meeting with remarkable people #01

ゲオルギー・イヴァノヴィッチ・グルジェフ

18XX - 1949

G.I. Gurdjieff(ゲオルギイ・グルジェフ)19世紀、アルメニア共和国の神秘主義者、作曲家、舞踏家。ロシア、フランス、アメリカなどで活動した。のちの精神的指導者たちに大きな影響を与えた人物。エニアグラムを世界で初めて広めた人物。


「魂は責任ある年齢、すなわち成年に達したのちに初めて現れ、そして完成することが可能な、一種のぜいたく品なのだ。」
– ゲオルギイ・グルジェフ –

近頃、エニアグラムがずいぶん一般的に知られるようになってきた。性格タイプを分析する一手法という認識が強いのか、企業の中で関係性を改善するためのプログラムとして使われることもあるそうだ。しかし、このエニアグラムがグルジェフという人物によって世にもたらされたと知る人は、意外に少ないかもしれない。

グルジェフー神秘思想に関心のある人なら、誰でもその名を知っているだろう。しかし、彼について語るのは、実のところ相当困難である。なにしろ、直弟子からして彼を「巨大な謎」と呼んでいるぐらいだから。彼自身の著作を読めばわかるが、彼はあえて「わかりにくく」説く人だった。わからない人には、さっぱりわからないように。そして、少しわかっているつもりの人には、混乱するように。

彼の前半生は特に謎に包まれている。19世紀後半、アルメニアに生まれた。生年月日は、いくつもの説があって不明である。トルコの国境に近いこの地域には、様々な民族、宗教が入り交じっていた。彼の著作「注目すべき人々との出会い」によると(これがどこまで事実であるのかも不明)、若かりし頃、<大いなる知恵>を求めて、様々な地を旅し、いくつもの不思議な体験をし、そして「注目すべき人々」と出会った。この時期には、秘境的なグループ<真理の探究者たち>を形成していたらしい。

1913年頃、グルジェフはモスクワでワークを始める。ここからは弟子達の言葉によって、かなり詳細な記録が残っている。その後、アメリカ、イギリスを経て、最後にはパリに至る。彼の教えについて説明することは、やはり難しい。自分の教えが、マニュアル化することを嫌い、しょっちゅう矛盾するような、弟子がとまどうようなことを続けていたからだ。

まず自身の著作「ベルゼバブの孫への話」を読むように奨めているが、この本を読み通すのは至難の業だ。宇宙存在ベルゼバブが、その孫に、地球という星がいかに気妙かというのを説明する話である。邦訳されたもので800ページに近い大作。しかも、3回読むように、という指示がついている。そこで、多くの人がまず手にするのが、弟子のウスペンスキー(後に決別)が書いた「奇跡を求めて」ということになる。この本には、グルジェフの基本思想、ワーク、人となりが、たいへん「わかりやすく」体系的に記されている。

本当は、グルジェフの思想について簡略にお伝えできればよいのだが、上記の様な理由から、うかつには説明できないのだ。ただ言えるのは、「人間はほとんど眠っている」と彼が考えていたことで、その眠りから覚ますために、あらゆる方法を使った。スーフィの流れを組む回転舞踏、自己想起、エニアグラム、音楽…。彼を慕う弟子を冷たく破門したり、誰が見ても下劣で不愉快な人物をコミューンの中にわざと住まわせたり。彼の著作には、人間の愚かさに対する愚痴が延々と出てくるのだが、それは、彼がいかに人々と真剣に関わったか、という愛情があってこそではなかっただろうか?

グルジェフの教えに影響を受けた人は、多くを語ろうとしない。しかし、かなりの数にのぼるだろう。各界のリーダーと呼ばれる人も多いと聞く。現存する人としては、たとえば舞台演出家ピーター・ブルックがいる。彼は「注目すべき人々との出会い」を映画化したことでも知られている。ちなみにspiritualな人物を取り上げるこのコーナーのタイトルは、初回登場のグルジェフに敬意を表して、この書籍の原題(英語)から引用させていただいた。

グルジェフに興味を持たれた方は、いくつかの書籍(できれば「ベルゼバブ…」から!)をお読みになることをおすすめする。


人間の生に対する客観的かつ公平無私なる批判
ベルゼバブの孫への話

G・I・グルジェフ(著)
平河出版社
8010円(税込)

若い頃の過ちで辺境へと追放された地球外生命体ベルゼバブは、その後功績を認められ、再び宇宙の中心へ呼び戻される。彼がかつて訪問した惑星地球に住む奇妙な人間たちについて、帰還途中の宇宙船の中で孫に語りきかせる。長大で難解複雑を極めるストーリー。

グルジェフ伝
ジェイムズ・モア(著)
平河出版社
6600円(税込)

本書は、自らもグルジェフィアンである著者が、その生と思想が驚くべき深みで融合している「けたはずれの人間」グルジェフの存在感を生き生きと伝えている。グルジェフのの生い立ち、活動、弟子達との関係などを丁寧に拾い集め、波乱に満ちた彼の一生を追う。

生は<私が存在し>て初めて真実となる
G・I・グルジェフ(著)
平河出版社
2669円(税込)

真なるものを幻想から見分ける力を持つ知性を覚醒させようとし、世界の多くの人々に影響を与えたグルジェフ。本書の執筆中、グルジェフは筆を折り、なぜか二度と書こうとはしなかった。その真意とは何だったのだろうか? 未完に終わったグルジェフ三部作の最後の作品。

奇蹟を求めて
P.D.ウスペンスキー(著)
平河出版社
2349円(税込)

「人間は機械のように反応で生きている」と言ったグルジェフは、同じように眠り込んでいる人間を目覚めさせようと様々なワークを考え出した。内的考慮と外的考慮という2つの態度は、世界を全く違う様相に変えてしまう視点となる。人間のしくみを克明に解説するグルジェフ思想の入門書。

注目すべき人々との出会い
G・I・グルジェフ(著)
めるくまーる
2420円(税込)

20世紀前半を代表するアルメニア出身の神秘思想家、ゲオルギイ・イヴァノヴィチ・グルジェフ。この本は、彼が幼少時代から抱き始めた、生に対する根本的な疑問への回答を求め、機関車整備工の職を辞して真理探究の旅へと出る魂の冒険譚。後にワークとして結晶化してゆくために通過した探求の日々。

ある弟子の手記
回想のグルジェフ

C.S.ノット(著)
コスモスライブラリー
2640円(税込)

パリ時代のグルジェフとその門弟たちとの神話的な日々を回顧し、巨星の人間像を鮮烈に描き出した、愛弟子による魂の記録。聖典『ベルゼバブの孫への話』への卓抜なコメンタリーも併録。グルジェフ思想への鋭い洞察も交えながら、その全体像に迫る。古書。

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