くと肉体的な修行を行うハタヨガをまっ先に連想しがちだが、本来は哲学的思想を含む総合的な体系がある。例えばスワミ・ヴィヴェーカーナンダが述べるヨガの体系は4つある。「バクティ・ヨーガ」は、神への徹底的な愛によって真理に至るものである。「カルマ・ヨーガ」は、日常の仕事を通して真理を悟る道である。「ラージャ―・ヨーガ」は、王者のヨガと呼ばれ神秘主義的な道である。そして、「ギャーナ・ヨーガ」は、思考を極めることによって真理にいたる道である。人はそれぞれ自分の本質にあった道を通り、真理へ到達しようとしているのだ。たとえば、この著者による「ギャーナ・ヨーガ」を読んでみるとわかるが、へたな哲学書を読むよりも、はるかに明晰な言葉で、存在の意味や宇宙について説明してくれる。非常に頭がすっきりするので、自分がギャーナ・ヨーガの人であると思い当たる人は、一度読んでみるといい。ヴィヴェーカーナンダ自身が非常に高度な知性を持った人であったこともよくわかる。

生命潮流
来たるべきものの予感
ライアル・ワトソン(著)
工作舎

2420円 (税込)

還元主義的な見方を超えた所で、新たな可能性を差し示したニューサイエンス。その中でも多くの読者を獲得したライアル・ワトソンが、本書で示した「百一匹目の猿」のエピソードは、今では広く世間に浸透している。エコロジーやガイア思想などがブームになった背景の一端を、彼とその著書が担ってきたことは間違いないだろう。生物全体を眺めてみると、人間だけを見ている時より、この世界の本質がみえてくることもある。より客観的な視点から、その全体像を実感できることができるからだろう。実際に、生物が歩んできた歴史、進化の過程、そして他の存在との関係性などを思えば、この宇宙の存在の不思議さが浮き彫りになってくる。なぜ、これだけたくさんの種類の生物が存在するのか、どうしてそれぞれがユニークな色や形をしているのか、なぜそんな行動を取るのかなど、とても進化論や淘汰のルールからだけではうかがい知ることができない疑問が残る。いったい宇宙は何をたくらんでいるのだろうか?

利己的な遺伝子 増補新装版
リチャード・ドーキンス(著)
紀伊國屋書店

3080円(税込) 

進化や生き残りのための遺伝子の新たな性質を発見して世間をおどろかさせた本書。従来は道徳的観点から捕らえられていた人間のふるまいも、生き残りのための遺伝子のたくらみであったいうこの理論も、現在では教科書の中で紹介されるぐらい一般的になってきているが、発表当時はそれまでの価値観をひっくかえすような斬新さを持っていた。著者の説によれば、人間は遺伝子の乗り物にしかすぎない。こうなると、自分が、自分がと思いながら生きている人間が、滑稽にすら見えてくる。いったい何が自分の意志なのか、まったく見当がつかなくなってくる。最先端の科学の中で、同じ様に「私」という存在を揺るがせているものに、「脳科学」と「免疫」があるが、今後ますます科学は不思議な領域に入って行くだろう事を予感させる。さて、人間を乗り物にして、遺伝子はどこに向かっているのだろう。宇宙は何をたくらんでいるのだろう。時には、遺伝子の気持ちになって、あれこれ考えてみるのもおもしろいかもしれない。

量子は、不確定性原理のゆりかごで、宇宙の夢をみる
佐治晴夫(著)
トランスビュー

1760円 (税込)

予備知識の無い者にとって、物理の数式は理解が難しいうえに、原子や電子の姿は小さく、目で見ることができない。しかし私達は自らの感覚を通して、物理の世界の存在を実はすでに知っている。宇宙物理学者である佐治博士が本書で目指したのは、宇宙の始まりや姿を理解する上で欠かせない量子論の基礎、そして不確定性原理が感覚的に理解できること。一線を退いた後、パイプオルガンを弾き始めたという博士の紡ぐ言葉は、極めてソリッドなはずの数字の世界を描きながらとても瑞々しく、音楽や文学、詩の世界から解りやすく例をひきながら、不確定性原理が示す小さな世界のゆらぎが、広大な宇宙に及ぶ豊かさに満ちていること、人間もまたその一部であることを教えてくれる。

李陵・山月記
中島敦(著)
新潮社

440円 (税込)

人間が別の動物に変身してしまう変身譚の中では、ある朝目覚めたら、主人公が毒虫になっていたというカフカの『変身』が有名である。日本の文学においては『山月記』が筆頭にあげられるだろう。中国を舞台に、人間が誰しももっている「特別でありたい」という願望により、自作の詩が認められることを渇望する主人公。その願いがかなわず発狂し、ついには虎に変身するというストーリーである。簡潔な短編ながら人間心理についての深い洞察に満ちている。人は様々な妄執を持っている。その中でも、自分が特別な存在でありたいと願う願望は、近年、ますます強くなっているように感じる。自分だけでなく、回りにいる誰もがそう思っているのだから始末が悪い。現実と、こうでありたいというイメージとのギャップに苦しむのが落ちである。なぜ、このような願望を人は持つのだろうか?この苦しみが人間に与えられた性なのだとしたら、どのような目的があるのだろうか?エゴを捨て去るためには、まずエゴを育てる必要がある。人間は、その育て方がまだまだ下手なのかもしれない。文庫。

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