※記事は2014年のものです。
予めご理解のうえお楽しみください。

CREATORS #07

スピリチュアルな本を生みだす人々

めるくまーる / 代表 梶原正弘氏

60~70年代、アメリカではカウンター・カルチャーが勢いを増し、それまでの豊かな生活と安定というアメリカ中流社会の価値観を物質主義と捉え、それに対し様々な疑問を投げかけました。そういった時代の意識の中で、めるくまーる初期に出版された和尚(ラジニーシ)の『存在の詩』は、当時、鋭敏な感覚を持っていた人々にとって衝撃的なメッセージを伝える伝説的な書となりました。その流れが過ぎ去った現在でも、その基盤となった根源的な問いは、人間が生きている限り存在し続ける普遍的なテーマです。今も、同じテーマを核として持ちながら、ジャンルを超えたより広い対象へ向けた本を世に出しつづけている出版社、めるくまーる代表、梶原正弘氏にお話を伺いました。

●会社概要、発行物の傾向

1971年に和田禎男により創業された「めるくまーる」は、今年で44年目を迎えます。(このインタビューは2014年当時のもの)
精神世界、アメリカインディアンの本を中心に出版活動を続けています。「めるくまーる」とはどういう意味か、と訊かれることがよくあります。「MERKMAL」とは「目印・目標・道しるべ」などを意味するドイツ語です。さまざまな文化活動の前線を注視しつつ、その中から真に共感し得る方向性を選び取り、人類進化の「道しるべ」となるべき書物を紹介していきたいという願いから、社名を「めるくまーる」といたしました。

学問や職業が専門分化されていくにつれて、私たちは知識においても体験においても、世界をリアルに認識することが困難になってきました。そして、世界認識が曖昧になるにつれて、人生の意味も見失われつつあります。そこで私たちがまずもって選び取りたい方向性とは、「私」と「世界」との有機的な相関に視点を据えるということに他なりません。人々は太古から同じ悩みを悩みつづけてきながら、相変わらず解決できない問題を抱えています。

一方、人類文化はめざましい勢いで変化を遂げつつあります。「不変なるもの」と「変化するもの」との調和的な出会いこそが、「いま、ここに、生きて、在る」
という実感を私たちに与えてくれるにちがいありません。弊社の出版物がそのような出会いを演出することができれば、望外の幸せです。

●特別な思いのある一冊
ノーベル賞を受賞した利根川進博士との対談をまとめた立花隆氏の『精神と物質』(文藝春秋)は、印象に残った一冊です。この本の最後で、はたして精神現象は物質レベルで説明できるのかという立花氏の疑問に、利根川博士は人の喜怒哀楽を含むあらゆる精神現象は物質の作用で説明できると断言します。これを読んだ当時、利根川博士の考え方に強い違和感を覚えましたが、今では利根川博士の立場を支持する側になりました。

●スピリチュアルブームについて
「スピリチュアル」をどのように定義するかにもよりますが、「人間とは何か」という人類究極の問いに対するある角度からの見方なのでしょう。それは自然科学や人文科学などとともに、一つの切り口としてすでにブームではなく確固たる地位を確立していると思います。

●本とのつきあい方
人との出会いと同様に本との出会いもまた人生を豊かにしてくれるものです。すばらしい本との出会いは、人生にとって掛け替えのない財産となるでしょう。誰もが言うことですが、やはり多くの本を読むことにつきます。

●今後の展望
自然の営みのなかで地球に誕生した人類の営為は、すべて自然の内にあります。人間の叡智を信じてはいますが、自然はそれを遙かに超える大きな存在だと感じています。私たちにできることは 「今を大切に」 生きていくことでしょう。

●若い人へメッセージ
はるか昔より時代が若者たちを育ててきました。私たちは好むと好まざるとにかかわらず時代の中で生きることを余儀なくされていますが、それに抗うこともなく、媚びることもなく、たおやかにチャレンジしてほしいと思います。


公式サイト:図書出版 | めるくまーる
https://www.merkmal.biz/

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